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生け贄花嫁と呼ばれた底辺魔術師、勇者の末裔へと嫁ぐ  作者: 有栖 多于佳


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命約を違えた国々のその後

ざまあの時間です。


ドラコニア王国へとアクアレーヌが嫁いで数ヶ月。

サクラメント王国では、大混乱が起こっていた。

この国から魔力が消えたのだ。

魔術師も魔法使いも魔法騎士もみな魔力が無くなったので、何も出来なくなった。


王候貴族はみな魔力持ちであったが、彼らも当然のように魔力が無くなったので魔術が使えない。

魔術を使う前提で暮らしていた王族貴族、そう言った者たちの生活が成り立たなくなった。


混乱を収めようとサクラメント国王は、高級品である魔道具を使用しようと他国から態々輸入したのだが、サクラメント王国に入った瞬間、魔道具の動力源である魔石の蓄魔力がゼロになってしまい結局使用することは出来なかった。


そんな騒動の中、魔術を生業にしていた者たちや冒険者ギルドの者たちがごっそりと他国へ移住していった。

サクラメント王国の騒動を他山の石と笑って見ていた命約の国々でも同様のことが起こり、魔力消失は世界的な大問題となり、急遽、命約会議がサクラメント王国で行われた。


「サクラメント国王、間違いなくドラコニア王家へと王女を嫁がせたのだろうな。末王女がそこにいるのはどういうことだ!」

隣国の王が、厳しい顔で詰問した。


「や、王女を嫁がせると言う約束は当然守った。ほれ、この家系図を見てくれ、庶子ではあるがアクアレーヌと言う王女を嫁がせた」

サクラメント国王が家系図を指差し示して言い訳をした。


「庶子とは言え、アクアレーヌなる王女が生まれたのも居たことすら知らぬ、どこかの国王で知っていた者はおられるか」


反対側の隣国の王が真っ赤になって声を上げれば、知らぬ知らぬの大合唱。


「その者はどこで育った、どんな身の上の者なのだ。産みの母親はどこの誰だ、そこの王妃ではあるまいな。王妃は社交で常日頃から見ていたが、妊婦であった記憶はそこの末王女の時より記憶に無いぞ」

北側の隣国の王がそう言えば、


「側妃を得て子を為したと言うことならば、成人の祝いなどもあろうがそう言った類いの話も聞かぬ。その者は本当に王女なのか。よもや、我らを謀り、奴隷女を王女と偽ったのでは有るまいな」

南の隣国の王が、目をグワっと見開いて言い募った。


周辺国の王たちに詰められたサクラメント国王は、あわあわと意味不明な声を呟くのみ。

そんな国王を冷たく睨んで、サクラメント王妃が、

「何を騒いでおられるのです。今回、ドラコニア王家へと王女アクアレーヌ・デ・サクラメントを嫁がせたのは紛れもない真実。その証拠にドラコニア王家からはお叱りを受けておりませんわ」

と、優雅に扇を扇ぎながら答えた。


「だからそのアクアレーヌ王女を知るものが居ない、王位継承順位にも見られない。それは本当に王女であるのか。産みの母親はどこの者だ、どこの家門だ」


「側妃のひろめも無かったことから愛妾の子としても、王女として養育していたらデビュタントで話題になるはず、成人までの15年、一度も見ないなぞある訳も無い。国際会議で戯れ言を言うとは良い度胸だな」


居並ぶ国の代表者たちから厳しい意見が矢のように射られ、余裕を見せていた王妃の笑顔が引きつった。


「平民の魔術師の女が生んだ娘をドラコニア王家へと嫁がせよ、そう神託が降りたのだ。それに従ったのだ。神が嘘を言うはずなかろう」

サクラメント国王が不貞腐れた様子で言い捨てた。


「その神託とやらは、本当に神の言葉なのか。魔物や妖魔の類いで無いと何で見分けた」


「神降ろしをしたと言うことか、神降ろしは神殿でもしない秘技では無いか。ドラコニアの始祖の勇者と聖女が竜王討伐の後にした、そう言う神話の話ではないか!」


「では、王女とは名ばかりで、魔術師の娘を王女として嫁がせた、そう言うことか。これは命約を違えたことに他ならない!そのせいで魔力消失の神罰が下った、そうではないのか。サクラメント国王、この責任はどう取るつもりだ!」


会議は大紛糾し混乱を深めただけであった。



サクラメント国王と王妃は、命の契約を勝手に違えた責任を取らされて斬首され、それ以外の王族は毒杯を煽ることになった。王族の居なくなったサクラメント王国は、サクラメント共和国と名を変えた。


