第1章1 当意
読んでいただきありがとうございます!
若い女性と渋おじとの言語学習型ハイ・ファンタジー恋愛小説を書いております!
今回は試しにどのような形になるのか第1章1、2を投稿させていただきます!
全く言葉が分からない場所に飛ばされた感覚を読者にも体験していただけるようになっております。
独自の言語形態がありますので分かりにくい場合は、まえがき・あとがき、にて追記させていただきます!
仙崎 千夏は今日も病棟で忙しく動いていた、13時47分今日は受け持ち患者は8人、1人は明日手術なので手術の準備や書類作成や承諾書確認や処置や説明が必要、他にも2人は認知症で安静が保てず色々見守りや声掛けや対応が必要、あぁ、そういえば7号の蟻和羅さんは5日も便がでてないし寝る前の下剤もあまり効かなかったか、お腹の音聞いて排ガス聞いて、血圧測って座薬か摘便かして、いや、浣腸も視野に入れるべきか、手術後1日目の比呂也さんも午前中のうちに尿の管抜いたから尿出ないか確認したいし、と脳内で考えながら患者に新しく出た咳止めの薬を薬局に取りに行くために階段を降りていく時
あと6段もあるのにも関わらず、足を滑らせた
「やばっ」
その声は誰にも届くことはなく、加えて衝撃はベチャッとしたものだった
痛みよりも下半身にまとわりつくでこぼことした感触、目を開けると遠くには雄大な山々、近くは開けているが病棟とはかけ離れており、千夏の着ている制服が浮いている、千夏の脳内には真っ先に制服がクリーニングに出さないといけなくなったがロッカーに替えがあっただろうか、というものだった
「おべお!」
背後、遠くから低い声が飛んできた、振り向くと遠くに男性がこちらを警戒しながら近づいてきた
「ここはどこでしょうか?」
「こをけまをめお」
全くわからない言語だ、英語は学校で習った以外出来ない、むしろ赤点だったが英語などの外国語という訳ではなさそうである、男性の口調も困惑という色を持っていた、そこで千夏は気づく、制服であればメモ帳やペンがある、それで意思疎通は出来ないだろうか、あとは身振り手振りなども使おう、意思疎通の難しい患者でも目を見たりして工夫をして関わっているのだ、何とかなるだろう、とメモ帳とペンでここは何処かと書いたが相手は全くと言っていいほど分からない様子
「えっと、家…じゃないか、仕事場、病院に戻りたいんですけど」
男性は口元に手を当てて考え込みある場所を指さした、その先に小屋があった、千夏が小屋を認めたのと同時に男性は小屋の方へ歩き出したが千夏が歩く音が聞こえず振り向き、千夏を見る、千夏はようやく着いてこいという意図を汲み取り大人しく着いて行った、その間に千夏は自分の置かれた状況を考えていた
あのとき足を踏み外して転けて死んだのか?それならば状況は理解できるがせめて私服が良かった、それに向こうの私を見つけたのが同じ職場の人だということは心臓マッサージやらドクターコールやらやられてきっと大変だろう、自分の穴を埋めるために先輩らに迷惑をかけるなぁなどと考えていると小屋に着き男性が扉を開ける
中は簡素な作りであった、玄関兼土間、リビングのようなスペースと押し入れ、縁側のような廊下がありその奥はどうなっているかは見えない、明かりは行灯と燭台が2個ずつあるが今はどちらも火がついてない様子、その中で一際目立つのは剣のような武器である、あいにく武器に詳しくないため剣と呼ぶ他ないのだが鞘に治められ部屋の壁に立てかけられていた、男性はその剣の傍まで行くと懐の辺りから小さなナイフを出して剣の隣に置いた、恐らく剣を持ち歩くのは日常的では無いため護身用のナイフを持っていたのだろう、男性は千夏に向き直り座るよう促した
「せはとなびあらびお」
