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今回読んだ作品は、「奪われた人生をもう一度やり直せるなら。」です。

 奪われた人生をもう一度やり直せるなら。』


 本作が“やり直し”や“復讐”という題材を扱いながら、その根底にあるのが単なる逆転劇ではなく、奪われ続けた人間の痛みそのものになっているところです。


 家族に搾取され、妹の策略で「自分の子ではない赤ん坊」を押し付けられ、未婚の母として追い出される。さらに、ようやく支えとして愛してきた子どもにまで拒絶され、最後は命まで奪われる。あらすじの時点でかなり苛烈ですが、その分、主人公・音羽の「今度は、全部奪い返す」という決意に強い切実さが宿っています。


 本作の良さは、この切実さがきちんと本文の温度に落ちていることだと思います。


 第17話「やり直しの朝」で、音羽が“息ができる”ことにまず震える場面は印象的でした。劇的な奇跡として過去へ戻るのではなく、苦しみの末にようやく呼吸できることそのものが救いとして描かれる。この出だしによって、読者は復讐の爽快感より先に、この人はどれほど追い詰められていたのかを身体感覚として受け取れます。だからこそ、その後のやり直しが軽くならない。ここは非常に良かったです。


 また、単に「悪い相手を懲らしめる話」には留まっていません。

 音羽は前世の記憶をもとに出会いを仕組み、少しずつ未来を書き換えていきますが、その過程にあるのは万能感ではなく、むしろ傷ついた人間の慎重さと執念です。第19話の、前世で記憶に残っていた男と再会するために「引っかかり」を計算して作る場面などは、その象徴だと感じました。ただ運命に救われるのではなく、自分の手でわずかな糸口を作りにいく。この能動性が、主人公を受け身の被害者で終わらせていないのが良いですね。


 恋愛の入り方も、個人的には好印象でした。

 復讐劇の熱量が強い一方で、神楽陸との関係にはちゃんと別の温度があり、物語が単調にならない。第33話で、音羽が完全には拒絶できず彼を部屋に通してしまう場面には、信じたい気持ちと傷の深さが同時に滲んでいて、単なる甘さではない揺らぎがありました。

 こうした感情の揺れがあることで、復讐だけではない“やり直し”の意味が生まれているように思います。


 さらに良いのは、敵側の悪意がただ記号的ではなく、現代的な嫌らしさを伴っているところです。

 妹が人気インフルエンサーであり、表の顔と裏の顔を使い分けて主人公を追い詰めるという設定は、現代ものとしてかなり相性がいいですし、会社や外部調査、弁護士を巻き込んだ対立に発展していく流れも、物語に社会的な現実味を与えています。


 第40話や第43話で見える“実体のない噂が先に広がる感覚”や、“悲劇のヒロイン”を演じる側の冷たさは、かなり嫌なリアリティがあって、読んでいてしっかり腹が立ちました。そこまで相手に苛立てるのは、作品として成功している証拠だと思います。 


 個人的には、この作品は復讐ものの形を借りながら、実際には「奪われた人が、自分の人生の主導権を取り戻していく話」として読むのがいちばんしっくりきました。


 奪われたものを取り返すだけなら、もっと派手にも書けるはずです。けれど本作は、その前に“奪われ続けた人間が、どうやってもう一度選び、信じ、立ち上がるのか”をちゃんと描こうとしている。その姿勢があるから、復讐心の強さにも嫌悪感より納得が勝ちます。


 痛みの積み重ねがあるぶん、読後に残るものがありました。


 続きを楽しみにしております。

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