第27話 決戦の加護
前回のあらすじ
アレスの身体はめちゃくちゃになり動けない状態になってしまった。ジャンヌも顔の左側に大きな傷を残した。ヴァンはこれ以上の犠牲を出したくないという理由から、引き止めるが全ては自分の私情が招いた結果であった。
理由を知ったところで何も変わることはない。シエルたちは魔物を倒す準備を整えて、遂に決戦の幕が開ける。
※※※※※※
【アテン地区・パルテノ街】
ここは精霊教会・風の本部があると共にヴァンが鎮座するパーテノン神殿がある。
古い建物が多く歴史ある地区で精霊教徒の中では1つの憧れの地として有名である。
今のパーテノン神殿には魔物が鎮座しているせいか、辺りの空は終焉の様な雰囲気を出していた。
敵はパーテノン神殿にありと突撃したいが、ブルチョア地区から逃げ帰った魔物たちが行く手を阻んでいる。
「魔力を温存する必要はない!力の限りを出し切れ!」
マドレーヌから生命の水を幾らか手渡されていたため、体力も魔力も心配する必要はなかった。
ジャンヌに続くようにシエルとルミエールも魔物と交戦を始めた。次々に魔物を葬り、徐々にパーテノン神殿が見えてきた。
「姫様!後は我々にお任せくだされ!」
「すまない!後は頼んだ。シエル殿、ルミエール殿行くぞ!」
「おう!」
「人間が…人間がぎだー!」
パーテノン神殿の玉座から魔物がその姿を現した。魔物の姿は形を保てず肉片が常に滴るように落ち、生き物とは思えない姿を見てをしていた。
アグライアは魔物の見て察することができた。魔物は智獣でもあり、新成獣でもあった。そのドロドロになった身体は複数の生命遺伝子を組み込んだことにより、身体破壊が進んでしまったのであろう。
「このような魔物が既に存在しているとは…!?我々だけでなく魔物のレベルも上がっているということですか」
「ゲハハ...我々をごごまで追い詰めるどば」
「仲間たちの犠牲の上でここまで来た。コイツを倒して終わりにしよう!」
ジャンヌは槍を強く握りしめて魔物に向かって渾身の一振りをする。
「乱風槍撃!」
ジャンヌが投げた槍は周囲の空気は風の刃に変え、魔物の身体を貫いた。
ドロドロの肉片が飛び散る。
「やったか!?」
「ゲハハ…こんな貧弱な攻撃…効がない」
身体の中心を貫いたはずだがダメージがない。飛び散った肉片をかき集めるように元に戻ってゆく。
再生能力も兼ね備えている。
「自己再生だと!?」
「なら私の魔法を喰らいなさい!術式魔法1陣・光芒連打銃!」
ルミエールが放つ魔法もエピデミルを貫くがすぐ自己再生してしまう。攻撃も魔法を効き目がないのか?シエルは再生が追いつかない攻撃をするしかないと指示を送る。
「再生が間に合わないほどの速い攻撃するしかない!全員で行くぞ!ルミは後方から援護してくれ!ジャンヌさんは一緒に!」
「よしわかった!」
「精霊石よ、魔を討ち滅ぼすが為の力を我に貸せ!権限せよ双剣!」
シエルは精霊石に魔力を込めると石は双剣へと変化する。双剣を握り締めジャンヌと共に病魔エピデミルに突っ込む。
ジャンヌも槍を手にして魔力を込める。
シエルとジャンヌの素早い攻撃が繰り出される。自己再生が出来ないほどの速さで切り刻む。
が——切っても切っても肉片はすぐに集結し元に戻ってしまう。
「こいつは不死身なのか!?」
「効がん!効がん!効がーん!」
3人は力の差に後退りしてしまう。
「ゲハハ!絶望、意気阻喪、恐怖、不安。これこそ傲慢様が欲する感情!」
魔物の言うように3人の目の前にあった希望という光が消えて闇が心に覆いかさぶってくる。
この傲慢が欲する負の感情と集めようとしているのはどういうことなのだろうか?
そして傲慢の正体は何者なのか?
