第十話 渡しませんからね!!
あと一ヶ月もしないうちに中間があるなんて信じたくないですね。
はぁ、朝から疲れたよ。さて、一時間目は………
え、体育!?おいおい、今一番やりたくない教科じゃんか。え?何故かって?みんなわかってんじゃないの?
「久野さん、早く着替えに行こ?」
「優希ちゃん、早くしないと遅れちゃうよ?」
そう。着替えなきゃいけないのだ。それも、昔のように教室で、とかではなく女の園、女子更衣室で。温泉の時も嫌だった。他人から見たら合法なのにその実全く合法じゃないから。
でも、いつまでもグダグダ言ってても仕方ない。男は度胸だ。あ、今は女か。ま、女も度胸だ。
「久野さん、以外と胸あるんだね。服着てたらあんまりわからなかったんだけど。」
「優ちゃんって何者?お肌超白くてすべすべだし、何気に胸もあるし。」
「そうでしょそうでしょ?それだけじゃないよ?」
ムニュッ
胸を揉まれた。おい、何回目だよ。いい加減飽きてくれ。
そんな願いも虚しく、
「ひゃうっ。も〜!何回やったら気が済むのさ!」
自分の物とは思えない、甲高い声が更衣室内に響く。
「「「可愛い〜!!」」」
「雪ちゃん曹長、綾ちゃん軍曹、優ちゃんが可愛いであります!」
「ホント。血迷っちゃうくらい可愛い。んで、ナチュラルに私を下にするのやめてくれない?」
「でしょでしょ?怒った顔も可愛いよね!」
「「うん!」」
曹長、軍曹、懐かしいな。俺も昔見てたっけ。個人的に小雪ちゃんが好きでした。
「ほら、僕もう着替えたから行くよ。」
「あ、待って!すぐ行くから!」
さんざん人を振り回しといて待つわけねぇだろ。
「はい、ストレッチやるから、二人組作って〜。」
体育の先生は滝沢って言う二十代の若い先生だった。
体操服は、ごく普通の青の短パンに運動部が着ていそうなシャツ。これ、汗吸うんだろうな?不安になってきた。
「優希ちゃん、一緒にやろ?」
雪平が声をかけてくれた。
「うん、いいよ。」
さて、この体の軟らかさはどうだろう。男の時はそこそこ軟らかだったはずだが。
「うわ、優希ちゃんすごく体軟らかい。これ、ストレッチになってるの?」
「大丈夫。少し痛いから。ストレッチにはなってるんじゃない?」
ま、嘘だが。自分でもビックリするくらい全然痛くない。
それよりも、ストレッチって痛かったらいいの?知らないけど。
ちなみに、雪平は体がすごく硬かった。
「はい、今日は体力テストするよ。」
え、体力テストかよ。嫌だなぁ。だって俺、体力あんましないし。病み上がりだから。リハビリはちゃんとしたけど、心配要素しかねぇ。
「あと、明日、身体測定やるから。体重減らそうとして朝食抜いてくるんじゃないわよ?」
もちろん、俺はそんなことはしたことがないからいつも通りで行くのだが、他のみんなはやったことがあるらしく、『え〜、そんなことしたら私が重いのバレちゃうじゃん!』と言いたそうな顔をしていた。
朝飯抜いて重い方がよっぽど心に来ると思うけどね。
「どうだった?」
雪平が満足そうにニヤニヤしながら話しかけてきた。
「いや、その……」
「見せて見せて!」
「あ、」
見ない方がいいと思うんだけどな。
「え、何これ?
上体起こし一分で2回、反復横跳び18回、握力16kg、50m走15秒26、立ち幅跳び1m9cm、長座体前屈61cm………………」
「ダメでしょ?」
「手、抜いてない?」
「抜いてない。」
長座体前屈の記録がその証拠。地面に上半身ピッタリくっつくことができるから、こんな記録になったと思っている。
それにしても上体起こし2回って、笑えるを通り越して呆れるわ。腹筋に全然力が入らない。握力もめっちゃ弱い。
運動音痴の体だったんだな。この体。
「はぁ、もう放課後か。」
俺は放課後を知らせるチャイムで目が覚めた。
何が起こったか教えてやろう。
「それにしてもビックリね。こんな涼しい日に熱中症だなんて。」
そう。俺はあの後、熱中症でぶっ倒れた。
恐らく、俺の体は3か月の間、もちろん室内で培養されていた。だから紫外線、日差しにはめっぽう弱いのだろう。吸血鬼とか言うなよ?
実際、あんなに白かった肌は真っ赤になっている。
日焼け止め?塗るの忘れてたよ。だって俺今まで一度も塗ったことねーんだもん。
「迎えに来てくれるそうだから、もう少しそこにいてね。」
あ、そういや呼び出されてたんだっけ。碧樹 空君だっけ。
「あの、放課後にちょっとした用があるんですけど、ここで待ってなきゃダメですか?」
「あ、わかった。呼び出しね?あなた可愛いから放課後に告白のために呼び出されたんじゃない?」
おぉ、当たってやがる。
「まぁ、そんなとこです。」
「いいわよ。調子も大分よくなってるみたいだし。」
「ありがとうございます。」
許可ももらったし、行くか。
ガチャッ
屋上で立っていたのは、なんと男ではなく、
「あ、わざわざありがとうございます。碧樹 祐哉の妹の空です。あの…………」
女だった。しかもうちの学校の生徒じゃない。どうやって入ったんだよ。
「お、お兄ちゃんはあなたに渡しませんからね!!」
は?
皆さんは妹ってどんな感じだと思いますか?
いつも慕ってくれる甘えん坊さんですか?
いつもきつい言葉で罵ってくるツンさんですか?
それとも、二つの間のツンデレさんですか?
妹がいないので、どんな風なのかわかりません。