やはり男性の言語は理解できず、眉をひそめる、しかしこのまま黙っておくのも失礼なため自己紹介はするべきだろう
「えっと、私は仙崎千夏と言います、南東化病院急性期病棟で働いてます、階段で滑って転んだら、ここにいました」
男性は千夏が話している間も頷いてはいるが言語が分からない様子であった、言葉も文字もダメとなるとどうしようもない
千夏は話している間に気づいたことがあった、それは目の前の相手がかなりの色男であることに、だ、何を隠そう千夏は大のつくほど枯れ専である、しかし千夏は「枯れ専」と言われるのはあまり乗り気ではなくいつも「イケおじ専」と呼べと言っている、もちろん自身の父や祖父、友人の父や祖父は恋愛対象にはならないがテレビなどに出る有名人ではもっぱら4~50代に夢中である、そのため特殊性癖の為に生涯独身を豪語しているのだが目の前の男性は千夏にとってはイケおじそのものであるようだ、しかし千夏も社会人であり今置かれている状況で「わーかっこいー」なんてやる人ではないしそんな状況ではないのだ
沈黙は空気が重たい、お互いに何も分からぬ相手でありましてや千夏はこの景観からは浮いているのだ、そこでふと思い出した、明日退院予定の患者へ書類を渡す封筒を切らしておりそれも薬局へ寄る前に1つ持っていたのだ、その封筒には千夏の働く病院の簡易地図が記載してある、図ならばどうだということで差し出してみる、が、やはり反応は芳しくない、男性はその紙を様々な方向から見てみたり地図の中にある文字を見てみたりとしているが眉間のしわは濃くなるばかりである、千夏もこの小屋に入る前に当たりを見回したが病院に行く道、というよりは舗装された道すら見当たらない、地図に記載されていのは最寄り駅、最寄りのバス停、近くのコンビニくらいが関の山である、こんな山に囲まれたところにコンビニやら駅はありそうにない、せめてバスくらいはあってほしいがお金がないことに気づく、これでは無賃乗車になってしまうが事情を説明したらよいか、だが言語が通じないのだ、さて困った
「もさはほすけも」
千夏に向けた言葉というより独りごちるように男性は言う、紙を見てではなく、千夏をみて、千夏は何となく自分が困っているのを理解してくれたような口調であると感じ、千夏は、申し訳なさそうに眉を下げる、スマホはカバンの中だしPHSは今日は持つ係じゃないし、今自分が持っているのは消毒にペン、手帳、メモ帳、アルコール綿、電卓、時計、印鑑、咳止めの処方箋、封筒である、そう考えたあと千夏は喉が乾いていることに気づいた、人間緊張すると喉が渇くのは当たり前で何より昼食が11時30分でその後から水分補給も手洗いも行けていない、休憩が終わったら患者のうがいを行い、患者のオムツ交換に行き、経管栄養を終了し、術後の検温と便秘の患者の血圧を測っている時に別患者の咳止めが処方されたから取りに行っている途中での出来事だ、とはいえ誰とも知らない人へこの男性は水をくれるのだろうか、まずこの場所があの世であれば黄泉竈食の類にならないだろうか、と、足りない頭で考えながら千夏はさらに困った顔をした
気まずい空気を察してか男性は立ち上がり土間へ向かった、そこには現代で言うキッチンでもあり簡易的な井戸がついていた、千夏は水が飲めるかも、と思ったら視界がグラりと歪んだ
階段だった
いつもの見慣れた階段、病棟の階段、制服は汚れていない、あまりの出来事にたっぷり10秒立ち尽くした
「え、疲れて幻覚でも見た?」
そう処理しぼんやりした頭で薬局へ向かう、変わらず薬局の寺山さんは丁寧に接してくれる、病棟へ戻ると何も変わらない、時間も、変わらない、ただ、封筒はその手には握られていなかった、それを元々手にしてなかったことにした、さぁ、やるべき事は沢山ある!そう千夏は頭を切り替え業務へ戻った