周辺国の国々は、ドラコニア王国に謝罪の意を伝え、どの国からでも嫁を使わすと申し出たが、

「いやいや、とんでもない。得難い縁を得て、最愛の妻を娶ったばかりだと言うのに、何と言う申し出をするのだ。私は王妃であるアクアレーヌを愛している。今後そのような戯れ言を言う国とは国交断絶とする」

そう強い拒絶を受けて、謝罪に謝罪を重ねたのだった。


混乱が治まらないまま数年が経ち、平民の間には手頃な魔道具が出回るようになっていった。

なんなら混乱していたのは魔力を使って生活していた王候貴族たちだけで、手足を使って生活していた民たちには何の問題も無い話。


その民が使う道具に、便利な魔道具が増えていった。

それはドラコニアから輸出される魔素水をエネルギー源にしたもので、その取引は商業ギルドが主体になって進められた。

確実に経済を握ったのは平民商人たちで、王候貴族の力は衰退する一方となったのである。



ドラコニア王国の竜王の間で、アクアレーヌがヴァレリウスに抱えられて魔素水の上を浮遊していた。

そこでアクアレーヌは、どこにも姿の見えない竜王と聖女、初代王妃に文句を言っていた。


「名前も知らない人を女と呼び拐うのは犯罪です。犯罪者を好きになる人は居ない。嫌われているのを逆恨みして呪うとか魂が消滅したから良いとかならないから。二度と生まれて来てはいけない。聖女も、自分が拐われて嫌な思いを永遠と言うほどされてきて、同じように母を、幼いピアを拐って呪いを解除される駒にするとかあり得ないから。あなたも竜王と同類だから!魂消滅しろ!」


怒りに任せながら、白い靄で空間を充満させた。


アクアレーヌの怒りに呼応するように、靄が目映く一瞬輝いて、消えて無くなった。

アクアレーヌの魔力と共に、全てが消えてしまったのだった。


「アクアレーヌ、大丈夫か」

ヴァレリウスが目映い光から守るように抱え込んで、光が消え失せた後アクアレーヌの顔を覗き込んだ。


「ええ、もう私も魔力が無くなってしまったけれど、これで長い枷が外されたわ。ヴァル様、もうあなたも私も孫子まで運命と言う名の強制を受けることも無い。呪いなんて恐れることもないわ」

満面の笑みを向けたアクアレーヌをヴァレリウスは愛おしそうに見つめると、直ぐ様その場から私室へと転移した。



アクアレーヌは知っていた。

この世界は別の世界で乙女ゲームと呼ばれる類いの物であると。


魔術師塔の書籍を整理している時に、初代王妃の手記と言う物を見つけて読んだ。

王妃によると、彼女は異世界転移と言う状況なのだそうだ。


竜王を倒して封印した後、勇者と結婚してハッピーエンド。これで元に戻れると期待していたが、パート2が販売されていたので、それが終わらなければ帰れないらしい。


そのお話は竜王の呪いによって苦しむ勇者の末裔とその番の物語がだとか。


呪いを解くのはサクラメント王国の王女アクアレーヌで、苦労して魔術を極めて勇者の末裔であるドラコニア国王を助けて解除してハッピーエンド。


特記事項と言えば、パート1の最後の魂の輪廻の設定は大人の事情でカットされていたので、結末に不満のあるガチ勢が炎上騒ぎを起こした、ことらしい。大人の事情って、ガチ勢?炎上?専門用語が難解すぎる。


理解し難い事柄が散見されて持ち帰って養父母にも見せたのだが、ウパやアニマは意味のわからぬ謎解きのようだと苦虫を噛み潰したような顔で取り上げられた。

が、結局大切なことは、魂が縛られていないと言う点と自分が魔術を極めなければならない事だと理解した。


手記の末尾に、もしハッピーエンドを迎えたならば、この地下空間に縛られている王妃の魂を解放して欲しい、そういう記述で締められていた。


『そうして貰えたら、私は元の世界に帰ることが出来ると思う。ここは自信が無いのだけれど』と書かれていたが、先程の光が吉報であって欲しいとアクアレーヌは思ったのだった。


ヴァレリウスにこの話をしたところで、王妃の手記はウパがその場で竈にくべて燃やしてしまったし、奇想天外な話なだけに理解して貰えるとも思えず、このまま内緒にしておこう。


知らない世界に連れてこられた挙げ句、竜王に無理やり拐われ犯されショック死する女に転移させられた王妃様は不憫だとしか言えない。

無事に帰れたらもうこの世界のことは忘れて、良い人生を送って欲しい。


そんな思いを胸に秘めながら、ヴァレリウスの胸に顔を埋めて匂いを思いきり彼の匂いを吸い込むのだった。







王妃は、ストーカー男(竜介)を振った逆恨みで刺されて昏睡でしたが、奇跡の生還を遂げました。めでたしめでたし

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