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精霊の加護 〜Blessing of spirits〜  作者: 荒巻一
第2章 ソシロア編〜ブリノフ学院生活〜
58/71

第48話 ブリノフ学院の加護〜精霊降臨祭編〜part1

前回のあらすじ


 長いようで短かった研修旅行が終わり、ブリノフ学院へと戻ってきた第73期生たち。


※※※※※※

 11月21日の夜ーー。

 研修旅行から帰ってきたシエルたち。

 ラウジーミルは今まで以上に賑やかになっていた。

 街全体は装飾され輝いている。


「何が始まるんだ?」


「精霊降臨祭の準備ですわ」


「確か...学校予定にも書かれていたわね」


 12月7日——。

 この日は精霊教にとって1番大切な日。

 『精霊降臨祭』が行われる日だ。


 精霊降臨祭とは——?

 精霊が始めてこの地に舞い降りたとさており、水の精霊・ディーネがロマノフの前に現れ力を貸し、精霊教が開宗した日である。

 ソシロア領を中心に精霊教を信仰して場所で盛大に祝われる日である。

 中心地はペテルブルクとなっている。


「大変楽しい日になっておりますので、楽しみに待っていてください」


——————

 11月22日ーー。

 今日からまた通常通り授業が行われる。

 そんな学院中に1つの噂が流れ始めたのだ。

 それが…

『精霊降臨祭の日に告白すれば、恋が実る』というものだった。

 学院中はその話しで持ち切りだった。


「お、俺、アイツに告白しようかな?」


「マジ!?いけよ!」


「そんなの嘘に決まってるだろ?」


「いやでもそれで結婚までした人もいるのよ!」


「水の精霊・ディーネ様の恩恵があるんだとか」


「素敵…私、好きな人いるし...言っちゃおかな?」


「水の加護持ってる治癒師いいなぁ…」


 そんな声ばかりが耳に入ってくる。

 

「スゲー浮かれようだな」


「祭りが近いからな」


「祭りが近いって理由で、こんな話しになるのか?普通じゃねぇよ」


 シエルとイヴァンがクラスの浮かれ具合を小馬鹿にするようにクラスメイトを見ていた。

 そんな中、小馬鹿の対象にされているのに気付かず一緒にに浮かれる女がいる。

 そうアレクサンドルだ。


「サーシャも一緒になって盛り上がってるけど、そういうタイプなのか?」


「あぁ、あいつも女だからな。戦闘の時と全然違うから意外かもしれないが...面倒になるぐらい好きさ」


 アレクサンドルは、シエルとイヴァンがコチラを見ながらコソコソ話しをしているのに気付いて近づいて来る。


「男2人で何の話しをしている?恋話か?そうなのか?」


 シエルの顔に自分の顔を近付けてくる。

 その目は輝いていた。

 

「近いんだよ。あとそんな話ししてねぇよ」


「なんだつまらない男たちだな。で私と一緒に恋話するか?」


「はぁ?」


 シエルは呆れた顔をしながら不機嫌そうだった。


「そもそも誰がそんな噂を流したんだよ?どうか考えてもあり得ないだろ?」


「なんてことを言うんだ!こうやって赤い糸が人と人を結んでいくんだぞ。噂だとしても、私は信じる!」


「いやマジかよ?」


「こうなったサーシャは止められない。相手してやるんだぞ」


 イヴァンは席を立ってどこかへ行ってしまった。


「お、おい!イヴァン待ってよ!」


 シエルもイヴァンを追って席を立とうとした瞬間——。

 ガッと腕を掴まれてしまう。

 アレクサンドルはシエルを腕をガッチリ掴んで放さない。それに目が本気だった。

 シエルは掴まれた腕を振り払おうとしたが、さすが重量のある剣を振るうだけの筋力の持ち主だ。拭うことができない。


「でシエルはどっちなんだ?」


「何がだよ?」


「ルミエールなのか?レイ様なのか?」


「はぁ?」


「はぁ?じゃない。お前が好きなのはどっちだと聞いているんだ?ルミエールとは昔からの付き合いなんだろ?長い付き合いだからこそ、なにかあると思うのだ。そしてレイ様の手も握った。好きでもない女の手を握る男なんているか?仮に居たとしても、小さい時だけだ。で、どっちが本命なんだ?」


「おいおい。ただの仲間に決まってるだろ?」


「なっ!あんな可憐な女性を2人も近くに置きながら、また手を出しておいてただの仲間だと!?何の感情も湧かないのか!?」


「ダービーも同じこと言うし。何なんだよ!」


「それはこちらのセリフだ!なら仮の話をしよう。ルミエールとレイ様がお前に好意を寄せているとしたら、お前をどちらを選ぶ!?」


「いや仮も何も、非現実的過ぎる話に答えられるワケないだろ」


「仮の話しだ!」


「あーもうしつこいぞ。無いよ。ってかわからねぇよ!これでいいか」


 シエルには恋愛とか好きとかよくわからない。

 みんな大事な仲間に決まっている。

 確かにルミエールもレイも可愛いし綺麗な顔はしているがそこに好きとかそういう感情は湧かない。

 

「そんなぁ...私が聞きたい答えはそんなものじゃないぞ」


「とにかく、ルミもレイもただの仲間だよ!あいつらもそう思ってるよ!」


 シエルはそう言って席を立って教室から出て行った。


「ったく。ルミエールから聞いてた通りの鈍感野郎だな。ルミエールも酷な男を好きになったもんだ」



——————

 

