プロローグ:回想の始まり
・・・今、この状況に置かれていても、本当に信じられない。
目の前には、全身を映し出せる姿見が置かれている。
鏡の中の私は、淡いオレンジ色のウエディングドレスに身を包んでいる。
ボーイッシュなまでに短い髪には、花をあしらったシルクのヴェール。
滅多にしないメイクも、派手すぎずいい感じ。
さすがはプロの仕事・・・って、当たり前か。
ウエディングドレス。
お嫁さん。
友達の前では
「ありえねー」って鼻で笑い飛ばしていたけど・・・。
ウエディングドレスも、お嫁さんも、本当は小さい頃からの憧れ。
そして、秘かに夢見ていた。
だけど、
今こうして目の前に現実を突きつけられると・・・
何だかとても気恥ずかしい。
さっき私の父親が
「馬子にも衣装だ」なんて笑っていたけど、昨日の夜、めそめそ泣いていたのは知っている。
女同士のネットワークをなめんじゃねーぞ、このやろー!
・・・とは言え、私が今いる所は教会でも、結婚式場でもない。
成人式の時に私がお世話になった写真館なのである。
これは彼と私で話し合った結果だった。
「あまり勇子に負担をかけさせたくない」
いつもなら何か言い返すところだったけれど・・・私は素直に折れた。
何故かって?
・・・私も大人になったと言うことにしておいてください♪
いい加減恥ずかしくなってきたので、姿見から視線を外して私は窓の外を見た。
今日も抜けるほどに空は青い。
何もすることがないなぁ・・・。
何かしていないと落ち着かない、私は目を瞑り、ここまでに至った6年間の記憶を辿ることにしたのだった…。




