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精霊の加護 〜Blessing of spirits〜  作者: 荒巻一
第1章 イウロ編〜風の精霊を求めて〜
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第26話 決戦前夜の加護

前回のあらすじ


 智獣マラリアとの激闘を制したのはシエルたちだったのだが、あまりにもその代償は大きかった。

 多くの兵士が傷付き又、神の身許へと還った。


※※※※※※


〜ブルチョア地区・野営本部〜

 

 ルミエールと精霊団員は傷ついた仲間を連れて野営本部へと戻ってきた。シエル、アレス、ジャンヌは完全に意識を無くし、マドレーヌの下へ運ばれて治療を受けることになった。

 最初に意識を取り戻したのはシエルだった。


「あ...あれ...ここは…」


 意識を取り戻したシエルにルミエールは泣きながら抱きついた。


「良かったぁ…私...もうダメだと思った...シエルも起きないって思った...」


「ルミ...」


 シエルは何も言わずルミエールの頭をそっと撫でるように慰めた。

 ルミエールが落ち着いてから、シエルはどうなったのか詳しく聞いた。アレスとジャンヌのことを聞くと様子を見に雑に作られた野戦病院に向かった。

 ここは重傷者だけが病床に伏せていた。

 

「マドレーヌさん...どうですか?」


「アレスさんは全身の粉砕骨折に重度の筋断裂で動くことができませんー」


「それって治るんですか?」


「お力添えできないなくて申し訳ないのですが、私の力では治療はできませんー。命を繋ぐので限界ですー」


 マドレーヌもこれほど酷い重傷を治療したことはなくお手上げのようだ。ジャンヌの顔も左半分は包帯が巻き付けられていた。


「ジャンヌさんの顔も酷いことになってますねー。あんなに綺麗な顔だったのに...傷跡は生涯残ってしまいますねー」


 アレスとジャンヌの話しをしているとジャンヌが目を覚まし起き上がった。


「ん…ここは…そうか無事に終わったのか」


「ジャンヌさん起きてはダメですー」


「私たちの心配よりご自愛ください!」


「ハハッ。それもそうだな。しかし命あるだけ良かった。私は仲間を守ることが出来なかった。何人死んだ?何人の命を守れた?団長としての力不足だ」


 声のトーンがやや低い。

 責任を負っているのだろう。


「だが本当の戦いは終わっていない。ヤツを倒さない限りは終わることはない」


 ジャンヌがいうヤツとは?

 シエルとルミエールは引き続きマドレーヌに治療をお願いし野営病院をあとにし、祭壇がある場所へ向かった。そこではアグライアとヴァンが話しをしていた。


「ではその()()()()()()()という魔物が元凶であり、ヴァンの神殿に居座っているのですね」


「超そういうこと!でもみんなを超危険な目に遭わせられない!」


「そういうことか…ジャンヌさんの言っていたヤツは病魔エピデミルのことだな」


「シエル!?」


「シエルっち!?」


「まだ戦いは終わってないってジャンヌさんが言ってたわ。私たち行かないと」


「超無茶よ!ただでさえ超ボロボロなのに、魔物(病魔エピデミル)の強さは智獣マラリアを超えているの」


 ヴァンはシエルたちがパルテノ街にある()()()()()()殿()に行くのを止めようとした。魔物(病魔エピデミル)の強さを知っているからだ。智獣マラリアとの戦いで戦力も大幅にダウンし動ける人数も数人しかいない。


「ここまで来て無視なんかできるかよ!」


「でもでも本当に死んじゃうって!?」


 ヴァンはどうしても行かせたくないようだ。

 それもそのはず、この身体で生きて帰れる保証などあるとは言えない。それでもシエルは引き下がろうとしない。

 シエルと揉めている時にマドレーヌがジャンヌを手引きしながら連れてきた。


「シエル殿、ヴァン様と揉めているのだろ?」


「ジャンヌさん!そうなんだよ。このまま無視していても魔物が息を吹き返すだけだ。俺たちもボロボロだが今が好機なんだよ」


「ヴァン様、私はこの身を捧げるつもりで精霊騎士団に入隊しました。この命を替えてでも守るべきものがあるのです。ヴァン様やこの地に住む人々、そして団員たちの命です」


 話しができないもの、ジャンヌはヴァンに思いを伝えた。それを聞いてヴァンは嬉しい気持ちになったが人の命を無駄にしたくなかった。


「そういうことだ!」


「ヴァンちゃん、止めても無駄よ。シエルとジャンヌさんは行くわ。もちろんシエルが行くなら私も行く!」


「...でも今からダメ。身体を癒すことが先だからね」


「わかったわ!」


「しかし、ヴァンの力があれば魔物にやられるとは思いませんが…?」


 アグライアは精霊より力のある魔物が存在しているとは考えられなかったからだ。


「いや実は超油断したというか…」


 何やら理由があるようだが言いたくない雰囲気だった。それに察したのかアグライアはいつもと違う少し怖い口調で問いかけた。


「もしや貴女…守護を疎かにしていたのでは?私は前回の旅で貴女がウロウロしている事を知っているのです」


「えっ…いや…アハハ…そんな事超あるわけないじゃん!」


「ヴァン!」


「ヒィー!!」


 ヴァンはルミエールの背中に隠れるように避難した。


「どういうことだ?ヴァンが守護を疎かにしてたって?」


「ヴァンは大の男好きでしてね…」


 ヴァンは頻繁に神殿を抜け出して色男を探しにウロウロしていた。たまたま外出中に魔物(病魔エピデミル)が攻め入ってきたのだ。


「だって話せるのが老いぼれ爺だけって超嫌よー!もっと若い男のエキスが…エキスが欲しいのよ!」


「結局この事態を招いたのはヴァンってことかよ!」


 くだらない理由で何人も犠牲者が出てしまい、ヴァンの尻拭いをしているのは人間であった。

 誠残念ではあるが今はヴァンを咎めている場合ではない。


「ライアもそれぐらいにしてあげて。魔物(病魔エピデミル)を倒すことを考えないと」


「ルミちゃーん」


 ヴァンはルミエールに抱きつく。


「今後はこのようなことが無いことを祈ります。犠牲になった人々の輪廻転生を願うのですよ」


 パルテノ街に行くのはシエルとルミエール、ジャンヌ。そして数名の精霊団員たち。しかし、今パルテノ街に向かっても危険は増す。身体の治療も含めしばらく休む必要があった。

 マドレーヌの尽力があってジャンヌの回復は好調だが、アレスの怪我はいう通り回復することはなかった。この期間に魔物が攻めてくるかと思われたが、その心配はなかった。

 そして——3日ほど期間を置いて準備が整った。



※※※※※※



「敵は我らが居城パーテノン神殿にいる。敵は『病魔エピデミル』!この地を混乱に陥れた元凶を許しはできない。シエル殿、ルミエール殿、準備は出来てるいるか?」


「あぁ、アレスの仇はとってやるぜ!」


「力になれるかわかりませんが...頑張ります!」


「では出陣だー!」


 こうしてシエルたちは魔物が蔓延はびこるパルテノ街へと突撃し、魔物(病魔エピデミル)のいる居城・パーテノン神殿へと向かった。

 イウロ領地での最後の決戦の幕が落とされる。

ご覧頂き、誠にありがとうございます。

評価やコメントなどして頂けると嬉しいです。

改稿しておりますが引き続き『精霊の加護』を宜しくお願い致します。

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