「さぁ絶望の渦に飲まれで死ね!傲慢様が復活ずるぞー!」
魔物はドロドロの身体から触手の伸ばし、3人を捕まえてシエルとジャンヌだけを絞め殺そうとした。
「あぁぁぁぁぁ!」
シエルとジャンヌは痛みの中で死への恐怖と感じていた。
死に直面すると必ず見えるものがある...走馬灯だ。脳裏に色んな人の顔が一気に駆け巡る。
一方でルミエールは2人がもがき苦しむ姿を見て次は自分の番という恐怖と2人を失うかもしれないという不安に駆られていた。
「クソッ!放しなさい!シエル!ジャンヌさん!」
魔物の腕の中でルミエ—ルは暴れながらシエルの名前を何度も呼びかける。
——が返事を返すことはなかった。
「シエル、返事をしてよ!どうして...私たちの力じゃ勝てないの!?」
その時ルミエールはある人物の顔を思い出した。頼りたくない存在ではあるがその力を頼るしか他なかった。
アグライアに悟られるわけにはいかない。
ルミエールは自分の心の中にいる嫉妬問いかける。
「頼りたくないけど...!必要が必要であるがために——。嫉妬、力を貸しなさい!」
だが嫉妬はルミエールの言葉に反応することはない。
「ふざけてるの!?どうしてこんなときに力を貸さない!あなたが欲してるのは私の身体じゃなかったの!?」
その声は震えていて焦りと悲しみが混じっていた。
ルミエールは涙を流しながら何度も何度も嫉妬に問いかけ続けた。
それでも嫉妬は反応をみせなかった。それには理由があった。支配しきれていない身体から表に出て来るためにはエネルギーが必要となる。それは悪魔にとっての活動エネルギーである7つの感情だ。しかも自身をコントロールできないほどの7つ感情。悲しみという感情は悪魔にとって必要なエネルギーにはならない。
【傲慢】【憤怒】【嫉妬】【強欲】【色欲】【暴食】【怠惰】の7つの感情をエネルギーとしている。
ルミエールが嫉妬【レヴィアタン】に問いかける間にシエルとジャンヌは虚ろな眼差しになってグッタリとした。
それを見たルミエールは智獣と戦ったときのような怒りを覚えた。
形相を変え怒り狂い発狂する。もう自律神経は正常ではない。
「殺す!殺す!殺す!殺すのよ!あぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ルミ!」
自我が保てなくなるルミエールに変わって嫉妬がようやく目を覚ます。
「私が求める感情はこれじゃなんだけどね。貴女を失うわけにもいかないから手を貸してあげる」
ルミエールの【憤怒】という感情を糧にレヴィアタンが表へ出て来る。身体からは闇のエネルギーが溢れ出ている。
「ま、また!?闇のエネルギーを持つ人格が」
「さて...あなたには悪いけれど、死んでもらうわ。彼に死んでもらうと困るの。私の復活のために必要な人材なの」
「お前ば何者だ?」
「私?同じ魔の存在よ。ただ次元が違う。あなたのような失敗作じゃないのよ」
「俺様が失敗作だど!?」
「そうよ、魔物は脆いもの。無駄話をしてる暇はないわね。彼が死んじゃう。仲間を殺すのは気が引けるけどこれも主の復活のためだから」
レヴィアタンはルミエールに溜まった感情エネルギーを元に魔力を解き放つ。病魔エピデミルの身体が粉々に飛び散るが、自己回復によりその肉体は元に戻る。
シエルとジャンヌは解放されたが息をしていない状態だった。
「生命力だけが取り柄なのを忘れていたわ」
「お前が同じ魔の存在だとじても、ごごまでの仕打ちば許ぜん!」
「わかったわ。今度を再生できないように無に還してあげる」
レヴィアタンは溜まっていた全ての感情エネルギーを使って魔法を放つ。それは嫉妬が固有能力である【嫉妬】であった。
黒く渦巻いた魔法が魔物を飲み込む。
「重力螺旋」
アグライアは1度は疑っていた重力魔法を2度も目の前で見ると信じざるを得なかった。
ルミエールの身体は魔神の手の者に侵されてしまっていると。
魔物は高密度の重力の中で押し潰されるように消えていなくなった。
「あーあ...せっかくに高エネルギーの感情だったのに、これじゃもうルミエールと変わらないといけないのね」
「待って下さい!アナタと魔神はどのような関係なのですか!?」
「精霊様ですか?その質問に答える必要は私にはないわ」
嫉妬はシエルとジャンヌの息を吹き返すために乱暴に心臓を叩いて起こそうとした。
「これで起きたわね」
ゴホゴホと咳き込みながらシエルとジャンヌは息を吹き返した。
「ではなぜ我々を助けるのですか?」
「それは必要が必要であるがためよ」
「必要?ルミをどうしようというのですか?」
「それも精霊様に答える必要はないわ」
「ふざけるつもりですか!?」
「ふざける?なら一つだけ教えてあげるわ。いくら頑張ってもこの子の身体は私の物になるわ。本人もそうはさせないと言ってたけど無理ね。人間の弱みを我々は知ってるのだから」
「我々?」
「これ以上は余計なことは話せないわね。エネルギー切れよ」
「逃げるのですか!?」
嫉妬はルミエールの心の奥底に戻った。ルミエールの意識はなく地面に倒れ込んだ。
この状況を陰から見ていた人物がいた。
謎の男はそういうとフッと姿を消した。
その後シエルとジャンヌは起き上がり倒れたルミエールが起き上がるのは待った。
シエルはアグライアから事情を聞いて魔神の力を使って倒したことを聞いた。しかしジャンヌには本当のことは言わなかった。
シエルは自分の非力さを味わいながら最後の戦いを終えた。
魔物が消えたことでアテン地区を中心に空が晴れた。
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改稿しておりますが引き続き『精霊の加護』を宜しくお願い致します。




