表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50%の詩  作者: オクト
12/15

第11章「選択の扉」

境界の裂け目が、光を帯びて広がった。

二重露光のように、二つの道が重なり合う。

一方は現実へ、一方は境界の奥へ。

どちらも、淡い光に包まれていた。

律は湊を見た。

その影が、扉の前に立っている。

足元で、雨粒が逆流し、空気が波打つ。

時間が、選択を刻んでいた。


「戻るんだ、湊」


律の声は震えていた。


「俺が決める」


その言葉が、膜を通して遠くに響く。

湊は振り返らない。

ただ、扉の奥を見ていた。

その視線に、希望と絶望が同居していた。


「兄貴……」


声が、雨に溶けて消える。

律は一歩踏み出した。


「湊、聞け。ここに残ったら――」

「分かってる」


湊の声が、低く響いた。


「でも、戻ったら……何も変わらない」


律の胸が軋む。


「変わらなくてもいい! 生きて帰れれば――」

「それは、兄貴の救いだろ」


湊の声が、雨粒の間をすり抜けて届いた。


「俺の救いじゃない」


灯が律の肩に触れた。

その指先は冷たく、静かだった。


「選ばせて」


律は息を呑む。


「……何を言ってる」

「救いは、連れ戻すことじゃない」


灰色の瞳が、底なしの静けさを湛えていた。

律の胸が軋む。

湊を失う恐怖が、骨まで染み込む。


でも――


その恐怖を、湊に押し付けることはできない。

扉が脈打つ。


カチ、カチ――。

メトロノームの音が、逆流するように響いた。


律の耳に、時間が崩れ込む。

その音が、選択の刻みを告げていた。


「湊」


律は声を絞り出した。


「決めろ」


その瞬間、扉の光が二方向に裂けた。

戻る道と、残る道。

どちらも、淡い光に包まれていた。

湊の影が、わずかに揺れた。

その揺れが、律の心臓を刺した。

雨粒が、一斉に崩れ落ちる。

境界が、音を取り戻す。

その音が、選択の重みを刻んでいた。


「兄貴」


湊の声が、雨に溶けて消えた。


「俺は――」


光が、境界を切り裂いた。

その奥に、答えがあった。

読んでくださりありがとうございます!

面白かったらブックマークや感想をいただけると、とても励みになります。


次回更新予定は3/20です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