 アレクサンドルの意味のわからない問いに不満を持ったシエルはブツブツ文句を言いながら廊下を歩いている。

 

「何なんだよ。好きだの、何だのと。お気楽かよ。魔神の復活いつあるか知らないのかよ。魔物に襲われる人や街もあるっていうのに、暢気すぎるだろ」


「シエルーー!」


 ルミエールが後ろから呼んでいる。


「おう、ルミか」


「何、考え事でもしてるの?」


「いや、学院中が浮かれてるだろ?俺たちは強くならなきゃいけないっていうのに」


「でもでも、ずっとは無理よ。たまには休息も必要よ」


「なんだよ、ルミも噂を信じてるのか?」


「信じる信じないとかじゃなくて、楽しむことも大切ってことよ!。それよりシエルは今から暇?」


「まぁ暇だけど?」


「じゃ私に少し付き合ってよ!」


 それからというものルミエ—ルはシエルと一緒にいる時間が多くなった。


——————

 

 それから日時は少し流れる。

 11月30日——。

 

 レイは皆を集めて精霊降臨祭に参加できないことを告げていた。 


「えー!?じゃあレイは当日いないの?」


「はい。この日はディーネ様のお世話をする日となっておりますので」


「そう...残念ね。みんなで一緒に楽しもうと思っていたのに」


「この日はソフィアに案内を頼んでおりますわ。なので私は1人でスワモに戻りますわ」


「任せてなの」


「1人で大丈夫なのか?」


「お兄様もおられますので、大丈夫かと」


「では私が同行いたしましょう」


 名乗りをあげたのはアグライアだった。


「と言っても護衛役にはなりませんが、この機会にディーネに会いに行くなら私も行きます」


「ライアがいるならちょっと安心できそうね」


「レイ姉ちゃん気をつけてね」


「皆さんも是非、精霊降臨祭を楽しんでくださいね」


——————

 その日の夜——。

 シエルは1人、雪の積もる外で素振りをしていた。

 

「ふー...。今日はこのぐらいにしておこうかな」


「シエル様、精が出ておられますね」


「レイか。どうしたんだよ。こんな寒い夜の時間に?」


「シエル様が素振りをしているのが見えたので」


「こうでもしてないと強くなれないからな。無駄の時間を過ごしたくないんだ」


「フフッそうですか。ご立派ですわ。ですが、休息もお取りになりませんとお身体を壊してしまいますわ」


「ルミと同じこと言うんだな」


「シエル様は、ルミエール様のことがお好きなのですか?」


「何でそうなるんだよ?」


「最近、ルミエール様と一ご緒してることが多いと思ったからですわ」


「それ聞いてどうすんるんだ?」


「いえ、どうお想いになっているのかと思っただけですわ。シエル様がお答えしたくなければ、無理に答えなくとも結構ですわ」


「別にどうも思ってねぇよ。最近、学院内でもそんな話しばかりしてるだろ?でも俺にはそんなことどうでもいいんだよ」


「それは...どういう意味でしょうか?」


「わからねぇんだよ。そういうこと。考えたこともなかったから...こうして外の世界に触れることない頃は、ずっと外のことばかり考えてた。今は魔神のことばかり考えてる。ここは平和だよ。でもな、今の魔物に苦しんでる人たちがいると思うと...そんなことしている暇なんてないだろ」


「ではルミエール様のことなんとも...?」


「別に好きとかの感情はないよ。大事な仲間だよ」


 シエルはハッキリとそう言った。

 レイはその言葉を聞いてあるお願い事をした。


「そうですか...では私のお願いを聞いても貰っても宜しいでしょうか?」


「お願い?」


「精霊降臨祭の日に私と一緒にデートをして欲しいのです!」


 レイの口から意外の言葉が出たことでシエルは困惑した。

 そしてそれを言葉にしてしまった以上、ルミエールとの約束を破るようなもの。だがルミエールとの約束は想いを伝えることはしないというもの。

 というよりその日はレイはスワモに帰るはずだ。


「待て待て、聞きたいことが色々あるんだが、まずその日はスワモに帰るんだろ?」


「...帰るのは嘘でございますわ」


「嘘?どういうことだよ?」


「2人っきりで精霊降臨祭を楽しみたいからですわ」


「なんでそうなるんだ?」


「深い理由は言えませんわ。ただ私はシエル様と一緒にこの日を楽しみたいのです」


 レイはシエルの手を握り、上目遣いをしながらシエルの目をしっかり見つめる。


「ダメ...でしょうか...?」


 その瞬間―—。

 何かがシエルの頭の中に落ちる。

 心の奥底で何かがくすぐられる。今までに感じた事もない感覚がする。

 シエルの顔をずっと見つめるレイの目を見ると急に恥ずかしい気持ちと抱きしめたい感情が込み上げてくる。


「俺でよかったら...その別にいいけど」


「本当ですか!?ではこのことは2人だけの秘密ですわ。他の人には決して言わないようにお願いいたしますわ」


 シエルにデートの約束を取り付けて、レイは満足そうな顔をして去っていった。


「なんだ?このドキドキする感覚は...」


 レイの甘い誘惑なのだろうか?

 何故かはわからないがレイのことが急に気になり始めたシエル。

 秘密デートでは何があるのだろうか?


ご覧頂きありがとうございます。

評価やコメントなどいただけると嬉しいです。

引き続き『精霊の加護』を宜しくお願いいたします。

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