旅行3日目 前編
楽しい旅行も、今日で3日目。
つまり、旅行最終日です。
朝ご飯を食べ終えたボクたちは、宿泊地のチェックアウトを済ませました。
そして、旅行最後の目的地——運河巡りのボート乗り場へ。
目的地までは数十分とかからない距離です。
ところがなぜでしょう。
なかなか目的地に到着しません。
「ねえねえメイドさん、これってもしかして、迷子?」
「ううん……」
メイドさんは首をかしげました。
「目的地は、地図上では右にあるんです。だから私も右に曲がったんですけど……」
なるほど、そういうことでしたか。
ボクたちが迷ってしまった理由が分かりました。
「メイドさん、ボクたちは南に向かっています。だから、東にある目的地に向かうには、左に曲がるのが正解だったようです」
「……あ! ご、ごめんなさい!」
たまにはこういうこともあります。
仕方のないことです。
しかし、できればボート乗り場に案内してくれる人が欲しいところです。
などと思っていたときでした。
「ペペロッペ卿、見つけたのです」
「「天使さん!?」」
ボクたちの前に現れた、石像っぽさを残す天使さん。
彼女の出現にびっくりするボクたちですが、彼女は構わず言葉を続けました。
「ペペロッペ卿、草原の領主さんだと知ったのです。偉い人だったのです。だから、挨拶しに来たのです」
「そんな、偉いのは肩書きだけです。ボク自身は偉くありません。でも、天使さんにまた会えたので、偉い肩書きには感謝しないとですね」
意外な形での再会でした。
再会ついでに、魔術師さんは言います。
「天使さん、ボート乗り場の場所、分かる?」
「運河巡りのボートなのです?」
「そうだよ!」
「なら、知っているのです」
「おお~!」
これは幸運なことです。
「天使さん! 私たち、道に迷ってしまったんです! できれば、ボート乗り場まで案内してくれませんか?」
「任せて、なのです」
「ありがとうございます!」
とても嬉しい展開になりました。
空を飛ぶ天使さんは、そのままボクたちをボート乗り場まで連れて行ってくれます。
天使さんに案内され、ボクたちは歴史の街に刻まれる細い道を進みました。
観光ルートから外れた細道は、人々の生活感に溢れた景色です。
かわいらしい街並みで暮らす人々が、少しうらやましいです。
さて、さすがは歴史の街に長く住む天使さんです。
ボクたちは最短距離でボート乗り場に到着しました。
運河巡りのための小さなボート。
魔法により自動で動くそのボートに、ボクたちは乗り込みます。
「天使さんも一緒に乗りましょう!」
メイドさんの呼びかけに、天使さんは無表情。
「良いのです?」
「もちろんです!」
「私も、天使さんと一緒に観光したい!」
「ボクも魔術師さんと同じ気持ちです」
きっとボクたちの思いが届いたのでしょう。
天使さんはほのかに笑って、ボートに飛び乗りました。
「一緒に観光するのです」
こうして、ボクたちは運河巡りをはじめました。




