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精霊の加護 〜Blessing of spirits〜  作者: 荒巻一
第2章 ソシロア編〜ブリノフ学院生活〜
48/71

第38話 ブリノフ学院の加護〜入学式編〜

前回のあらすじ


 レイとソフィアの試験も滞りなく終わった。

 5人はマムルーク家に1度戻り、明日に控える入学式の準備をしていた。


※※※※※※


 5人は食事を摂りながら、それぞれの試験であったことの話しをしていた。

 シエルとアレスは桁違いの強さを見せたアレクサンドルとイヴァンの話しをした。アレクサンドルとイヴァンのことはレイやソフィアも知っていた。


「アレクサンドル様も今期に入学するのですね。知りませんでしたわ」


「そいつの加護の威力が半端なくてな...あれは絶対霊力だぜ」


「それは興味深いですね」


 アグライアもアレクサンドルの話しには興味を示したが、レイがそれを否定した。


「アレクサンドル様はシエル様たちがお探しになられてる人物ではありませんわ。アレクサンドル様のお力は正真正銘、自分能力ですわ。霊力などはお使いになられておりませんわ」


「霊力を使ってないのに、あんな力出せるの?」


「確かに霊力は特別な力ではありますが、魔力量と魔力コントロールさえ優れていれば、霊力と同等の威力を出すことはできます。それを可能にしているということは、天才なのでしょう」


「そう言えばもう1人いた身体の大きい男の人もいたけど、レイ姉は知ってるの?」


「イヴァン様のことでしょうか?」


「そんな名前だったな。何にもしてなかったけどな」


「イヴァン様は2つの加護をお使いになられますわ」


 試験でこそ力を見せはしなかったが、複数の加護を扱うユニークに呼ばれる人物のようだ。イヴァンは大地の加護と水の加護を使う。精霊聖騎士団は水の加護か大地の加護どちらかを使え、ユニークでなければならない。前衛もでき回復できる力がないと就くことができない所謂エリートが集る騎士団である。


