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鳥目シアンと、あのVTuberかもしれない彼女たち  作者: 群青アイ


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今日は記念配信日!

一話完結の連作短編です。

鳥目シアンから始まる、彼女たちの世界をお楽しみください。

《収益化、本当におめでとう!》


 ……


 コメントが流れるたび、画面の向こうで誰かが自分のことを祝ってくれているのだと実感する。


 配信を始めた頃は、コメントが一つ付くだけでも嬉しかった。

 それが今では、配信を始めれば見慣れた名前がいくつも並ぶ。


 最近は初めて見る名前も少しずつ増えてきた。

 今日もとりっこ(リスナー)たちがたくさん来てくれている。


《収益化して、まず何したい?》


「えー、何しよう。まず新しいマイク買いたいかも」


 話すたびに、画面の中のシアンの体が小さく揺れる。


《鶏皮たべる?》「――共食いさせる気か!」

《ASMR!》「――はずかしいから!」

《鳥目改善!》「――最後の無理だから!」


 記念配信も、そろそろ終わりが近い。


「みんなありがとー!ほんとにここまで来られると思ってなかったよ」


 いつもより少し高い声が出た。

 コメント欄には「おめでとう」と「おつシアン」が次々に流れていく。


 その中に、いつもの人もいた。

 今日も来ている。

 何度も見た名前の横には、私のファンマーク。


 少しして、コメント欄の中に赤色が混じった。

 スパチャだ。


 一瞬だけ目を止める。


「……わぁ ありがとう!」


 気持ちを抑え、画面の向こうには聞こえないように、小さく息を吐く。


 ここまで続けてきたんだ。


 画面を見たまま、口角が少し上がった。



 今日はいつもより少し早く帰れた。


 駅前のコンビニで晩ごはんを買い、弁当を温めてもらって店を出る。

 家に着くのとほぼ同時に、スマホに配信開始の通知が来た。


  鳥目シアン(VTuber)の記念配信。


 靴を脱いで、買ってきた袋を机に置く。コンビニ袋から飲み物だけ取り出して、キャップを開ける。食べるのはあとでいい。


 スマホで配信を開くと、もうかなり人が集まっていた。


 配信を見始めた頃は、まだコメントも今ほど流れていなかった。

 名前を呼んでもらえることも多かったし、配信のことについて何か言えば、ちゃんと耳を傾けてくれた。


 最近は初めて見る名前のとりっこも増えた。


 嬉しい。


 ――やっとシアンちゃんの良さに気づく人が増えてきたんだと思う。


 そんなことを考えながら、机の端に置いた弁当にも手をつけないまま、しばらく配信を眺めていた。


 気づけば、配信もそろそろ終わりそうだった。


《収益化、本当におめでとう!》


 コメントを送る。


 けれど、すぐに他のコメントに流されていった。


 まあ今日は仕方ない。

 いつもよりずっと人が多いんだから。


 せっかくの記念日だし、今日はちょっと奮発しようかな。

 金額を選んで、メッセージを書く。


 送信。

 ――――――――――

 しょうた

 ¥10,000

 収益化おめでとう!

 ずっと見てきたから、自分のことみたいに嬉しい。

 最近ほんとに伸びてるよね。

 でも前から言ってるけど、忙しくなっても

 とりっこへの感謝は忘れないでね。

 シアンちゃんはそのままが一番いいと思う。

 これからも変わらず応援してる!

 ――――――――――


「……わぁ ありがとう!」


 シアンちゃんの動きが一瞬止まった。


 長いから、ちゃんと読んでくれているのかもしれない。


 まばたきのあと、顔が少しだけこちらを向いたように見えた。

 少しして、シアンちゃんの口元がわずかに動く。


 笑ってくれた。


 よかった。


 人気が出ても、シアンちゃんにはシアンちゃんのままでいてほしい。


 そういうことを言えるのも、昔から見てきた自分たちなんだと思う。


《おつシアン!》


 最後の挨拶を書き込むと、ほどなく配信画面が暗くなった。


「ふぅ……今日の配信も楽しかったな」


 スマホを伏せると、机の上のコンビニ袋が目に入った。

 そういえばまだ何も食べていなかったことに気づく。


 少し冷めた弁当を取り出して、レンジに向かった。

ここでしか見えなかった時間は、別の話に続いているかもしれません。

気になったことがあれば、もう一話だけいかがでしょうか。


関連作品:『あの日の返信と、今日の写真』

配信外の日常を描いた一編です。

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