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……輝きを放ってる?
私はただ皆と同じように着飾ってこの会場に現れただけだ。皆と変わらない。
「もしかして、私、発光してる?」
思わず自分の体へと目を移す。……いや、大丈夫そうだ。変な病にかかったわけではない。
ルイスがハハッと声を出して笑いながら私を見る。
「ニコル様は話してみると、可愛らしい方ですね」
「可愛らしい……?」
家族以外の男性に初めて言われたかもしれない。
……なんだか同い年の男の子と会話しているのってとても新鮮だ。
「もっとお堅くて冷たくて怖い方だと思ってました」
「私が?」
「だって、キース殿下の婚約者でしょ? 彼の威厳の隣でにこやかに笑っている女性なんて想像できませんよ」
「キース様と繋がりが?」
「なきしにもあらず、ってところですね」
掴めない、この男。
「そうだ、自分と踊っていただけませんか?」
「え」
私は唐突の誘いに驚きの声を漏らす。
まさかダンスに誘われるとは思っていなかった。それと辺りはに一気に周りが静かになった。ルイスの顔も血の気を引いているように思えた。
……え? なに?
私は背中でとんでもない殺気を感じて、振り向いた。
ここの会場にいる者たちが皆、目の前の男性に向かってお辞儀をしていた。凄い光景だった。この会場の中で最高権力を握る自分の婚約者に圧倒される。
「キース、様」
彼の名を口にする。
まさか、今現れるとは……。
物凄い形相で私たちを睨んでいた。…………主にルイスを。
殺す勢いだ。怖いよ、キース。
もっと穏やかな表情して。幼い頃からずっと忘れているけど、スマイルスマイル!
十九歳のキースは驚くほど美青年に成長していた。幼少期の美貌を保ったままここまできたって感じだ。
彼のサラサラな滑らかな黒髪は腰ほどまで胸元辺りまで伸びており、それを後ろで一つに纏めている。……カッコいい。
ブルーの瞳は光にかざせば透き通るほどの青さのままだ。……美しい。
やや不機嫌だが、凛々しさを忘れない端整な顔立ち。……素敵!!
いつもと違い、正装でビシッときめており、存在するだけで場が引き締まる。……神!!
完璧な王子を前に私は笑みを浮かべる。
「キース殿下」
ルイスはすぐにキースに向かって頭を下げる。
これは、私もお辞儀の体勢になった方が良いわよね。一応、流れに身を任せておこう。
私が姿勢を低くしようとしたら、キースに「お前はいい」と止められた。私は動きを止めて、姿勢を元に戻した。
「お誕生日おめでとうございます、キース様」
私は最高の笑みをキースに向けた。
ああ、この無愛想な顔を見たらどこか安心するわ!
「今年も沢山キース様を愛させてください」
私はなんの恥じらいもなくいつも通りそう言った。
その瞬間、少しだけ会場がざわっとした。キースは私を睨んだまま何も言わない。
……逃げ出しちゃおっかな。
私の頭の中に出てきた単語は「走」だった。この張り詰めた妙な空気感にこれ以上いたら、息が詰まりそうだ。
走り出せ~~~!!!
リトルニコルは頭の中でそう叫んでる。……けど、今日は私の社交界デビューだし、婚約者キースの誕生日パーティーだし。
てか、この状況下でも私を無視するなんて良い度胸だわ。
 




