53話 錬金術
地下演習場。
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壊れた魔導ゴーレム。
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煙。
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砕けた術式核。
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リシア「……やり過ぎた?」
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ヴェルクがため息を吐く。
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ヴェルク「Bランク用だったのだけど」
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ローグが笑う。
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ローグ「耐えた方じゃろ」
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リシア「基準おかしくない?」
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その時。
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ヨグの単眼が、
ぱちりと瞬く。
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ヨグ『次段階成長案を提示します』
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リシア「絶対ロクでもない」
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ヨグ『否定』
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“ぱちっ”
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ヨグ『今回は比較的安全です』
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トール「比較的?」
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ヨグ『錬金術です』
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少し沈黙。
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リシア「……錬金術?」
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ローグが眉を上げる。
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ローグ「ほう」
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ヴェルクも反応した。
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ヴェルク「珍しいわね」
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トール「そんなに?」
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ローグ「扱える者が少ない」
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ローグ「特に回復薬系はな」
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ヨグ『現在の赫月の盟約は継戦能力が高い』
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ヨグ『しかし高位回復手段が不足しています』
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“ぱちっ”
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ヨグ『改善推奨』
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リシア「また効率の話始まった」
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トールは少し考える。
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確かに。
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今は:
- 粘性回復
- 再生強化
がある。
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だが。
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消耗戦はまだ弱い。
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特に:
- 魔力
- 毒
- 重傷
への対応。
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ヨグ『加えて』
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空中へ術式展開。
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蒼い植物。
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草。
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淡く光る。
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ヨグ『蒼月草』
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リシア「綺麗……」
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ヨグ『高位魔力植物』
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ヨグ『深層級回復薬の主要素材です』
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ローグが腕を組む。
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ローグ「なるほどのう」
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ヴェルク「でも蒼月草は高いわよ?」
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ヨグ『購入推奨』
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リシア「金で解決するタイプだった」
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トール「……買う」
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即答。
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ローグが笑う。
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ローグ「行動だけは早いのう」
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■ 街
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昼。
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市場。
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人混み。
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喧騒。
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トール達は歩く。
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リシア「錬金術の本なんてあるのか?」
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ローグ「専門店じゃな」
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裏路地。
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古びた店。
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看板。
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【薬術・錬金素材】
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店内。
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薬草の匂い。
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棚一面の本。
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瓶。
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素材。
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メタがぷるぷる震える。
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興味津々だった。
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ヨグ『右奥三段目です』
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即座。
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リシア「お前便利だな」
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ヨグ『肯定』
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“ぱちっ”
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トールが本を取る。
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【基礎錬金術】
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さらに。
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蒼月草。
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小瓶入り。
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淡い蒼光。
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リシア「……高っ」
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値段を見る。
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かなり高価。
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ヴェルク「深層素材だから当然ね」
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トール「買う」
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即決。
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ローグ「迷わんのう」
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トール「必要だから」
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ヨグ『高評価』
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“ぱちぱちっ”
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■ 拠点
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夜。
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机。
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錬金道具。
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簡易蒸留器。
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薬鍋。
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リシア「なんか研究室みたいになってきたな」
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ローグ「元々まともではない」
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メタが本を包む。
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取り込む。
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知識。
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術式。
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薬理。
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全てが流れ込む。
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ぷるっ
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メタの身体が淡く光る。
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その瞬間。
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【天の声】
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使役個体【メタ】が
【錬金術(初級)】を獲得しました。
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【調合適性】を確認。
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【薬液精製能力】を確認。
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リシア「覚えるの早っ!?」
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ヨグ『粘性制御との相性が極めて高いためです』
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メタが嬉しそうに震える。
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ローグが蒼月草を見る。
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ローグ「で?」
