21話 思い出
朝。
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火は、もうついている。
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トールは起きていた。
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静かだ。
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メタに触れる。
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トール「出せ」
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肉が出る。
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血の匂いはない。
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(……抜けてる)
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トールは頷く。
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ナイフを握る。
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刃を入れる。
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入る。
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だが——
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(……違う)
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筋を断つ。
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引っかかる。
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滑らない。
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(……こんなもんか?)
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手を止める。
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思い出す。
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バラガン。
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あの時。
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同じ肉。
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同じように切っていた。
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だが——
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(……もっと通ってた)
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迷いがない。
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滑るように。
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(……違う)
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トールはナイフを見る。
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(……これじゃない)
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リシア「朝からやってるな」
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振り返る。
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リシアが近づく。
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肉を見る。
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ナイフを見る。
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軽く手に取る。
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刃を当てる。
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止まる。
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リシア「……切れてはいるな」
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トール「でも違う」
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リシア「何が」
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トール「通りが悪い」
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少し間。
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リシアが頷く。
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リシア「刃が負けてるな」
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トール「変える」
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リシア「……なら探すか」
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トールは頷く。
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■ 武器屋
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店内。
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刃が並ぶ。
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トールは手に取る。
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軽い。
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振る。
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(……違う)
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別の一本。
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重い。
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(……これも違う)
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何本か試す。
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どれも違う。
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リシア「どうだ」
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トール「ない」
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リシア「いいのはあるが——」
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店主が出す。
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細い刃。
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明らかに違う。
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トールが持つ。
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(……いい)
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リシア「高いぞ」
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店主が値段を言う。
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トールは黙る。
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リシアも黙る。
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少し間。
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リシア「……今回はやめるか」
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トールは頷く。
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帰ろうとする。
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ふと視線が動く。
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隅。
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廃品置き場。
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雑に置かれた刃。
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一本、目に入る。
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トールが近づく。
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手に取る。
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軽い。
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曇った刃。
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(……似てる)
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バラガンのナイフ。
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トール「これ」
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店主が見る。
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店主「ああ、それか」
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店主「見た目に反して全く切れん」
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店主「紙一枚も切れないぞ」
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トールは黙る。
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ナイフを見る。
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トール「試す」
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店主「好きにしろ」
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紙を出す。
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トールは刃を当てる。
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引く。
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スッ——
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紙が切れる。
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店主が止まる。
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もう一度。
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スッ——
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綺麗に切れる。
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店主「……は?」
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ナイフを見る。
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トールを見る。
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店主「持ち主を選ぶやつか」
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少し間。
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店主が笑う。
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店主「お前、そういうの見つけるの得意だな」
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トールは少し考える。
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トール「……たまたまだ」
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リシアが横で小さく笑う。
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リシア「前も似たようなことしてただろ」
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トールは何も言わない。
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ナイフを見る。
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(……これでいい)
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購入。
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■ 拠点
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火。
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肉。
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ナイフを入れる。
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スッ——
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通る。
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(……これだ)
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筋を切る。
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滑らか。
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迷いがない。
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(……同じだ)
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焼く。
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火を見る。
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調整する。
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ひっくり返す。
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均一。
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一口。
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トール「……上がった」
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明確。
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体に入る。
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(……通ってる)
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リシアが見る。
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リシア「どうだ」
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トール「いい」
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リシア「なら当たりだな」
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鍋。
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水。
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肉。
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煮る。
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繊維がほどける。
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柔らかくなる。
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トールは頷く。
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(……まだ上がる)
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夜。
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火が揺れる。
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トールはナイフを見ている。
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静かに。
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(……これでいい)
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リシアは横で寝転ぶ。
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何も言わない。
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ただ火を見ている。
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静かな時間。
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それだけで、十分だった。
■ 名称 形見のナイフ
■ 分類
シーフナイフ
■ 素材
不明
■ 特徴
・見た目は鈍く、通常使用では切れ味が出ない
・登録された使用者のみ、本来の性能を発揮
・対象の“質”に対して滑るように刃が通る
■ 性能
Aランク魔物まで難なく解体可能
■ 特殊機構
【使用者登録】
特定の個体に紐付けられる機構
登録者以外が使用した場合、性能は発揮されない登録は前使用者が行う
■ 現状
バラガンにより事前登録済み
トールのみ本来の性能を引き出せる状態
■ 効果
・解体精度の大幅向上
・素材損失の低減
・調理効率の上昇
■ 備考
・外見では価値が判断できない
・廃品扱いされていたが、本来は高位装備




