第40話 ブリノフ学院の加護〜授業編〜part2
前回のあらすじ
この世界では2つの魔力が存在していた。1つは人間が持つ魔力である『精霊の加護」である。もう1つは魔神が持つ魔神の加護だ。しかし、ここ最近新たに別の力が人間に害を与えているようだ。その力は謎に包まれているが我々はその力を『魔術』と呼んでいる。
※※※※※※
ここはシエルたちのクラス。
勇将学科の今日の授業は実技演習のようだ。実技演習は実戦に慣れるための授業の1つで他クラスとも合同で行う。
今日はBクラスとの合同だ。
「シエル!私と一戦交えてくれないか?」
「あぁ!俺の方から頼みたいよ」
アレクサンドルが直々にシエルに打ち込み稽古を志願してきた。
実技演習は加護の力を使うことは禁じられている。だが先生の許可を得ることが出来れば使用してもいい。
「私はこの片手剣を使う。シエルはどうする?」
シエルは現在使える加護の力で扱う武器が違う。
光の加護は片手剣。
風の加護は双剣。
水の加護は短剣。
「俺も片手剣でやるよ」
「よし、わかった!」
シエルとアレクサンドルは共に木刀と握り締めて、お互いの間合いを取りにらみ合った。
実際、アレクサンドルと戦ったことはない。見たことあるのは高火力の加護の力だけだ。どういう戦い方をするのは知らない。
「いくぞ!」
まず攻撃を仕掛けたのはシエルの方だった。
シエルの動きもジャンヌとの訓練で磨きがかかってはいるが、アレクサンドルは攻撃の全てを綺麗に受け流していく。
「やるな...」
「確かにシエルの動きは早いし的確だ。だがそれだけでは戦いは有利に運ぶことはできない」
アレクサンドルは木刀を両手で握り締めると頭上で構えを取る。身体からは闘気が溢れているのが見える。
シエルとアレクサンドルの違いは剣術ノ型にある。アレクサンドルが使う剣術は1撃の技を得意としている『ノヴァコフ流』である。
「な...なんだこの圧倒的な闘気は!?」
「これが私とシエルとの違いだよ!」
シエルはアレクサンドルから溢れる闘気に押されるように後退りをする。
「加護を力を使わなくても剣術を覚えれば戦いは有利に運べるんだよ!」
アレクサンドルの1撃がシエルを襲う。木刀で受け止めていても振り下ろされた1撃は重たく、メキメキと音を立てているのがわかる。
ボキンッ——。
シエルの持つ木刀が鈍い音を立てながら折れる。
「降参だ...」
「私の勝ちのようだな。だがシエルの動きも悪くはない。ただ素早いだけの単調の攻撃ではダメだな」
「確か剣術って言ってたよな?」
「あぁ!シエルはただ闇雲に剣を振っているだけにしか見えない。加護の力は確かに強いが剣術はその技そのものだ。剣術と加護を組み合われることで、より強い技を出すこともできるんだ」
「なるほど...なら俺にその剣術を教えてくれよ!」
「構わないが...ノヴァコフ流は大剣を使うんだ」
「でもさっきサーシャは片手剣だったじゃないか?」
「技を出すときは両手を使ってただろ?それに私の剣は大剣でも片手剣でもないんだ。大きさは片手剣と同じなんだが、重さは大剣並なんだよ」
アレクサンドルの扱う武器は『中剣』と呼ばれるもので、力のある女性が好む武器の1つである。重さがあるため、片手剣より1撃1撃が重たく威力のある攻撃ができる。
「だから私は片手剣も使うことには慣れているんだ。シエルが使う武器の中には中剣や大剣はなんだろ?」
「...ない」
「だが双剣に短剣を与えられているなら、大剣も与えられる可能性もあるか。今は使うことがないかもしれないが...」
「それでも構わない!俺にサーシャの力を教えてくれ!」
シエルはアレクサンドルの手を握り懇願した。
話し方や扱う武器から女性として見られることがなかったアレクサンドルはシエルの行動にドキッとしてしまう。
「あぁ...わかったからこの手を離してもらっていいか?」
「えっ?あぁ...すまない」
「じゃ続きをしようか!」
シエルとアレクサンドルは再び剣を交えながら剣術を学んでいた。
——————
一方でアレスはBクラスの少女から誘いを受けていた。
「アナタ、アレスアルね?」
