36掘 : ススキノ地下魔宮
今日の2本目です。
「なら、もう俺がこの世界ですることはないというわけだ。
過去存在したことも抹消されているわけだし。魔族に対抗する
どころか逆に押し込んでいるわけだし」
こっちに送り込んだ武器だけは危険だから回収してから帰ろう。
「そうでもありませんよ。私たちの個人的なお願いがあります」
「それは勘弁してください」
「その件とは別件です。私たちがここにいる理由にもなるのです
が、全く攻略できないススキノ地下魔宮の攻略に私たちも巻き
込まれました。多くの兵士が生身で突入しましたが、独りたり
とも帰ってきてません。このまま行かされると私たちも死ぬ
羽目になります。幸せを掴むまで死ぬわけにはいきません。
というわけで、協力してください、クドウ」
「なんで今更お前たちが行かされるんだよ?
若い奴とか勇者とかいるだろ?」
「軍事が発達した今の世界には、優秀な兵、英雄はいてももはや
勇者はおりません。神殿が軍事を有しておりませんし、
勇者選定も行っていません」
「神殿の軍事がないって、ソネットは神殿騎士だったろ?」
「私は元神殿騎士の英雄ってことで、今は軍で大佐やってますよ?
今回の調査部隊の責任者やらされてます」
アネットもソネットも長寿なエルフさんである。その寿命は数千
年とか。250歳近くとも、見た目は未だに、初めて会った頃と
同じく17歳ぐらいの美少女のままではある。まあ、俺にとって
は、まだ数か月しか経っていないのだが。さすがに本人たちは成長
していなくとも、それなりのポストについているのだろう。250
歳にもなって、まだ現地で働かされる大佐でしかないのは、
さすがソネットクオリティ!みつごでバカは死ぬまでバカとは、
よく言ったものだ。
「私は、この地仙台の神殿で高司祭をまかされているのですが、
ソネットに巻き込まれました。とは言え、双子の姉妹ですから
ほっとくわけにもいきませんでしたし」
親兄弟に親族に迷惑なヤツがいると、たちが悪い。他人と違って
縁が切れないから逃げようがない。
「事情は分かったんで手を貸してもいいけど。
で、結局、魔族滅ぼすの?」
「そこまで、命張りたくはないのですが、魔王なりと話をする必要
はあります。政府上層部は北海道の土地を狙って調査部隊などと
偽って出兵させてますが、実際、北海道からこっちに攻めてこな
いってとこで和平が結べれば十分です。それ以上は、そもそも
侵略戦争になってしまい、かつて私たちがやられていたことと
変わりません。人族増え過ぎなんです!」
「こっちの世界でも人口過密問題かー。
やっぱ人間って世界にとってはガン細胞なのかなー」
その辺の深い話はおいといて、今やたった2人の知り合いで
ある。放置するのは忍びない。戦闘は軍隊にまかせて、それを導く
手段を考えよう。
「これが本当に最後になるだろうし。いまや、たった2人の友人
だ。戦闘はするつもりはないが、手伝うよ。
まずは、そのススキノ地下魔宮の攻略からだな」
まずは、広域探査で魔宮の構造から把握しよう。
ススキノ地下魔宮。それは、北海道札幌のススキノの地下に
広がる広大な迷宮だった。それは、地上付近から下に向けて
放射状に広がる超大型ピラミッド。地下にあるんだから、
逆ピラミッドでは、ってか?いや迷宮なんだからゲームと同じ
ように下に降りる階段は基本的に1層に1つ。地下1階が最も広い
と、2階に降りる階段が見つかるのはいつの日かという話になって
くる。それに下層が狭いとお約束の大型モンスターとかどうすんの
って話になる。
階層は全部で100階層。最深部まで地表から約2000
メートル。ダイヤとか掘れねえかなここ。最大部で東西、南北で
それぞれ約3000メートルの広さである。まあ、少数精鋭とかで
送り込まれても、別の意味で死ぬだろうこれ。なんとか大人数を
機動兵器込みで無事に最下層まで送り込む必要がある。まともな
方法では不可能だ。
「俺のやり方でやっていいか?無事に最下層まで無傷で送り届けて
やるよ」
「まあ、なにをするかは予想がつきますが、お願いします」
「ソネットたちの部隊は、地上にでてきた魔族の相手をしてくれ。
魔宮に入る必要はない。機動兵器が使えるから問題ないよな」
「楽勝ですね」
「じゃあ、準備出来次第、作戦開始だ」
ここは、ススキノ地下魔宮前。
集うは機動兵器エルドゥワンゲリオン300機と3000人余り
の軍人さん。壮観でである。
「そろそろ始めるか」
無限収納から取り出したるは鉄ゴーレム君中30万体。
周囲1km平米をびっしり埋め尽くす。
「いつの間にこんなに増えたんですか?」
アネットはひくつき、ソネットは喜び駆け回る。
「聖都攻略のときに、東北を掘りまくったときにちょっとな」
「どうりで、資源が少ないと思ってましたよ」
「これが終わったら、手持ちの資源はお前たちにやるよ」
