第一話「魔術師」E
暗闇に包まれたような薄暗さが景色に広がった。
此が戦闘の予兆であることは海斗でも理解できる
(逃げるなら今の内だ。)
踵の向きを変えて忍び足、隅の方を移動した。
「貴方は此処で見てて下さい。」
そこで、感づかれる。
此処を逃れようとした忍び足が、不意に聞こえたエリスの声で震え立った。
「安心しな『チェリーボーイ』。こいつのが終わったら、次はお前だ」
チェリーボーイと揶揄し、海斗は背筋を凍らせる。
すると、何時の間にか二人の構えが変わった。
「早い所、やっちまおうぜ。アンタの味がとても楽しみで仕方なくてよ。」
「あら、下品な事。戦うのでしたらもう少し品位をもって頂きません事?」
「へっ、そうか? これから起きる事はもっと下品だっつーのによ。」
「それもそうですわね……。結局、下品な血を飛ばし散らすのは”貴方”なのですから。」
「うるせぇ女だなっ。チェリーボーイの次に、癪だぜぇ!?」
その時、ヴェーシャの手元からは濃厚に溶かされた溶岩が出る。
それが一瞬に消えると同時に、壁を強く叩きつけた殴打音がエリスの方にに叩きつけられていた。赤く燃え上がった溶岩は溢れんばかりに飛び散り、凹んだ痕が生まれた。
此が地獄の炎を司る破壊魔ヴェーシャの力、炎術と呼ばれる物だった。
光速を越える火炎。その威力は圧倒的で現代兵器よりも勝る地獄の火炎に相応しい威力。
「くっやりますわね。」
しかし、対するエリスも退かず。
寧ろ、予想以上の相手の力量にエリスの口元は悦ばしげに綻ぶ。
足下は青い線で描かれた異形な紋章。足下からは青く透き通った隔壁が複数重なり。
幾重にも重ね、攻撃を防いだらしいがそれでも完全には防ぎ切れなかったらしい。これがヴェーシャの火力と速度。
再び、相手は手元から炎獄を取り出すと一瞬の動作で飛ばす。
(流石に防御結界は持たないだろ)
しかし、エリスはその場を動かず。
手を翳す、無数の異形の紋章が現れ神風と為に風を斬る音が無数。
宙からは粉のように炎獄が飛び散った。
「おっかねぇおっかねぇ、護っただけでなく複数にも分けて俺の連撃を破砕するとはな。そして空間の風を使って光速を感知か。流石の俺のマグナムもすぐに萎んじまう」
笑っているが、相手を見下したような物言い。
エリスの魔法は炎獄の攻撃性は劣る物の、力強い風圧を駆使した風魔法。
その速度や範囲性は炎獄よりも優れていた。