「ぜんぜんそんな風には見えなかったぜ?」


「争いごとを好むようなお方ではありませんので、それに普段からとても優しい方ですわ」


「のんびりしてる方なの」


「ふーん、優秀なんだな」


「実はソフィアもユニークなのですわ」


「2つ使えるのか?」


「いえ、私は4つですの」


「へっ?4つって...嘘!?」


「まさか4大精霊に愛された存在がいるとは!?私のも驚きです」


 アグライアも4大精霊の力を使う人間を見るのは初めてのようだ。


「ソフィアは幼少の頃から中級クラスの魔法は使え、私より優れた能力を持っておりましたわ。ですが魔法の威力がそれ以上向上することはありませんでしたわ」


「魔力量が少ないってことなのね...」


「私はこれでいいですの。精霊様から愛されてることが嬉しいですの」


「あっ、そういえばカールに会ったわよ」


 カールの名前を聞いた途端、レオが反応する。


「あの変態王子か。試験は通ってないだろうな?」


「さぁ?でも色々教えてくれたし悪い人じゃなさそうだったけど?」


「騙されてるんだよ。そもそもレイに好意見せるやつはろくな奴らじゃね」


「もうお兄様ったら!そんなこと言ってはいけませんわ。カール様も悪気があるわけじゃありませんわ」


「変態王子が来ないことを願ってるんだけどな」


「まぁ、レオも変わらないけどな」 


「なんだと!?」


 ガタッ——。

 レオは勢いよく椅子から立ち上がるとシエルの胸ぐらを掴む。

 だが掴む姿はレイだ。怒っているのはレイではないが、レイが怒っているように見える。


「申し訳ありませんわ。お兄様もお止めになってください」


 レイはシエルの掴んだ服をパッと放した。


「ったく...レイの姿でそういうことするなよな!」


「アンタが余計なこと言うからでしょ!?ごめんね、レイ」


「いえ、大丈夫ですわ」


「にしても、明日からは1年間寮での生活かー」


「僕、楽しみ!」


「戦闘訓練とかは楽しみだけど座学が面倒だわ」


「しっかり聞かないとダメよ」


「明日も早いですから、本日は就寝を致しましょうか」


「そうね。アレスは楽しみかもしれないけど早く寝るのよ」


——————


ブリノフ学院・入学式当日


 シエルたちは第73期生として迎えられた。

 勇将学科は120名、魔導士専攻は260名、治癒士専攻は320名、魔法研究専攻は20名、魔導技師専攻は1名。

 計421名の入学となった。今期生で治癒士が多いのはレイの効果によるものだ。

 ちなみに第71期生(3年生)は458名。第72期生(2年生)は413名である。

 ブリノフ学院生は総数1292名となる。

 壇上に上がって話をしてくれるのは、ルミエールの面接をおこなったアルノリトだ。


「第73期生の諸君!入学おめでとう。学長のアルノリトだ!君たちは今日から学生として日々研鑽を積み、魔物たちから世界を守ってもらいたい。だが人生は1度きりだ。甘酸っぱい青春も学生の頃でしか味わえない。泥臭い訓練だけでなく甘い青春も目一杯して欲しい!」


 そう言って一礼して壇上から降りた。


「あの学長大丈夫か?俺たちに遊べって言ってるようなもんじゃねか」


「ずっと訓練ばかりだと疲れるちゃうし、息抜きとしてはいいんじゃない?」


「それでいいのかよ?俺たちがいるのは1年だけだぞ。3倍のスピードで学ばないと意味ねぇじゃん」


 シエルは不安を抱きながらも入学式は終わり、各クラスへと移動した。

 1年生は2階に教室がある。


——————

【勇将学科Aクラス】

 ここはシエルとアレスが配属されたクラスだ。

 勇将学科は全部でAクラス〜Fクラスの6クラスあり、1クラス20人となっている。Aクラスにはアレクサンドルとイヴァンもいる。クラス分けには特に意味はない。

 席について待っているとアレクサンドルが話しかけてくる。


「やぁ、キミがシエルだね。そして小さい彼がアレス。私はアレクサンドル・ノヴァコフだ。宜しく!」


「話しは聞いてるよ。入学試験は見事な結果だったな。俺の方こそ宜しく頼む」


 シエルとアレスはアレクサンドルの差し出された手をギュッと握り締めた。


「イヴァンも挨拶してくれ」


 シエルの前に座っていたイヴァンは後ろを振り返って自己紹介してくれた。


「あー俺はイヴァン・ネストル。以後宜しく頼むわ」


「俺の方こそ宜しく。ユニークなんだってな?」


「まぁな...けどハードルを上げる必要はないわ。大した力じゃねぇからよ」


「イヴェンは謙遜してるがかなりのやり手だ。それよりシエルとアレスに聞きたいんだが、君たちの力は何だ?」


 アレクサンドルはシエルたちの力について興味を示した。

 加護者であることは説明していいとしても、レイのことは触れない方がいいだろう。

 シエルは自分たちがここに来たことも含めて説明を始めた。アレクサンドルやイヴァンにとって信じ難い話しではあったが、特別な力を使っている以上は認めざる得なかった。


「信じらないが...あの力を見れば信じるしかないな」


「ユニークとは別の力だ。超人類(ネオ)なんか聞いたことない。精霊の代行者ならば、かなりの力を持ってても不思議じゃない」

「これは7月にある学年別対抗戦が楽しみだな」


「なにそれ?」


「1年の中での集大成を見せる技能大会さ。いつも3年生が優勝するんだけどな。今年はどんでん返しが出来そうだな。噂じゃ魔導士の中にもかなりの奴がいるんだろ?」


 ルミエールのことだ。ルミエールの噂は既に学校全体に広まっていた。シエルと同じ光の加護者であるにも関わらず、ルミエールだけ広まり方が異常であった。シエルは試験で光の加護を力を見せないものもあったが、アレクサンドルの陰に隠れてしまっていた。


