第49話 ブリノフ学院の加護〜精霊降臨祭編〜part2
前回のあらすじ
学院中にある噂が流れる。
精霊降臨祭の日に告白すると恋が実るというものだった。
そんな中、レイは皆に嘘をついてシエルと内緒でデートをする約束を取り付ける。
※※※※※※
レイとの秘密デートを約束してからか、シエルはレイのことを避けるようになっていた。
「ヤバい、ヤバい...レイを前すると緊張してしまう...」
それからというもの、レイのいる場所にはシエルがいないことが多くなった。
それを疑問に思ったルミエールはレイに何があったのかを聞いた。
「ねぇ?最近シエルの様子おかしくない?」
「そうでしょうか?いつもとお変わりないように思われますが?」
「そうじゃないわよ。レイが来るとシエル逃げるじゃない。何かあったの?」
少し考えてみたが何も思いつかない。
「私に心当たりあることは特に...」
これもルミエールに悟られないようにようにするために演技なのだろうか?
「変ね?私直接聞いてみるわ」
ルミエールはシエルを追って声をかけた。
「シエル!どこいくのよ?」
「なんだルミか。別にどこも行かねぇよ」
「なら向こうでレイと話してるから一緒に来てよ!」
「なっ!それは無理だ!」
「なんでよ!ってか最近変よ?レイのこと避けてない?」
「いや...そんなことはない...ただ...」
「ただ...何よ?」
「えっとーそのー、何でもない!」
シエルはルミエールから逃げるように去って行った。
それからもシエルはレイを避けながら日常を過ごしていた。
そして日は流れ、精霊降臨祭の当日を迎えた朝。
「では行って参りますわ。本日は楽しんでください」
「レイのことは私に任せてください!」
「お願いするわね!ライアも気をつけてね」
「いってらっしゃいなの、レイお姉様、レオお兄様!」
レイは一礼して空挺箒に跨がって飛んで行った。
馬車移動であれば、1日もあれば着くが空挺箒なら2時間程度だ。
「では今日は楽しみましょうなの!と言っても降臨祭が始まるまで2時間ありますの!」
「あー俺はちょっと用事があるから、行けないんだ」
「シー兄もいないの?」
「嘘でしょ?聞いてないわよ!」
「ちょっとな。別の用事が入ったんだよ」
「何よ?別の用事って?」
「それは言えない」
「はぁー?最近ずっと変よ?なんで1人だけ別の予定入れてるのよ?」」
「別にいいだろ!じゃあ悪いけど俺はこれで!」
シエルは人混みの中を掻き分けながら進み、あっという間に姿を消した。
「ちょっと!...どこ行くのよ!?」
「残念ですの...」
「ソフィアちゃんが悲しむ必要なんてないわよ。サーシャやアンナ、イヴァンを誘いましょ!」
「はいですの!」
「リンは?リンも誘っていい?」
「アレスと仲良くしてる女の子のこと?」
「そう!強いしいい奴なんだよ」
「そうね!じゃあ手分けして皆を誘いましょ!私はユリアを呼んでくるわ。アレスはリンね。ソフィアちゃんはサーシャたちを頼めるかしら?」
「はいですの!では1時間後に私の家に集合してくださいの」
「わかったわ!」
ルミエールたちは手分けして、一緒に精霊降臨祭を楽しむメンバーを集めにいった。
——————
一方でレイとの約束の地に向かっているシエルの気分は高まっていたが緊張もしていた。
「普段通り接することができるかなぁ...」
約束の地に着くと既にレイは待っていた。
目の前にすると心臓が飛び出そうなほど鼓動が激しくなっているのがわかる。
(落ち着け俺。平常心、平常心だ)
「よっ!は、早かったんだな?」
「シエル様が遅いんですわ。せっかくのデートですのに女の子を待たせるのは非常識ですわ」
「ごめん、ごめん。これでも急いで来たんだよ」
遅れたことに詫びるシエルに手を差し出したレイ。
「何?どうしたんだよ?」
「罰として今日は手を繋いでいただきますわ」
赤面しながらレイは手を繋ぐように要求した。
レイの手は1度握ったことがあったが、このときは何故か握ることが恥ずかしく思えた。
「どうしたのですか?前のように繋いではいただけないのでしょうか?」
「えっいや...繋ぐよ!繋ぐから」
ギュッと握った手からは汗が出始めていた。
この汗は緊張からくるものであった。
「これ案外恥ずかしいって今気付いたよ」
「私も恥ずかしいですが、シエル様と繫がってることが何より嬉しいですわ!では本日は1日宜しくお願いいたしますわ」
こうしてシエルとレイの秘密のデートは始まった。
——————
