57話 轟く雷鳴
夜。
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深層寄り区域。
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森。
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静か。
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……ではない。
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“ギギギ……”
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遠く。
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雷。
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蒼い光。
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木々の奥で、
何かが高速移動していた。
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リシア「……またいるな」
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トールは黙っていた。
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影粘域。
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薄く展開。
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周囲警戒。
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ヨグ『蒼き天帝反トルニルスタッグの応を確認』
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“ぱちっ”
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ローグが笑う。
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ローグ「完全に縄張りじゃな」
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その時。
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小型スライム。
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一体。
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高速接近。
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メタの元へ。
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ぷるぷる震える。
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ヨグ『蒼月草群生地を発見』
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空中。
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術式表示。
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かなり大規模。
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リシア「デカいな……」
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ローグ「深層漏出点に近いのう」
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トール「行く」
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森を進む。
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空気が重い。
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魔力濃度。
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高い。
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そして。
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開けた場所。
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そこには。
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蒼月草。
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大量。
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地面一帯が、
蒼く光っていた。
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リシア「うわ……」
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幻想的。
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まるで月光。
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メタが震える。
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嬉しそうだった。
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小型スライム達が散開。
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採取開始。
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だが。
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ヨグ『警戒推奨』
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“ぱちっ”
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次の瞬間。
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“ギュンッ!!”
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雷。
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蒼い閃光。
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リシア「っ!?」
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何かが突っ込む。
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速い。
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影粘域自動展開。
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“ギィィン!!”
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火花。
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黒い粘性が裂ける。
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トール「……硬いな」
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そこにいた。
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巨大甲殻。
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蒼い外殻。
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鋭い脚。
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背部から雷が走る。
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さらに。
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翼。
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蒼雷を纏っていた。
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リシア「飛ぶのかよ……!」
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ヨグ『高周波雷殻を確認』
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ヨグ『極めて高い再生能力を確認』
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ローグが目を細める。
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ローグ「……面白い」
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蒼き天帝。
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トニトルスタッグ。
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完全に姿を現した。
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“ギギギギギ……”
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空気が震える。
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蒼雷。
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周囲へ拡散。
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木々が焼ける。
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リシア「魔力量ヤバくない?」
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ヨグ『Aランク上位個体』
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“ぱちっ”
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ヨグ『現時点での正面戦闘は危険です』
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トール「……分かってる」
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だが。
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逃げなかった。
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トニトルスタッグが消える。
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“ギュンッ!!”
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雷速。
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空中。
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急加速。
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ナイトが影へ沈む。
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次の瞬間。
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“ザァンッ!!”
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衝突。
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空中火花。
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ナイトが吹き飛ぶ。
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リシア「ナイト!?」
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ナイトが着地。
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だが。
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傷。
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深い。
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ヨグ『超電流を確認』
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ヨグ『切断能力が極めて高い』
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その瞬間。
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メタ。
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十体人体形成。
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武器投擲。
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槍。
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剣。
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斧。
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全方位。
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だが。
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全部避けた。
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“ギュンッ!!”
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蒼雷。
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空中機動。
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異常速度。
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リシア「見えねぇっ!!」
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ヨグ『視認対応不足』
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ヨグ『予測制御推奨』
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トールの目が細まる。
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影粘域。
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広げる。
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空間全体。
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雷の軌道。
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風。
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影。
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読む。
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次の瞬間。
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“ギィンッ!!”
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防ぐ。
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ギリギリ。
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だが。
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トールの腕。
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裂傷。
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血。
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リシア「速すぎる……!」
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ローグが笑う。
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ローグ「いい相手じゃ」
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その時。
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蒼き天帝。
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空中停止。
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複眼。
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こちらを見る。
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そして。
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雷が集まる。
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蒼い電流。
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刃のように圧縮。
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ヨグ『高出力攻撃』
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ヨグ『回避推奨』
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だが。
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トールは見ていた。
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雷。
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軌道。
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高周波。
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そして。
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“切断”。
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トール「……そういう事か」
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影粘域が変化。
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黒い粘性。
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回転。
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循環。
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ヨグの単眼が開く。
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『理解を確認』
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次の瞬間。
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蒼雷が放たれる。
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“ドォォォォン!!”