「ルミのことはまた紹介するよ。といってもレイの方から紹介されると思うけどな」


「レイ様も入学してるようだな。レイ様とはどのような関係なんだ」


「たまたま助けたのがレイで、ここに来ることを言ったら一緒に行かせてくれって感じだよ」


「ほぉー信頼されてるんだな」


 話しをしているところに、Aクラスの教師がやってくる。


「おーい席に着け。ホームルームを始めるぞ。今日からこのクラス担任を務めるアルバートだ!宜しく頼む」


 Aクラスを担当するのは、40代の半ばのおっさん教師だ。アルバートはブリノフ学院に勤めてからは長い、敏腕教師だげあって知識は豊富だ。

 アルバートは授業内容について説明を始めた。

 どのクラスも基本は戦闘訓練や魔力コントロールの高める実技が多い。座学は精霊教の歴史や世界の実態などを学ぶことがある。またイベントごとが多いのがブリノフ学院魅力でもある。アルノリトが言っていた青春を楽しんでくれとはこのことだ。

 

【ブリノフ学院の主な行事】

 9月...入学式

 11月...研修旅行(バイカール島)

 12月...精霊降臨祭

 1月...冬休み

 2月...前期インターンシップ

 4月...花見

 5月...学院祭

 6月...後期インターンシップ

 7月...ブリノフ対抗戦、卒業式

 8月...夏休み


「行事の説明はその都度していく。明日からは早速であるが授業の方も初めていくからな。本日のホームルームは特にすることはない。自己紹介をして終わりにするつもりだ。では順番にしてもらうか」


 このクラスで注目されている人物はアレクサンドルとイヴァンの他にはいなさそうだ。平凡と言っては悪いが、気になるやつはいない。

 シエルが唯一気にしてる人物と言えば、試験の時に加護の力を使わずに敵を薙ぎ倒していたアレスとそう変わらない女の子だ。

 またの機会に探すのがいいだろうと考えていた。


 一方、魔導専攻の方は…

—————

【魔導専攻Cクラス】

 ここはルミエールとソフィアが配属されたクラス。

 魔導士クラスは全部で10クラスに分けられ、1クラス26人編成となっている。

 

「よかったわ!ソフィアちゃんと同じクラスで」


「はいですの!私も嬉しいですの」


 ルミエールとソフィアが2人仲良く話していると、あの声が聞こえてくる。

 自信満々の嫌味な喋り方のアイツだ。


「はーいレディ、まさか同じクラスになるとは思ってなかったよ」


「思ってなかったよ」


「カールさん...?」


「それにルイーダ様もいるの」


 ルミエールがカールを見つめる顔は嫌気がさしていた。

 それもそのはず、カールと話しをしていても通じることがないからだ。多分...いやきっとカールとは生涯通じ合うことはない。水と油の関係だ。


「しかし、華がないクラスだ...実に華がない」


「華がない!」


 カールにとってレイ以外の女性は女性として認識されていない。ルイーダも兄の前では、通じ会えそうにはない雰囲気が出ている。


「おー我が愛しのハニーと離れ離れなのも、神の悪戯なのだろうか?」


(いや、そもそもレイとは専攻が違うじゃないのよ)


「おっと!?先生が来たようだ」


「はいはい、皆さん。席について頂けますかー?」


 Cクラスに入って来たのは、若い女性教師だ。白髪に紫の瞳、そして独特の話し方に懐かしさを感じるルミエール。


「今年度から新任として勤務することになりましたー。名前をシャルルと言いますー」


 シャルルが名前を言った瞬間の仕草を見て、ルミエールはハッとマドレーヌの顔を思い出す。


「そういえば、マドレーヌさん...家族はソシロア領にいるって言ってたわね。お姉さんかしら...そうだとしたらよく似てるわ」


「どうかしましたの?」


「あっいや、何でもないわ。知り合いに似てる人がいてね。びっくりしただけ」


「えーでは、ホームルームを初めますねー。順番に自己紹介してもらいますー」

 

