37掘 : 痴将バイセップス
広域探査で下への階段を探し出し、その階段がある部屋を守るのが
ボスである。まずは、このボス部屋以外を攻略する。この階も上と
同じく大型爬虫類のフロア。この魔宮、10層毎に傾向は同じなので
ある。世界が狭いので、魔物の種類もさっぱりなのだろう。
さて、ボス部屋以外の破壊は完了した。今は、ボス部屋が田舎の
体育館のようにぽつんと立っている。外周と屋根?の上にびっしりと
ゴーレムを配置し、合図とともに一気に破壊させ、魔族に向けて突進
させる。必殺押しくら饅頭ホールドだ。
「まずは、お名前からお願いします」
「俺は、しょせん四天王最弱、ほんの小手調べよ」
スパン!!「オゥゥ!イェー!」ソネット、いいスナップだな。
「ええー、北海道釧路出身、マゾ苦四天王のひとり、
痴のバイセップス224歳です。趣味はボディビルです」
「バイセップスさん、我々の目的は必ずしも魔族の殲滅では
ありません。できれば、話し合いで解決したいと考えてます。
ぜひとも魔王陛下に話し合いの席についていただけるように
伝えていただけないでしょうか?ちなみに、人族の神を騙っていた
蛇神は僕が倒しましたんで、実力行使はなさらないほうがいい
ですよ?」
さすが痴将だけあって、蛇神のことは知っていたようだ。
都合がよい。実にご都合がよい。魔王に伝えに行くなら解放して
やる。
「我はマゾ苦四天王で痴を司るもの。あのような軍隊での力での敗北
では納得いかん。一対一で我を倒してみせよ」
「あのゴーレムたちは全部、俺一人の能力なんですが?」
「なっ!だっ、だめだ!男なら自らの肉体をもって示してみせよ!
裸相撲勝負でこい!」
「ソネット、お前いけよ!この部隊の責任者なんだろ!」
「いやですよ!勝てるわけないじゃないですか!」
「この先ずっと、コイツらと付き合って逝くのはお前らなんだから
いなくなる俺じゃダメだろ?」
「い、いや、おなごなぞとは戦えん!ワシはお前がこの...いや、
強そうなので戦いたいのだ!」
さすが痴将バイセップス。どうもホモくさい。ホモと裸相撲なんて
想像を絶する苦行だ。抱きしめられる前に勝負をつけねば!
簡単な土俵を造って、痴将との勝負に臨む。裸相撲を要求されたん
で、上は全部ひん剥かれた。ズボンは許して得た。これ以上を要求
するなら、地球に帰るか、この世界を滅ぼすかどちらかを選べと
言ったら渋々納得しやがった。当の痴将は、パンツ一枚。ほっとくと
パンツすら脱ごうとしやがった。裸相撲と言い張るな!
試合前の準備体操。バイセップスは過剰なまでの柔軟体操をして
いる。この時点で、息は既に荒く、顔は赤く高揚し、鍛え上げられた
鋼の筋肉は、圧縮したバネのように盛り上がっている。オイルも
塗っていないのに、ぬらぬらと黒光りしているのは汗なのかどうかも
怪しい。
こちらは、軽めの準備体操をした後は、自然体にて精神統一する。
直接触れるのは、非常に躊躇われる。フルプレートが欲しいところ
だ。代わりに魔力を高濃度に圧縮し、身体を覆う。これであの汗が
猛毒だろうと王水だろうと耐えられるはず。
「発気よーーーい!」勝負は一瞬。それ以上は、触れていたくない!
「残った!」
予想通り、バイセップスの死の法要が襲いかかってくる。
触りたくねー!足を払うか、モロだしを狙うか。でも、それだと再戦
を要求されそうだ。力で勝たねばなるまい。
「爆裂発勁(魔力版)!!」
カウンターで貫くように突き出した右掌に圧縮させた魔力が
バイセップスの鋼の腹筋を叩き割るが如くに爆発する。
本家発勁と違って体の中を衝撃がはしるのではなく、外からの爆発で
バイセップスは土俵の外に吹き飛んで大地に深々と刺さる。
「決まり技、押ーしー出しーーー!押ーしー出しーーー!」
悦にハマっているソネットを横目に、アネットに声をかけられた。
「使者に出すのに再起不能にしていいんですか?」
よくはないが、この場合は不可効力であろう。
「起きるまで掘り進めようか!」
バイセップスはパンツ一丁だが、誰ひとり服を着せる勇気はないので
そのまま鉄格子に放り込む。ついでに服一式も放り込む。見苦しい
ので毛布をかけて隠しておく。
60階から下は、獣タイプの大型魔獣のフロアが続く。
懐かしい岩熊やパンツパンサーの他、日本的には牛頭と馬頭、西洋風
ならミノタウロスとスタリオン?ってとこだろうか?マンモスに
モスマンにポンデライオン、結構美味しそうである。
69階に到達し、前回同様準備を整える。バイセップスはまだ
起きてこない。寝坊助さんである。誰も起こしたくないようなのは
気のせいではないだろう。
「確保!」
ゴーレムたちが壁を砕き、中ボス魔族に群がる。
しかし、動きの遅いゴーレムの間隙をついて白と黒の影が躍り出し、
遠間より閃光の一撃を繰り出した。強烈な弓による一撃である。
背中に仕込んだ新しいバットを取り出して打ち返す。今度のバット
は短く軽量。内角打ちトスバッティング用のトレーニングバットで
ある。片手でも高速で振りぬくことができる特殊装備。こちらも
閃光の一撃で迎撃する。
「バイセップスを倒したのは貴様か!」
肩から先の黒い両腕、まるでニーハイを履いているような同じく
黒い両足に膝上までの黒いロングブーツ。透けるような美しい白い
素肌に黒い三角ビキニ姿。胸には白いスイカが二つ。細い首には風に
たなびく黒いゲッターマフラー。ちょっとぽっちゃり(男基準)目の
お顔にセミロングなプラチナブロンド。頭の上には牝牛のような2本
の短いツノ。武器まで白と黒に色分けされた強弓である。
ラムちゃん?ホライゾン?いやいや、これは乳牛でしょう!
魔族なのに獣人?
「我が名は、マゾ苦四天王がひとり、モウ将ホルスタインなり!!」
ほらやっぱり乳牛だ!




