表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】双子の妹に殺された姉、二度目の人生は初恋のイケおじ王弟にフルベットします!  作者: 黒猫ている
4章:王権の影

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/69

68:王弟は命を受ける

白い大理石の上に敷かれた、毛足の長い絨毯。

深紅の布に膝を突き、頭を垂れる男が一人。


「お久しぶりですね、叔父上」


豪奢な椅子に腰掛けた王太子ローレンスは、膝を突く男――王弟アランを見下ろし、口元に静かな笑みを湛えていた。


本来なら、同じ王族であるアランがローレンスに膝を突く必要はない。

にもかかわらず対等の席は用意されず、臣下にするように跪かされる。

――自分の立場をわきまえろ。

そんな意図が、あまりにも露骨に透けて見えた。


「顔を上げてください」


ローレンスの言葉に、膝を突いたままで、アランが顔を上げる。

臣籍に下った時から、こうなることは覚悟していた──が、あまりに露骨な振る舞いに、もはや苦笑すら浮かばない。


(己の優位を見せつけなければ、気が済まないのだろうな……)


アランにとって、ローレンスは実の甥だ。

だが、二人の心の距離は、あまりに遠い。

現国王オスニエルにとって、アランは実弟でありながら、自分の命を狙った大罪人の一味だ。

王太子であるローレンスも、オスニエルの言葉を聞いて育ってきた。

父譲りの碧眼には、叔父に向けるものとは思えぬ侮蔑の色が滲んでいた。


「ガザードには何度か書状を出しているのだが、反応してくれたのが叔父上だけとは、何とも薄情なものだ」

「生憎と、立て込んでおりまして」


棘のある言葉を、さらりと(かわ)す。


「今は妻をいたわるのが一番と、大事をとっております」


各貴族家の動向を(つぶさ)に探っているローレンスならば、ディアナ懐妊の報せも既に聞いているであろう。

アランの答えに、ローレンスが僅かに目を細める。


「……まぁ、良い。叔父上に来ていただいたのは、他でもない」


ため息交じりに、ローレンスが言葉を紡ぐ。


「叔父上には兵を率いて、エルドレッド家に向かっていただきたい」

「エルドレッド公爵家に──?」


アランの眉間に、皺が寄る。

“兵を率いて”とは、ただ事ではない。

エルドレッド公爵家に謀反の疑いありとは聞いていたが、疑いだけで兵を動かすのか──それとも、確証があってのことなのか。


「そうするだけの根拠が?」

「公爵就任の祝いに紛れて、多額の金銭が動いている。その多くが、軍備に回されていると来た」


エルドレッド公爵家は、戦に備えている──それが王家の見方らしい。

兵を動かす判断としては、あまりに弱い。

それ以上の根拠を掴みながらも、アランには伏せていると考えるべきだろう。


「エルドレッド家に対抗出来るのは、同じ公爵家であるガザード家のみ。歴戦の叔父上ならば、造作もなかろう」


──いや、違う。

ローレンスは、試しているのだ。

ここ最近、エルドレッド家とガザード家の間に、何度か出入りがあった。

それ故に、両家がどこまで密接に関わっているのかを探っているのだ。


「承った」


ローレンスの真意を知りながら、アランは頷いた。

じっとアランを見据えていた碧眼が、ふと細まる。


「叔父上が引き受けてくれるなら、これほど心強いことはない」


仮にエルドレッド家が戦を仕掛けるつもりなら、ローレンスはガザード家の兵をぶつけ、両家の戦力を削る腹だろう。

もしガザード家が王家ではなくエルドレッド家側に付いた場合は──大義名分をもって、両家を取り潰しにかかるに違いない。


「エルドレッド家は、我が婚約者の家でもある。このような命を下すのは心苦しいが……」


ローレンスが立ち上がり、靴音もなく静かにアランの元へと歩み寄ってくる。

叔父の肩に手を置いて、その耳元で、小さく囁いた。


「全ては、国家の安寧の為──よろしくお願いしますよ、叔父上」


王子然とした口元は、微かに歪んでいた。




王太子ローレンスの命を受け、アランはガザード公爵家の騎士を率いて、エルドレッド公爵邸に向かった。

街道を進む騎馬の一団に、人々は何事かと身を竦ませ、囁き合った。


先頭を走るアランは、エルドレッド邸の前で馬を止めた。

守衛がアランの姿を確認すると、閉じられていた門が、ゆっくり開く。


「お待ち申し上げておりました、王弟殿下」


その向こうで、エルドレッド公爵クライドが恭しく頭を下げた。


「……まさか、出迎えられるとは思わなかったが」

「殿下の目的は、私を捕らえることでしょう?」


クライドがにこやかな笑みを浮かべる。

騎馬の一団を前に、臆した様子は微塵もない。


「抵抗するつもりはありません。どうか、私を王城へとお連れください」


クライドが武器も持たぬままに、アランの前に立つ。


「むしろ、それこそが我が望みですので──」


その瞳には、静かな決意が滲んでいた。

多忙につき、5月は週1更新の予定です。

のんびりお付き合いください。


6月はまた週2更新に戻せるといいな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
以下の小説も、どうぞよろしくお願いします!
(イラストをクリックすると、販売/掲載ページに飛びます)
双子の妹に殺された姉、二度目の人生は初恋のイケおじ王弟にフルベットします! 1 表紙画像
ネトコン13入賞の、小説家になろう連載作品です!
小説版はこちら
どうして私が出来損ないだとお思いで? 表紙画像
小説家になろうに掲載していた短編を、書籍化していただきました!
小説版はこちら
二股王太子との婚約を破棄して、子持ち貴族に嫁ぎました 表紙画像
ピッコマノベルズ連載中。
捨てられた公爵夫人は、護衛騎士になって溺愛される ~最低夫の腹いせに異国の騎士と一夜を共にした結果~ 表紙画像
ピッコマノベルズ掲載。(完結済)
魔族生まれの聖女様!? 表紙画像
ピッコマノベルズ掲載。(完結済)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