見上げた空のその先へ
玉座の後ろに隠し通路を発見。
暗い通路を俺、フィアナ&シュナ、カイの順で一列になって進む。
「ふわぁ…」
「ねぇ、集中して、いつなにがあるか分からないんだから」
「すまん」
カイは眠たそうに二つ目の欠伸をした。
頭の上に灯があるとはいえ、暗がりだと眠くなるのは種族特性だ、厄介だけどしょうがない。
石作りの隠し通路を警戒しながらさらに奥に進んだ。
「出口だ!」
「いっちばーんっ!」
前方に明かりが見えた、自然と足が早くなるのが分かる。
いつものようにフィアナが飛び出した。
我先に飛び出して、足が止まった。
誰かの聞き覚えのある唸る音がする。
「さて…」
「あ、ぅん…」
「みんな、ゆっくりだぞ?」
「ん…」
もうすぐ夕方になろうと言う時刻。
建物だと思っていたその影の形は、竜の姿そのものだった。
完全に竜の射程内。
あと半歩でも動いたらその爪でもその牙でも、もしくはその必殺の吐息に焼かれる。
「こんな所で…」
なにをしても袋小路、その時だった。
「…その眼…」
「シュナ?」
シュナが竜に近づくのが見えた。
恐怖が足を竦ませる、しかし、守ると決めたんだ。
「シュナ!」
外骨格鎧の物理防御を最大する。
防御力場が固まって目に見えてフィールド展開する。
眼前で空間が六角形の力場を形成し構築される。
「ん、大丈夫…」
小さな音が聞こえてきた。
パキ。
パキュ…。
パキキ。
フォーーーン、フォーーーン。
パキ、パキ…。
「ぴぎゃッッッ!!!」
いつの間にか息を呑み見つめていた。
「竜の唄…」
シュナの赤い眼が夕日に映える。
夕日の空に最強の生物、竜の残響と母の眼差しがあった。
「卵が孵った!?」
「こりゃ滅多に見れんぞ!」
フィアナとカイが興奮気味に言うと、何かがピョコっと顔を出す。
幼い竜のあどけない顔、それを舐める親竜。
「そっか…」
唄は仲間同士の符号で、親竜が子竜に送った最初の声掛けだったのか。
大きく嘶き、竜は大空へ。
それに続き子竜が飛び立つ、おぼつかないがそれでも竜の親子は、空に舞い上がり旋回して小さくなった。
「お礼…だって…」
「そうだな、確かに凄い光景だったな」
「ちょ、ちょっと待って!?」
フィアナが息を荒くして、竜の巣に走り寄る。
「も、もしかして…ううん、まさか!?」
「どうしたんだよ?」
「宇宙船よ!」
「はぁ?」
「え、嘘だろ!?」
竜の巣、その下にあったモノがそれだと理解するのに少しかかった。
よく見ると似たような宇宙船の残骸がある。
腐脳兵器の霧のせいで、安心して竜は卵を孵せなかった。
しかし、腐脳兵器を倒したお陰で霧は晴れ羽化した。
あと竜が巣を作り卵を守っていたので、宇宙船は霧に侵食されず奇跡的に残った。
「どうだ、開きそうか?」
「…今やってる、開いた!」
フィアナが暗号扉の解析をする。
古代宇宙船だ、上手くいけば一財産になる。
「…真っ暗だな」
「待って、灯を…」
俺は入り口から警戒しながら中を見た後、一歩踏み出す。
「なッ!?」
「この船、生きてるわ!?」
全消灯されていた通路灯が一気に点く。
「防衛装置の類は?」
「特にないみたい…」
もしかしたら飛行可能かもしれない。む
そんな期待が沸き起こるのを必死に押さえた。
「とりあえず艦橋に行ってみないか?」
「うん、ちょっと期待しちゃうわよね…」
俺とフィアナは、何と無く笑みを交わした。
「ここか…」
警戒しながら歩く、と言うよりは途中からなんだか宝探しの気分だった。
「凄い埃っぽいわね…」
「そんな事よりどうなんだ、動きそうか?」
「待って…やってみる…リアクターは、どうかな…」
フィアナは操作盤を操作する、すると小気味良い振動と共に船体が駆動を始める。
「やったじゃないか!」
「まだね、準備駆動がはじまっただけ…」
「じゃあ動かせないのか?」
「流石に強固なロックがかかってるわ、設備保全運航が精一杯…」
「なんとかならないのか?」
「…あんた達の事は、信じてるけど…」
フィアナは神妙な顔で、俺達を見回した。
「なんだよ、どうかしたのか?」
「宝魂を教えるってのは、お気に入りの水着姿を見せるようなものなのよね…」
「何の話だ?」
「ううん、こっちの話。私の本体だから獲られたら何も出来ないし…」
「いや、そんな事しないぞ?何の話だ?」
「分かってるわよ、それじゃこの船の全制御掌握をはじめるわ」
フィアナは、両耳のイヤリングを外すとコンソールの上に置いた。
フィアナの偽体は、静かに目を閉じた。
『接続完了…それじゃ始めるわよ』
船内の放送機からフィアナの声が聞こえる。
「さて、それじゃ気合入れますか…暗号クリア、バイアス確保、システム掌握…」
「いけるか?」
「…ジェネレータ出力上昇安定、各部チェック、砲塔の一部損傷を確認」
「航行に支障はあるか?」
「航行に問題なし、あとで分解して売っぱらっちゃいましょ、ジェネレーター出力臨界点到達、いつでもいけるわ」
「そういえばこの船の名前は?」
「えっと、ちょっと待って、あった…クレア姫護衛艦『ハイペリオン』…」
「戦闘艦だったのか!?」
「姫護衛旗艦ね、それも造船されたものの終戦まで飛んでいない」
「マジか、姫の処女航海に立ち会えるとは光栄だな」
フィアナは船を完全に掌握したようだ。
「それじゃ、どうするの…艦長さんっ♪」
「あぁ、それじゃ…こほん」
俺は、モニターに映る茜色に染まった空を見据えた。
「『ハイペリオン』発進ッ!!!」
「了解、発進!」
俺達はそこに向かう、見上げた空のその先へと。