マムルーク邸前——。
マムルーク邸ではルミエール以外は既に集合していた。
「ルミ姉来たよ!」
「ごめん、ごめん。遅くなって」
「なんだユリアは一緒じゃないのか?」
「それが探したけどいなかったのよ」
「もう誰かと一緒にいるのかもな」
「歩いてたら会うかもしれないですよ」
「あとはシエルだな」
「シー兄なら来ないよ」
「何故だ?」
「別の予定があるって言ってたよ?」
「ほぉう。別の予定とな?怪しい臭いがするな」
アレクサンドルは何か意味深な表情をしていた。
「サーシャの頭の中にまたお花畑が咲いてるのね」
「怪しい臭いって何よ?」
「もちろん女さ。この日まで秘密にしているんだぞ。女以外に何がある。しかし、ルミエールやレイ様よりいい女がいるのか?」
「ちょっとサーシャ!変なこと言ってルミエールさんを困らせないでよ!大丈夫ですよ。サーシャの妄想だから気にしなくても。シエルさんも鈍感だし戦闘マニアだからあり得ないですよ」
アンナの言うことは確かだ。
シエルに限ってそんなことはない。
ただずっと様子が変だったがそれはレイに対してだけでレイはスワモに帰ってしまったため、別の女という心配はしていなかった。
「まぁお祭りの日なんだし、今日はそういう話しは無しにして楽しみましょ!」
「ルミエール様の言う通りなの!今日は楽しむの!」
出発しようとするとアンナが1人の女の子を見つける。
「あれルイーダさんじゃない?」
そこいたのは1人で歩くルイーダの姿だ。
いつもは兄のカールと一緒にあるはずだが...
「ルイーダ様どうしたなの?」
「あっソフィア!?兄様を見かけてない?」
「いいえ?見てないですの」
「どこに行っちゃったんだろ?昨日の夜から見てないのよね」
「ってか、カールがいなかったら普通に話せるのね...」
「もし見かけたら私が探してたこと伝えてくれる」
「わかったなの」
ルイーダはカールを探して再び人混みの中へと消えて行った。
「昨夜からいないのは心配ね」
「あの男のことだ。前夜祭の日からブラブラしてるのだろう」
「気を取り直して楽しむなのー!」
午前11時——。
精霊降臨祭の本祭がスタートした。
第3主都・ラウジーミルも多くの人で盛況していた。
精霊降臨祭の見どころは水の精霊・ディーネを祝うためのもので、各主都は力を入れて街を飾っている。
毎年どの主都が1番だったのかが競われる。
審査方法はソシロア領の全領民の票数と審査員の評価ポイントで決まる。
そのため、各地から訪れる人も多い。
魔法学院の街だけあって魔力を通じてゲームを多かった。
魔力コントロールで電流の流れるバーを避けながら鉄球を動かすものや、魔拳銃での射的など色んなものがあった。
ルミエールが得意げに挑戦していた。
現役精霊騎士団との白熱した腕相撲大会もあった。
女でありながら力を強さを見せつけるアレクサンドルに楓流拳を使い全てをひっくり返すリン、アレスも負けじと出場するが脚の強化しかできない今では全く歯が立たなかった。
特に盛り上がったのがミスコンにソフィアが参加して会場が荒れに荒れたことだ。
アンナも出場していたが、ソフィアが出ている時点で誰も目にしてくれない。
慰めるようにイヴァンは困った顔をしていた。
祭りを目一杯楽しんだところでそろそろフィナーレも近づいてきた。
最後は1万発の花火が冬の夜空を彩ってくれる。
オススメの場所に移動しているときにルミエールは何かに気付いた。
「あれ?今の...」
「どうしたのルミ姉?」
「今、シエルが見えたような気がしたんだけど」
「シー兄が?見間違えじゃないの」
「あんな格好してるのシエルだけよ。間違えるはずないわ。ちょっと私確認してくるわ!」
「ルミ姉!?今はぐれたらダメだよ!」
「大丈夫、すぐ戻ってくるから!ちょっと待てて!」
ルミエールはシエルを追うように姿を消してしまった。
——————
ルミエールがあっとから迫っていることに気付かないでいた2人は話しをしていた。
「今日は凄く楽しかったですわ」
「そうだな...なんか今もずっとドキドキしてるんだ。レイの近くにいると気持ちが高ぶるっていうか心地いいんだよな」
「フフ...そう言っていただけますとなんだか照れくさいですわ。ですが私もシエル様の側にいると落ち着きますわ」
レイはシエルの肩に寄りかかるように頭を置いた。
「シエル様...」
レイが見つめてくる。
(か、可愛い。けど前にも...この瞳に吸い込まれる感覚を俺は味わって...)