「それは遺産わけですか?でしたら子孫のほうもいただかないと」
「全ゴーレム君、採掘開始ー!」
ゴーレム君たちは、散開、手分けして露天掘りを開始する。
再び、巨大な露天掘りを行おうということだ。地下2000
メートルの迷宮なぞ相手にする必要はない。こちらの流儀に合わせ
てもらおう。ゲーム盤ごとひっくり返してやる。
すぐに第1層が露出した。弱そうな魔物もいれば、トラップも
設置されている。だがそんなものは無視して、ゴーレム君たちは、
魔宮ごと地下を、札幌の平野を掘りまくる。魔物たちは巻き込まれ
て殺されるし、トラップは破壊されていく。
2層目、3層目と順調に露出していく。なんせ戦闘も、罠解除
も、下層への階段探査もないのだ。まあ、魔宮ごと掘りつくす作業
のほうが大変なはずなんだが、30万のどかちんきっどの前には、
無きに等しい。
10層目に到達するとさすがに、ゴーレム君の作業に巻き込まれ
て死んでくれないヤツが現れた。階層ボス役の魔族である。
この状況で逃げずにいるのは、立派なのか脳筋なのか。
「第一小隊構え!撃て!」
ソネット大佐の号令で、エルドゥワンゲリオンの一小隊が、魔族に
向けて大型対物ライフルを向ける。このままでは、魔族は当然
ミンチになってしまう。
「待てーーーい!交渉するのに殺すなちゅうに!」
とは言え、下級魔族と交渉するつもりはない。
「ゴーレム君、捕獲!」群がるゴーレムが下級魔族を
おしくらまんじゅうの要領で確保し、鉄格子へと形を変える。
俺の濃厚でこってりした魔力を帯びた鉄格子は、中級だろうが
上級だろうが、下っ端ごときは黙らせる。
「はい、次いってみよう!」
これ以外の俺の仕事は今のところ、集めた土砂と湧き出した水の
回収だけだ。暇なんで、こっちの世界で回収したケニーたちから
もらった装備や誘拐テロリストたちから奪った装備でメンテナンス
の実習である。せっかく覚えた技能である。もったいないから身に
着けておこう。
ソネット達の部隊も階層が進んでくると暇ではなくなってきた。
巻き込まれても死なない魔物が出てきたからだ。下層に行くほど
迷宮が広くなるとはいえ、そもそも最下層の広さにあわせての
広大な露天掘りを行うための30万体のゴーレムである。迷宮が
広くなっていこうが、全体としては、寧ろ採掘面積は小さくなって
いく。下層への進行速度は落ちることはない。ソネットの部隊の
魔物処理の時間が徐々にのびていくのかというと、さすが300
機の機動兵器を用意してきただけはある。遠距離からライフルで
狙い撃ちしているので処理はあっという間だ。そしてすでに地下
52階層。かかった時間は約3時間。カップラーメンをつくる時間
で1階層を攻略できている。部隊は副隊長さんにまかせてお昼に
しよう。ゴーレムはどうせ自動で動いてくれている。
「食事をしながらきいてくれ。そろそろ中層域を超え、下層域に
突入する。階層面積は1キロ平米を超え、階層の高さも20
メートルほどになってきている。大型魔物が大量にでてくるぞ。
採掘工事にまきまれて死ぬようなサイズじゃないから、
一部の鉄ゴーレム君を特大サイズに集約し、機動兵器正面に
追い込むから、ソネットは部隊をまとめて、これを各個撃破
してくれ。アネットは、次にでてくる階層ボスあたりから先に
話合いを呼びかけるから、その心算でいてくれ」
食事している間にも攻略は進み、今や59階層。大型魔物も多数
見受けられる。デッカい4足歩行の大トカゲに、30メートルは
あろうかという大蛇。2足歩行の頭のでかい大蜥蜴もいる。まるで
ジュラシックパークだ。でも、恐竜はカラフルな羽毛が生えていた
と聞いたことがあるし、こいつらは、デッカい爬虫類にすぎないの
だろう。中には小型ではあるが、強力な能力をもる魔物もいたよう
だが、体長20メートルを超える鉄ゴーレム君特大に踏みつけられて
昇天していっているようだ。さすがに100体も特大サイズを放り
込むと床が抜けるような気がしていたのだが、どうゆう使用なのか
抜けずにもっている。
大型魔物もそばで見れば怖いだろうが、魔宮フロアからは出ようと
はしない。もっとも殲滅するまで、外周部の壁は壊さないし、
ゴーレムでぐるりと取り囲んでいる。動物園で猛獣を檻の外から眺め
ているのと変わらない。違うところは、ハンティングショーが併設
されていることぐらいだ。特大ゴーレムで動きを止めて、遠くから
エルドゥワンゲリオンが小隊単位で斉射して止めをさしていく。ただ
のルーチンワークでしかない。殲滅後は採掘再開。さすがに3分でと
は行かないが、アニメ1本23分も見ていれば終わる。
次はいよいよ中ボスフロアの60階。そろそろボスも上級魔族が
出てきそうだ。抵抗が強くなる分、思い余ってボスを殺さないように
慎重に行こう。
もう1本遅くに上げます。