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ローグ「やるのか」
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トールが頷く。
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蒼月草。
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魔力水。
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深層回復素材。
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並べる。
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ヨグ『調合手順を開始します』
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空中。
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術式表示。
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温度。
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魔力循環。
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混合比率。
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全てが表示される。
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リシア「ズルくない?」
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ヨグ『知識提供のみです』
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“ぱちっ”
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ヨグ『作業は本人が行います』
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メタが動く。
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粘性。
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極めて精密。
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蒼月草を砕く。
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混ぜる。
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循環。
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圧縮。
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淡い蒼光が、
液体へ溶け込む。
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ローグの目が細まる。
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ローグ「……精度が高い」
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ヴェルクも驚いていた。
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ヴェルク「初めてとは思えないわね」
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ヨグ『粘性操作精度を流用しています』
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“コポ……”
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液体が変化する。
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蒼。
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深い蒼。
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そして。
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完成。
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小瓶。
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内部で、
蒼い光が揺れていた。
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【天の声】
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【上級回復薬】を作成しました。
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【錬金術(初級)】熟練度上昇。
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【粘性回復(中)】との相乗効果を確認。
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リシア「……マジで作れた」
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ローグが笑う。
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ローグ「化け物共め」
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ヴェルクが小瓶を見る。
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静かに呟く。
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ヴェルク「Bランク昇格直後に上級回復薬作成……」
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少し間。
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ヴェルク「報告したくないわね」
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リシア「分かる」
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ヨグ『秘匿推奨』
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“ぱちっ”
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その時。
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トールの影粘域。
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僅かに、
蒼く光った。
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ヨグの単眼が、
静かに細まる。
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『蒼月草との適合を確認』
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『次段階条件へ接近』
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トール「……次?」
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ヨグ『まだ開示不可です』
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リシア「またそれか」
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だが。
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確実に。
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赫月の盟約は、
新たな領域へ踏み込み始めていた。
■ 上級回復薬
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■ 分類
回復薬/錬金薬
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■ 作成者
メタ
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■ 使用素材
・蒼月草
・魔力水
・深層回復素材
・補助薬液
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■ 概要
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蒼月草を主素材として作成された、
高品質な回復薬。
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通常の回復薬よりも効果が高く、
Bランク以上の冒険者でも実用に耐える。
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蒼月草に含まれる高濃度の回復魔力を、
錬金術によって薬液へ定着させたもの。
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■ 外見
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・深い蒼色の液体
・瓶の中で淡く発光する
・揺らすと月光のような粒子が流れる
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■ 効果
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【高位回復】
深い傷の治癒を促進する。
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【出血抑制】
出血を素早く抑える。
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【疲労回復】
肉体疲労と魔力疲労を軽減する。
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【回復促進】
自己再生系・粘性回復系スキルとの相性が良い。
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■ 特徴
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トールの【粘性回復(中)】や、
メタの【粘性回復(中)】と併用することで、
治療効果がさらに上昇する。
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特に、
粘性で薬液を傷口へ保持することで、
回復成分を長く浸透させる事が可能。
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そのため、
単独使用よりも粘性系能力との組み合わせで真価を発揮する。
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■ 制限
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欠損再生や即時完全回復は不可能。
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あくまで:
- 深い傷の治癒促進
- 出血抑制
- 疲労回復
- 戦闘継続補助
が中心。
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■ 備考
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蒼月草は高価かつ希少。
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そのため、
量産には素材確保が必要。
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ヨグ曰く:
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«『素材効率は良好です。ただし、調合工程に改善余地があります』»
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■ 錬金術(初級)
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■ 獲得者
メタ
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■ 獲得方法
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錬金術の基礎書を取り込み、
知識と術式を吸収したことで獲得。
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メタの粘性制御能力と相性が高く、
通常の初心者よりも高精度な調合が可能。
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■ 概要
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素材の性質を理解し、
魔力と薬効を抽出・混合・安定化させる技術。
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初級段階では、
主に薬液や簡易錬成品の作成が中心。
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■ 可能な作業
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・薬草の成分抽出
・魔力水との混合
・薬効の安定化
・簡易回復薬作成
・素材の下処理
・毒素除去補助
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■ メタとの相性
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メタは粘性を自在に操れるため:
- 混合
- 圧縮
- 成分抽出
- 温度管理
- 魔力循環
を精密に行える。
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そのため、
初級段階でも完成品の品質が高くなりやすい。
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■ ヨグの補助
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ヨグは能力出力こそ制限されているが、
知識提供と術式解析は可能。
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そのため:
- 配合比率
- 温度管理
- 魔力循環
- 失敗原因の解析
を提示できる。
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ただし、
実際に作業するのはメタ本人。
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■ 今後の成長性
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錬金術が成長すれば:
- 高位回復薬
- 状態異常回復薬
- 魔力回復薬
- 武器強化液
- 素材加工液
なども作成可能になる。
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赫月の盟約にとって、
戦闘外の重要能力になり得る。