するとレイはシエルの口に自分の唇を近づける。
レイの吐息が少しかかる。
もう自分の意志ではどうにもできるものではなかった。
ルミエールが2人を見つけたときには、想像していなかった光景が目に飛び込んできた。
「...嘘よ...どうして...」
シエルとレイが唇を重ねている現場に立ち会ってしまったのだ。
研修旅行の件からレイとは恋敵手となっていたが、こんなことまですると思っていなかった。
それよりどうしてレイがここに?
スワモに帰っていたのでは?
色んな情報が頭の中をかき混ぜて思考が追いつけなくなり呆然としてしまった。
その間にレイは最後の一声を発しようとしていた。
「シエル様...私はシエル様のことを愛しておりますの!ですから私と...」
最後の言葉だけは言わせてはいけないと思いルミエールは勢いよく飛び出した。
ルミエールと目が合ったレイは動揺すらしていなかった。
そして口から出た言葉は思ってもいない痛烈な言葉だった。
「あら?盗み見なんて非常識なことをされますわね、ルミエール様?」
「嘘でしょ...?非常識って...どうしてそんなに落ち着いていられるわけ?」
「慌てる必要がどこにあるのでしょうか?」
「シエルもどうしてよ?」
「悪いなルミ...」
シエルからの言葉が一番に胸に刺さる。
この言葉を聞いたときには目からは涙が溢れていた。
「どうしてよ!?約束したじゃない!想いは告げないって!?」
ルミエールの問いかけに表情を変えながら答える。
「ハッ!約束?そんなものを私が本当に守ると思っておられたのですか?本当にそう思ってるなら馬鹿ですわ!」
ルミエールとの約束を馬鹿にするようにレイは本音をぶちまける。
「本当に自分が欲しい物、必要な物があるときにくだらない友情ごっこをする馬鹿がおられるとは思えませんわ。ってここにその馬鹿がおられるわけですが」
レイは高笑いしながら罵声を浴びせ続けた。
「ライアも聞いてるんでしょ?どうして出て来ないのよ!ライアもレイの味方をするっていうの?」
ルミエールはどれだけ叫ぼうともアグライアが出てくることはなかった
「なんで無視するのよ!」
信じていた仲間からの裏切り行為、シエルがレイが選んだことの絶望感、理解者であったはずの精霊からの無視に心はズタズタだった。
悲しみの涙...だけが零れ落ちているわけではない。
その涙には嫉妬、憎しみ、怒りあるいは殺意も含まれていた。
「許せない!レイ!アンタだけは許せないわ!」
その嫉妬からくる感情は最高潮に達していた。
ルミエールの身体からは闇のエネルギーが渦巻いていた。
「ルミエール、その全てを私に委ねなさい!」
感情が爆発したルミエールに問いかけてくるのはレヴィアタンだ。
「いいわよ!レイを殺せるなら今は...今だけは!」
「契約成立ね!この身体は貰い受けるわ!」
ルミエールの身体をレヴィアタンが支配した瞬間であった。
「来ましたわ!遂にこのときが!」
レイは喜び祝福を上げるように興奮していた!
「フー...長い時間を要して遂にこの身体を支配することに成功したわね。しかしこの莫大な魔力は自分でも驚くほどね」
レヴィアタンは満足そうだった。
何せルミエールの身体を支配するまでに要した時間は13年になるのだから。
「お待ちしておりましたわ!最後の1人をお迎えすることに立ち会えて感激ですわ!」
レイはレヴィアタンの復活を心から待っていたようだ。
水の精霊の代行者であるレイがどうして救世教の悪魔を待っていたのか?
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引き続き『精霊の加護』を宜しくお願いいたします。




