第2話 入学式
久保田君と再会したのは高校の入学式だった。
昇降口前に張り出されていたクラス分け表を眺めていた時、後ろから声をかけられた。
「貴女、確か佐伯さんだったかしら?」
振り返ると入試の時に出会った和風美人だった。
「えーと。吉田楓さん?」
「はい。吉田楓です。貴女も受かってたのね。」
「お互い合格して良かったですね。」
私はキョロキョロと周りを見回した。
「あ、紀夫を探してる?」
「紀夫?ああ…ええ、久保田君は?落ちたんですか?」
「紀夫が落ちた?…アハハ…貴女、ジョークのセンスが良いわね。」
私は吉田さんに褒められた様だったが、どこにお笑い要素があったのか理解に困った。
「安心して。紀夫も受かってます。彼なら今しがた、職員室に呼ばれて行ったわ。」
「え?入学早々に職員室呼び出し…久保田君って大人しそうに見えたけど。もしかして大問題児なんですか?」
「プッ!あ、貴女って本当に面白い人ね。」
「いえ、あの…何が面白いのか皆目見当がつかないんですけど。」
「いずれわかるから大丈夫。それより佐伯さんは何組だったの?」
「私は2組ですね。」
「じゃあ同じクラスだわ。」
もう一度、クラス分け表を見る。2組に吉田さんの名があった。良く見ると私の名前の二つ前に久保田君の名前もあった。
「紀夫も同じクラスよ。私たちってなんだか運命感じない?」
「運命だなんて大袈裟な。」
「そう?私は大袈裟とは思わないんだけど。」
吉田さん人差し指を立てて頬に当てると、コテンと首を傾げてうーんと考える仕草をした。美人がこのポーズをするのは反則技だ。チートだ。この人、どこまで可愛いんだか。女の私でも「惚れてまうやろ〜」と叫びたくなった。
「そろそろ教室に行きましょう。」
「ええ。」
吉田さんが促すので私も頷いて、二人連れ立って教室へと向かった。
教室で担任の自己紹介があり、その後は入学式の為にクラス毎に体育館へと移動した。久保田君の姿は教室には無かった。
体育館に入ると、久保田君は既に来ていた。私たちが所定の椅子に座ると、隣の隣に久保田君が座った。彼の顔をついつい見てしまう。醤油顔のくせに凛々しい。頬が熱い。
久保田君が私の方を見た。視線が交差する。彼の顔がニカッと笑った。何その可愛い笑い方。卑怯だ。私はサッと視線を外して他所を向いた。
私の斜め後ろに座る吉田さんが視界に映った。彼女は真顔で久保田君を見ていた。
入学式は滞りなく進み、新入生代表の挨拶となった。司会の教頭先生がマイクに向かって呼び出しをする。
「続いて新入生代表の挨拶。一年二組。久保田紀夫。」
「はい!」
久保田君が立ち上がり演壇へと上がっていく。え?彼が代表?確か代表は入試成績首席がするんだっけ。
私は後ろを振り向くと吉田さんがコクリと頷いた。久保田君って賢かったのだと理解した瞬間だった。
入学式も終わり体育館から教室に戻る。五十音順に座席が指定されていたので私の二つ前の席に久保田君。吉田さんは遠く離れて窓際の一番後ろに座っていた。
「では、いきなりだけど席替えするわね。くじ引きだから五十音順にくじを引きに来て。赤井君。」
担任の女性教諭が席替えを言い出した。くじ引きの結果、吉田さんは位置が変わらず窓際の一番後ろ。その前に久保田君。吉田さんの右横が私となった。なんというご都合主義な書き手さんだろ。
「聞いてよ、紀夫。」
吉田さんの呼びかけに久保田君が振り返る。
「佐伯さんたらね、紀夫の事を入試に落ちたんじゃないかとか、学校始まって以来の大問題児なんじゃないかとか、私を笑わせにきて大変だったのよ。」
「ちょ。私は別に笑わそうとしてた訳ではないです。それに『学校始まって以来』とか尾鰭をつけないで下さい!」
「すまん、楓。お前的には面白かったのかもしれないが、俺には話がさっぱり見えてこない。」
「そこは貴方と私の仲でしょ。私が一を言ったら十を理解しなさい。」
「世間ではそれを無茶振りと言うんだぞ。」
二人のやり取りが夫婦漫才の様で、私は少しイラッときた。気になったのでズバリと聞いてみる事にした。
「あのね。」
「どうかした?」
「久保田君と吉田さんて、下の名前を呼び捨てで呼び合ってるよね。確か入試の時は苗字で呼んでなかった?」
「ああ、そうだったわ。」
吉田さんが思い出す様に答えた。久保田君は黙っている。
「この一ヶ月の間に、二人の間で何かあったの?」
私はどちらかが告白をしたのではないかと考えた。
「あったと言えばあったな。」
久保田君が答えた。ああ、告白イベは開催されたんだ。私は何故か気が滅入ってきた。聞きたくないけど、聞いておきたい。
「もしかしてだけど、二人は付き合ってるとか?」
「付き合えてない!」
「付き合えてません!」
二人がハモって言った。
私はその答えを聞いて違和感を覚える。
二人は恋人として付き合ってないのは分かった。でも…
付き合えてないとはどういう事なんだろう。
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(`-ω-)y─ 〜oΟ




