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50%の詩  作者: オクト
13/15

第12章「代償の共有」

境界の光が、帯になって空気を切り裂いていた。

御厨の影が、その中心に立っている。

紙束はすでに燃え尽き、灰も残っていない。

ただ、光の粒が彼の肩から溢れていた。


「御厨!」


律は叫んだ。


「やめろ! 戻れなくなる!」


御厨は笑った。


「戻る未来なんて、もうない」


その声は、風に裂けて響いた。


「俺が置くのは、研究者としての俺だ」


灯が一歩前に出た。


「それで、何が救えるの」

「世界の歪みを止める」


御厨の声は、狂気と決意の境界にあった。


「この世界を閉じるんだ」


律は拳を握りしめた。


「そんなことして、何が残る!」

「残らない。それでいい」


御厨の瞳が、境界の奥を見ていた。


「俺の未来を、ここに置く」


その瞬間、光が走った。

紙束の最後の断片が、淡い粒になって空気に溶ける。

境界が脈打つ。


カチ、カチ――。

メトロノームの音が、逆流するように響いた。


「御厨!」


律の声が雨に溶けて消えた。

御厨の影が、光に呑まれていく。


「未来だ」


その声が、最後に残った。

灯が律の隣に立った。

その指先が、わずかに震えていた。


「私も、置く」


律は彼女を見た。


「……何を」

「背負う癖」


その声は淡々としていた。


「全部じゃない。半分だけ」


律の胸が軋む。


「……どうして」

「残りは、あなたに託す」


灯の灰色の瞳が、静かに笑った。


「誰かを背負うこと。それを、あなたに」


その瞬間、境界が軋んだ。

置いていったものが、光の帯になって空気を切り裂く。

ノートの文字、楽器の音、記憶の欠片、未来の断片――。

それらが、肩に戻らず、淡い光に溶けていく。


「……戻らないんだな」


律の声が震えた。


「戻らない。それが代償」


灯の声が、雨に溶けて消えた。

雨粒が、一斉に崩れ落ちる。

静止していた世界が、音を取り戻す。

その音が、選択の重みを刻んでいた。


カチ、カチ――。

メトロノームの音が、近くで逆流するように響いた。


御厨の影が、完全に光に呑まれた。

灯の笑みが、雨に溶けて消える。

律は、ただ立ち尽くしていた。

肩に何も戻らないことが、重さになっていた。

境界の扉が、静かに閉じていく。

その光が、最後の脈動を刻んだ。


確かに…

進むのが地獄でも、それは救いでもある。

読んでくださりありがとうございます!

面白かったらブックマークや感想をいただけると、とても励みになります。


次回更新予定は3/27です。

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