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爆発。
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森が揺れる。
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煙。
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リシア「トール!!」
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その中。
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黒い影。
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立っていた。
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影粘域。
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回転。
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雷を受け流していた。
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ヨグ『循環偏向成功』
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“ぱちっ”
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リシア「防いだ!?」
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ローグが笑う。
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ローグ「ハハッ!」
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ローグ「見えてきたのう!」
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だが。
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トールは息を吐く。
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腕。
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震えていた。
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まだ完全ではない。
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トニトルスタッグも、
こちらを見ていた。
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警戒。
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認識。
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そして。
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“ギュンッ!!”
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雷と共に消える。
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森が静かになる。
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リシア「……逃げた?」
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ヨグ『訂正』
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“ぱちっ”
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ヨグ『観察終了です』
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トールは蒼雷が消えた空を見る。
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速さ。
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雷。
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超電流。
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高周波切断。
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今のままでは、
まだ届かない。
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だが。
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確実に見え始めていた。
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トール「……次だ」
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風が吹く。
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蒼月草が揺れる。
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そして。
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深層の雷は、
再び牙を研ぎ始めていた。
■ 蒼き天帝トニトルスタッグ(第57話時点)
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■ 個体名
トニトルスタッグ
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■ 二つ名
【蒼き天帝】
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■ 種族
甲虫系魔物
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■ ランク
A+ランク
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■ 危険度
Aランク上位級
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通常のAランク魔物を超える、
極めて高い:
- 機動力
- 切断能力
- 空中戦性能
を持つ。
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特に:
高速戦闘へ未対応の冒険者は、
接近すら困難。
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■ 外見
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・巨大クワガタ型魔物
・蒼い甲殻
・鋭利な脚部
・雷を纏う外殻
・背部に高速飛行翼を持つ
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飛行時は蒼雷を放ち、
空中へ光の軌跡を残す。
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■ 特徴
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【超高速機動】
異常な加速性能を持つ。
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直線速度だけでなく:
- 急制動
- 急旋回
- 空中変則軌道
にも優れる。
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ヨグ曰く:
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«『視認対応のみでは対処困難です』»
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【超電流】
体内で生成した高圧電流を、
外殻全体へ自由に流す能力。
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特に顎部と脚部は:
高周波振動+雷属性
によって、
極めて高い切断力を持つ。
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木々を一瞬で切断したのは、
この能力によるもの。
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【高周波振動】
顎部や脚部を高速振動させ、
切断性能を飛躍的に上昇させる。
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防御の上から削る性質を持ち、
粘性防御ですら深い傷を残す。
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【回復強化(大)】
極めて高い再生能力。
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甲殻損傷や筋肉断裂程度なら、
短時間で修復可能。
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その理由は:
大量の蒼月草を長期間摂取したため。
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蒼月草の高濃度回復魔力を取り込み続けた結果、
異常な再生能力を獲得した。
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■ 生息地
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深層寄り区域。
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蒼月草群生地周辺を縄張りとしている。
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高濃度魔力地帯を好み、
通常魔物では近付く事すら難しい。
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■ 現時点での評価
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トール達はまだ、
完全には対応できていない。
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特に:
- 空中高速戦
- 高周波切断
- 雷循環攻撃
への対応不足がある。
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だが。
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トールは:
- 循環
- 回転
- 流れ
を見始めている。
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トニトルスタッグとの戦いは、
単なる強敵戦ではない。
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影粘域そのものを、
次段階へ押し上げる戦いになり始めている。
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ローグ曰く:
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«「空”を支配する厄介な魔物じゃ」»




