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【書籍化&コミカライズ】双子の妹に殺された姉、二度目の人生は初恋のイケおじ王弟にフルベットします!  作者: 黒猫ている
5章:激動の時代

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【コミックス1巻発売記念SS】幕間:王弟は卒業を祝う

本日、コミックス1巻の発売日です!

https://comic-growl.com/store_items/18790

どのページも、どのキャラも、みんな素敵に生き生きと描かれています。

是非お手にとってみてください。


おまけSS、今回は回帰前の卒業式典の様子をお届けします。

ディアナが一歩踏み出さずにいたことで、どのように違っていたか。

小編ですが、お楽しみいただければ幸いです。

豪華なシャンデリアの下、煌びやかな人々が舞い踊る。

華やかな卒業式典の会場、その片隅に王弟アランの姿はあった。


王族とはいえ、日陰の身。

このような公式の席に顔を出すことは、滅多にない。

ホール中央では、甥である王太子ローレンスが笑顔で談笑している。

対照的な、叔父と甥の姿。

その光景が、二人の立場を如実に表していた。


「まったく、人が多くて敵わん」


友人であるガザード公爵ウェズリーが、小さくぼやく。


「そう言うな、主役の父親だろうに」

「実の父親である私でさえ、近付くのは骨が折れそうだ」


ウェズリーが言うように、ガザード家の双子は人々の視線の中心に居た。

王太子と並んで、ひときわ目を引く姿。

美しさだけではない。

姉のディアナは、今までローレンスが保持していた首席の記録を塗り替えたとさえ言われている。


「誇らしいことじゃないか」

「それどころか、気苦労が絶えないよ」


ウェズリーが溺愛する双子は、独身の貴族男性にとっては最高の縁談相手でもある。

特に姉のディアナは、ガザード公爵家を継ぐことが決められた身。

ディアナの夫となる者は、すなわちガザード公爵家の婿となるのだ。

彼女に何か一言でも声を掛けようと、男達が集まるのは、当然と言えよう。


いや、姉のディアナだけではない。

妹のコーデリアもまた、持ち前の愛らしさで男達に人気が高い。

男達は皆、二人に近付く機会を窺っているが、人の波に遮られて思うように近寄れずにいた。


かくいうアランも双子の卒業を祝いに来たのだが、この分では直接声を掛けることは、難しそうだ。


遠くに、美しいディアナの横顔がある。

整った目鼻立ちと、毅然とした眼差し。

気品があり、美しく、意思の強さを感じさせる。


周囲の男達が見惚れるのも、無理はない。

美しい──と、彼女を幼い頃から知るアランでさえ思う。

その凜とした表情が、こちらに気付いた瞬間、不意に和らいだ。


「──アラン様!」


アランの視線に気付いたディアナが、年相応の屈託のない笑顔で、大きく手を振る。

幼い頃から知るアラン相手だからか、どこか幼さの残る、あどけない笑顔だ。


「ディアナ殿、卒業おめでとう」

「ありがとうございます!」


アランが手にした杯を掲げれば、最高級の笑顔が返ってきた。

その笑みに、ほう……と周囲から息が零れた。

やれやれ、お前達の為にあの笑顔を見せてくれた訳ではないというのに……と、アランは内心で独りごちた。


ディアナの姿は、すぐ人の波に飲み込まれていく。

距離を置いたままの、ほんの僅かな会話。

パーティーの主役である、今年度の卒業生。

しかもその首席とあっては、周囲がなかなか解放してくれそうにない。


「本当に、凄い人気だ」


呟くアランの声には、諦観が滲んでいた。


そうして始まった、ダンスの時間。

主役は若人達とばかりに、アランとウェズリーはテラスに移動していた。


ホールを、くるくると舞い踊る人々。

その中に、ディアナの姿もあった。

彼女と一緒にステップを踏むのは、年若い貴族令息──マイルズだ。


「彼は……確か、ディアナ殿の学友だったか?」

「ああ、オドノヒュー侯爵家の次男坊だ」


ディアナに声を掛けたくとも尻込みする男達が多い中で、マイルズは最も自然に彼女に接し、その隣に位置していた。

公爵家の長女と、侯爵家の次男──身分的にも、相応だ。

誰もが二人の姿を、羨望の眼差しで見つめている。


二人の姿を見下ろすうち、アランは胸の辺りに奇妙な靄が渦巻いている気がした。

別に体調が悪い訳でもない。

飲み過ぎてもいない。

ただ、不快感がこびり付いて離れないでいる。


「若造が、あんなにひっついてからにっ」


二人の姿を見下ろすウェズリーが、悪態を吐いた。

その言葉に、不思議と何度も頷いてしまう。

なるほど、この気持ちはディアナ殿を見守る親心のようなものだろうか──と、自らを納得させる。


幼かったディアナが、今ではホール中の視線を集めるほどに、美しく成長した。

この中から、彼女と添い遂げる者が現れるのだろうか。

それは、今彼女と共に踊っている相手──彼女の幼馴染みなのかもしれない。


ズキリと、胸が痛む。

この痛みが、ウェズリーが感じている不快感と同じものかどうかは──今のアランには、分からない。


「……酒が足りないな」


グラスを一気に傾けた後、アランは乾いた笑いを浮かべた。


「もっと持ってこよう。じきに北方の討伐に発つのだろう?」

「ああ」

「そうしたら、暫くは会えなくなるからな」


そうして、卒業生達を酒の肴に、二人は式典の夜を飲み明かした。


──それが、親友達の最後の杯となった。

という訳で、マイルズに嫉妬(無自覚)するアランが書きたかったのでした。

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