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39話 深層の気配

赫月の盟約——


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夜。


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ギルド内は静かだった。


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普段なら酒と騒ぎ声で溢れている時間。


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だが。


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今は違う。


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異常化。


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赤黒結晶。


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行方不明の冒険者。


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不安が広がっていた。


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トールは訓練場に立っている。


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目の前。


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メタ。


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ナイト。


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そして。


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ローグ。


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ローグ「もう一度やれ」


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トールは頷く。


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深呼吸。


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影。


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風。


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二つを意識する。


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トール「……融合」


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メタ。


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ナイト。


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影と風が重なる。


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だが。


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途中で崩れる。


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影が霧散する。


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トール「……くそ」


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ローグ「焦るな」


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杖を鳴らす。


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ローグ「力だけ合わせても意味はない」


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メタを見る。


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ナイトを見る。


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ローグ「噛み合わせろ」


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リシアが腕を組む。


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リシア「簡単に言うなよ……」


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ローグ「簡単ではないから面白いんじゃ」


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悪びれない。


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その時。


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ユリウス。


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ユリウス「高濃度反応、接近」


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全員の空気が変わる。


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ローグの目が細くなる。


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ユリウス「中層境界付近」


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ユリウス「異常反応、複数」


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ヴェルクが訓練場へ入ってくる。


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ヴェルク「緊急依頼です」


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表情が険しい。


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ヴェルク「中層境界で魔物暴走」


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資料を渡す。


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ヴェルク「ブラックハウルだけじゃありません」


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ヴェルク「複数種が混ざっています」


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縄張り崩壊。


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さらに悪化している。


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ローグ「数は」


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ヴェルク「確認不能」


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静寂。


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ローグがトールを見る。


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ローグ「行くぞい」


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トール「ローグも行くのか」


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ローグ「今回はのう」


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珍しい。


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それだけ危険ということだった。


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ヴァルグリム深林——中層境界。


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空気が違う。


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重い。


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赤黒い霧。


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地面には大量の結晶。


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脈打っている。


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リシア「なんだよこれ……」


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ナイトが低く唸る。


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メタも大剣を握る。


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その時。


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“グルル……”


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前方。


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異常化ブラックハウル。


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さらに。


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牙獣。


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蛇型魔物。


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本来なら縄張りが違う。


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それが集まっている。


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しかも。


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全部。


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赤黒い脈動。


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ローグ「……近いのう」


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トール「何がだ」


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ローグは答えない。


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次の瞬間。


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魔物達が一斉に動く。


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咆哮。


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地面が揺れる。


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トール「来る!」


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ナイト。


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風。


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影。


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迎撃。


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メタ。


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大剣。


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叩き潰す。


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リシアが剣を振るう。


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だが。


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多い。


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次々来る。


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異常化個体。


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しかも。


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死んでも動こうとする。


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リシア「キリがねぇ!」


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トール「影粘域!」


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影が広がる。


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拘束。


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だが。


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別方向。


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蛇型魔物がリシアへ。


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間に合わない。


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その瞬間。


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“ドォン!”


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竜巻。


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魔物が吹き飛ぶ。


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ローグ。


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杖を構えている。


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ユリウス「排除完了」


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圧倒的。


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だが。


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ローグの顔は険しい。


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ローグ「……まずいのう」


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次の瞬間。


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森の奥。


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“オオオオオオオ……”


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巨大な咆哮。


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空気が震える。


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地面が揺れる。


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ナイトが毛を逆立てる。


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メタも硬直する。


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リシア「……なんだよ今の」


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ローグが森の奥を見る。


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その目から笑みが消える。


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ローグ「深層の主級じゃ」


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静寂。


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トール「……主級」


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ローグ「本来、中層に出てくる存在ではない」


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その時。


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赤黒結晶が一斉に脈動する。


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ドクン。


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ドクン。


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ドクン。


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まるで。


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呼応している。


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ローグ「……来るぞい」


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森の奥。


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巨大な影。


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木々より大きい何かが。


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ゆっくりと姿を現し始めていた。

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