一番
「え、ああ、いいですよ。」
僕は隣にズレる。他に誰もいないのに。
「ここにずっと居るらしいな。」
「はい、、すいません危険を犯すような真似をして」
「いいんだよ。説教は帰りの車の中だ。」
終わった。いい人生だった。
「おじさん、僕、次に殺される人が分かりました。」
僕は言おうと思っていた事を打ち明ける。今までの話から共通する殺された人の特徴。
「そうか、、、俺もそれを言いにきたんだ。今からそいつを出汁にして犯人を誘い出す。協力してもらうぞ。」
「わかりました。」
あまりにも唐突というかぽんぽん話が進みすぎてないか?時間がないのかもしれない。ワタワタしていると映画館の入り口から二人歩いてきた。相模さんともう一人。
墨風正樹さんが。
おじさん達は僕の三つ後ろの席に隠れることになった。
墨風さんはおじさん達と隠れている。僕だけになって油断したところを捕まえるという算段だ。
僕の負担が大きいし危ないと抗議したところ、殺し合いになるのとどっちがいいと言われたので渋々了承した。一応お腹に雑誌を仕込まれてお腹に刺されても大丈夫と言われた。ちなみに今までの被害者の死因は全て後頭部にナイフを刺されてる。
僕これから死ぬんじゃないか。
映画も上映して場をあたためておくことにする。機械室に行き、「あなたにキク」を上映することにした。
席に戻って僕は映画鑑賞を続行した。
映画も中盤。起承転結で言うところの転くらいの時、足音が聞こえた。硬質なブーツの音。どんどん音が大きくなる。入ってくるや否やこちらを見た
その人の名前は佐賀峰高佐。
無言でこちらに来て僕の椅子を指差す。
「隣、座っていいですか?」
いいですよと返事をして彼は何か考えるようにして少し黙って、そして口を開いた。
「罠ですか、私を誘き出すための」
「なんのことですか?僕はただ映画を見てるだけですよ」
適当に知らんぷりをする。
「別にいいですよ。嘘つかなくて。あなたには危害を加えませんよ」
穏やかな目でそう言った。だったら左手に持ってるナイフを何処か遠くに投げてくれるとありがたいんだが。
「本当になんのことかさっぱり」
「ははっ、まぁいいです。話を進めましょう。結論として人殺しは私です」
あっさりと認めた。認めたと言うより自白だった。なんでどうして。
「そうだったんですか。残念です」
「残念とは?」
「水族館で働く人は海の生物が好きだと思ってたんです。今回の犯人はわざわざサメに死体を食わせた。おかげでサメは殺処分ですよ。そんなことするなんて残念だなあって」
「それはすいません、、、夢を壊すようなことをして。将来は水族館員になりたかったんですか?」
「いえ、全然。魚が好きってだけで」
「そうですか、、、」
残念そうに俯いてしまった。こう言う感じの犯人はいきなり刺してきそうで怖い。
「動機とかあるんですか?人殺しの」
「快楽殺人じゃないんだよ。、、、この水族館を作るにあたってたくさんのお金を投資してもらったんだ。計画したのは私でその計画書を館長に渡して作ったんだ。ただお金がたくさん集まったのにしばらくしてお金が足りなくなった。何度計算しても合わない。もう一度お金を出してもらったのにまた足りない。明らかに減っていたんだ。もうすぐ開舘と言うのに内装がまだまだ足りていなかった。横領が発覚した時に思ったよ。殺すって。
経営が立ち行かなくなる水族館の魚は大多数が死ぬ。この水族館の魚はすでに手を回している。全てが終わったら魚達はお引越しさ。」
そんなことでとも思ったが日とが大事にしている物の具合は他人には理解できるはずもなかった。
「サメはどうして見捨てたんですか」
「あの人が暴れて勝手に落ちただけで落としてはいないよ。」
「そうですか、、、話は終わりですか」
「最後に映画を見ながら話せるとは思わなかったな。後ろのおじさん達に拘束してもらおうかな。」
そう言って佐賀峰さんはスクリーンに向かってナイフを投げた。投げた瞬間おじさん達があっという間に捕まえてしまった。
電気がついて顔を見ると腫れていた。泣いてたんだろうか。
よく見ると片耳だけピアスがない。もしかして、、。
「ピアス片耳落としましたか?」
佐賀峰さんはゆっくりとこちらを向いた。
「大切な物なんだけど落としちゃって」
「僕拾いましたよ。くらげ水槽の前で」
「返してくれるかい?とっても大事な物なんだ」
まっすぐな目でそう言われた。腕を拘束されてたのでとりあえずスーツに胸ポケットにねじ込んでおいた。
連れて行かれる佐賀峰さんに一つだけ聞きそびれていたことに気がついた。
「この水族館で1番好きな生物はなんですか?」
なんの意味もない。何も含みのない純粋な疑問だった。
佐賀峰さんは少し笑って答えた。
「マンタ」
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