「私はルミエールです。今後とも宜しくお願いします」


 ルミエールが挨拶をすると拍手が巻き起こる。ルミエールが光の加護者である事は知られているため、クラスの皆も興奮しているようだ。


「よっ!英雄さん!これから宜しくな」


 色んな声援が飛ぶ中で、不気味にニヤリと笑う人物もいた。

 ルミエールに続いてソフィアが挨拶すると、数少ない男子共は涙を流しながら拍手を送る。


「俺…死んでもいいよ!最高だ!同じ空気を吸えるなんて」


「話しかけられないのが…寂しいけどな!うぁぁぁぁぁぁ」


 カールも続いて自己紹介を終わらせるが、ポジティブナルシストである性格は評価を得ることはない。寧ろクラスの女子からはキモがられている。

 ルイーダも悪意があるわけではないが、ソフィアに対して余計な一言が多い。勝つだのなんだのと…

 ソフィアはそんなことに対してもニコニコしながら聞いていた。

 次に挨拶をしたのは...


「俺はドミール・パレフ」


 このドミールという青年の父は魔導士団の1番隊長を務めている。彼も行く末は魔導士団に入団すると決めている。

 そして最後の挨拶をしたのが、ルミエールと同じく魔晶を割った人物だ。


「私はユリアです。魔力量だけが優れているだけで、入学出来たようなものです。迷惑かけると思いますが、宜しくお願いします」


 ユリアはルミエールの方を見て、()()()()()()()してか手を振る。ルミエールもそれに応えるように手を振った。


「楽しいクラスになりそうね!」


「はいですの」


 レイの治癒士専攻クラスはというと...


——————

【治癒士専攻Dクラス】

 ここはレイが配属されたクラス。

 治癒士専攻は1年生の中で1番多い。1クラス40人と他と比べて遥かに多い人数となっている。全クラスは8クラスとなっている。


「レイ様ー!」


 クラスはレイのことで盛り上がっている。


「まさかレイ様と同じになれるとは...感激いたしますわ」


「本日から宜しくお願い致しますわ」


「是非ー!」


 他クラスから睨みをかける者もいれば、ハンカチを噛み締めて涙する者もいる。

 そんな中、Dクラスにも担任が入ってくる。


「ほな、席についてもらおか」


 Dクラスの担任はジビアラ領出身の褐色肌の男性教師。


「今日から宜しく頼むわ。このクラスの担任を任せれた名前をアーキルちゅーねん。ほなら、順番に自己紹介でもしてもろてホームルールは終わりにするで!」


 このクラスでレイ以外で重要人物といえば、イヴァンの妹であるアンナだ。


「はじめして、私はアンナ。アンナ・ネストルです。ネストル家の長女でありイヴァンの妹です。本来なら兄と同じ勇将クラスに入らなければいけないのですが、私には水の加護しか使えないので...兄と違って劣る部分がありますが宜しくお願い致します。


「まぁ自分のこと過小評価する必要なないで。肝心なのはこれからや。皆もええか...人間ちゅーのは可能性を秘めとる生きもんってことを忘れんといて欲しい。明日から俺と一緒に頑張ろな!」


 アーキルはというよりジビアラ領の人間は皆こんな感じのようだ。


「ほな...これで今日は終わりや!解散しょーか」


 レイのクラスも本日の授業は終わった。

 明日からは本格的に授業が始まることとなった。

 5人は寮へと戻って明日からの授業に備えていた。


ご覧頂きありがとうございます。

評価やコメントなどして頂けると嬉しいです!

引き継ぎ『精霊の加護』を宜しくお願いします。

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