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第四話 ゲートをくぐるとそこは火星でした (2)

  ――木星エウロパから火星行きのゲートをくぐったわけだが、次の案内人はどこの誰だかわからないし。本当に火星に着くのかどうかもわからないし。

 大丈夫なんだろうか……


 「火星にようこそ、お兄ちゃん。

 いや、おじさん? エウロパから来たんだよね」


 ゲートを出た瞬間にふいに声をかけられたが、相手がいない。

 と、目線を下に移したら、片目と片腕がマシンの男の子だ。

 シエンやラクーンさんよりも一回り小さい。


 自分に続いてラクーンさん、シエンの順番でゲートから出てくる。


 それにしても、この歳でここまでマシン化されているのは珍しい。

 というか、そもそも子供自体も今の時代珍しいわけだが。


 ここが火星と言われてもいまいちピンとこない。まあエウロパから一歩しか移動していないわけだし、外の景色が見えるわけでもない。

 

 「おじさんと、あとは? 子供と、人型端末か……

 変な組み合わせだな。誘拐犯?」


 いきなり、失礼なお子様だ。

 というか、子供だから失礼なのか……

 

 「私は子供じゃないわよ。これでもこのおじさんの上司なんだから」


 ラクーンさんは誰が相手でも相変わらずだ。

 子供慣れしているんだろうか?

 

 さらっと子供は否定したけど。ここにも失礼な人がいた、僕まだおじさんって歳じゃないし。


 「じゃ、人さらい?」


 「それも違うわ」


 「じゃあ、アンドロイド強奪犯」


 「いや、いい加減にそっち系の犯罪から離れてくれるかしら?」


 こっちもラクーンさんと同意見だ。

 

 「じゃあ、なんの犯人なんだよ」


 「それを言う必要があるのかしら」


 ラクーンさんが子供に向けてはいけないレベルの凍てつく目でにらみつけた。

 いけない、そんなにビビらせては……


 「ここに案内人がいるはずなんだけど、どこにいるか知っているかい?」

 

 「オ、オレが、こっここの、あっあっあんにんだぞ?」


 次の案内人が何処の誰だかわからない状態だったが、まさか子供とは……。

 というか、ラクーンさんのせいで無駄に怯えているじゃないか。


 こんなときは……


 「怖くない、ほら、怖くない。」


 「ビビッてなんかいねーよ。

 子供扱いするな!」


 差し出した手をはじかれる。

 噛まれるよりはましだったか。

 

 ちっ、子供にはこのやりとりは早すぎたか……

 というか、自分とラクーンさんとの落差がありすぎる。

 

 「ゲーニーくん、子供扱いしちゃだめよ」

 

 いや、ラクーンさんの扱いが厳しすぎだ。

 頼むからその目はそろそろやめてあげてほしい。

 完全に怯えてしまっている。


 「君が本当に案内人なら、別に子供でも問題はないんだけど」

 

 「だーかーらー、子供扱いすんな。


 いや、しないでください。お願いします」


 子供なりの精一杯の丁寧語だ。

 と思う。後ろにラクーンさんの目が光っていなければ……


 「きみ、名前は?」


 「ここらじゃ、パン屋のお○ので通ってるんだ」


 くっ。なかなかやるじゃないか……。

 さっきのお返しというわけか。


 「それは、こっちが奥さんと言った場合の返答ですね」


 と、シエンがつっこむ。

 なぜこの情報がインストールされているのだろうか。

 通常OSでは絶対にありえない。

 この問答が意味することを知っていない限り。 


 …………。


 …………。


 …………。


 「くだらない問答はそれまでにして、話をすすめましょ。

 あなた、名前はなんていうの?」


 「サン・ハオ」


 「それで、ハオくん。

 私たち月行きのゲートをくぐりたいんだけど、すぐそこにあるのかしら」


 「この前まではここにあったんだけど……

 今は……。もっていかれちまった……」


 「誰に? なんで?」


 「いっぺんに聞いてもだめよ、ゲーニーくん」

 

 確かに……

 こういうやりとりはラクーンさんに任せるか……


 「確か、火星はマシン派とバイオ派がもめていたわね?

 それと何か関係があるのかしら?」


 そういえば聞いたことがある。火星では永らく労働者のマシン派と管理側のバイオ派が対立していたっけ……


 「シエンちゃん、ここ最近火星で大きなニュースはある?」


 「緊張状態にあった、マシン派とバイオ派で小競り合いが起きたくらいです」


 「公にはマシン派から手を出したことになっていますが、マシン派の中にいるバイオ派のスパイのしわざと噂されています」


 「まあ、実際にはどうなのかしら」


 「これに伴い、危険指定されている火星の地域はゲートが封鎖されているはずなんですが、

 バイオ派は月と行き来しているらしいのです」


 「それね。それで、ゲートはどこに行ったのかしら?」


 「お屋敷に持っていかれちまった」

 

 「どうしましょう、ラクーンさん」


 「用事があるのはゲートだけで、火星のいざこざには興味ないわ」


 「そんな、冷たい」


 「そんなこと、言ってたら月になんか行けないわよ」


 「まあ、それもそうかもしれませんが……

 でも、どうにもならないんでしょうか」


 「ここまで長引いた火星の抗争よ。私たちがちょっと動いたところでどうにもならないわ。

 それとも武力介入してみる?」


 「いや、なんでそんな物騒な話になるんですか」


 なぜ武力による戦争の根絶を目指さなければならないのか……


 「じゃあ、あきらめなさい。

 そのゲートがある屋敷に忍び込んで、ゲートだけくぐって火星とはおさらばするわよ」 


読んでいただき、ありがとうございました。

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