「へぇ?誰?」
アレスの話しかけてきたのは、同じくらいの年齢の女の子だ。黒髪に頭の両サイドにはお団子を作り白い布で覆っている。身長は140㎝くらいしかなくかなり低い。
「私はフー・リンアル!よろしくアル」
「僕はアレス。僕に何かあるの?」
「私と一緒に組み手をして欲しいアル。アレスは武器を使わないアル。私と同じアル」
このフー・リンという少女は、試験で加護の力を使わずして通った変わった人物だ。
「といってもアレスには加護を使って欲しいアル」
「使って欲しいって...許可は取ってるの?」
「許可は得てるアル。アレスに使って欲しいのは試験で見せた力アル。あれを使って私と戦うアル」
「変化速度1stを使って!?あれは加護の力の中でも特別な力だよ。それに見えないよ」
「私にはあの攻撃を防ぐ力があるアル。いいから使って私と戦うアル」
リンは自信のある顔してアレスに手招きしながら挑発した。
アレスはその挑発に少しばかり怒りを感じた。あの速さについてこれる人間がいるはずないと。
「いいよ!ならやってあげるよ。後悔しても遅いからね!」
「先に言っとくアル。攻撃を見切られても落ち込む必要はないアル」
「なら僕からも1つ言っておくよ。舐めてると痛い目みるよ」
アレスとリンの模擬戦が始まると周りの生徒も見学を始めた。
シエルもアレクサンドルも手を休めて見学に来ていた。
「いくよ!変化速度1st!」
アレスは霊力を使ってリンに攻撃を仕掛ける。といってもその速さは目に見えないので、見学している生徒たちはアレスがどこに行ったのかはわからない。
本当にリンにはアレスの姿が目で追えているのだろうか?
シエルがリンに蹴りを入れようとしたところで...アレスの視界が青空に変わったと思えば地面に身体をつけて倒れていた。
ドサッ——。
アレスの視界はリンを捉えていたはずが青空に変わった...かと思えば地面に身体をつけて倒れていた。
「あれ?どうなってるの」
「いい速さアル。でも速さが全てじゃないアルよ」
見学していたシエルにも何が怒ったのかわからなかった。
アレスは悔しいのかリンにもう1度手合わせを願った。リンは何も言わずに再びアレスを挑発するように手招きをする。
だが何度やってもアレスは地面に身体をつけて倒れる。
「どうして?まさか見えてるの?」
「見えてないアルよ」
「じゃあ、どうやって?」
「それは言えないアル。そう簡単に手の内は見せれないアルよ。ただいい修行になったアル。これ以上は続ける必要はないアル」
「待って!このまま引き下がるわけにはいかないよ」
「と言われても私は満足したアル。その力は確かに強いアル。そうそう負けることはないアル。自信を持つアルよ」
アレスは相当ショックを受けたのか、その場から動くことができなかった。アレスの姿を見てシエルが駆けつける。
「おい、アレス大丈夫か?」
「...」
「それにしても、あの子は何なんだ?私もアレスの姿は見えないのに...」
「わからない...」
シエルとアレクサンドルはリンの後ろ姿を見つめながら唾を飲み込んだ。
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ここはブリノフ学院の学生が住む学寮。
135室にはシエルとアレスが住んでいる。
「なぁ?アレス、元気出せよ?」
「...」
「敵わない相手がいるっといいことじゃないか!強さを追い求めるってことは自分より強い相手を越えることだろ?負けることも知らないと強さは身に付かないぜ?いろんな強さは確かにあるけど、お前の力は1つだけか?ヴァンも使いこなせるようになるまで、時間がかかるって言ってただろ。俺たちはここで強くなるために来たんだ。今は弱くていい。でも卒業するときには、強くなっていようぜ」
アレスはシエルの激励を黙って聞いていた。
今は弱くていい。
だがずっと弱いままでいるわけにはいかない。
必ずリンより強くなることを目標に眠りについた。
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