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空を見上げたその向こう  作者: 猫姫
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どんなに求めようとも、毀れるときは壊れるんだった。

「ちょっと…何で私…あんたに抱えられてるの?」

「なんだお姫様抱っこの方が良かったのか?」

「そんなわけあるわけないでしょ!?」

「まぁ、なんだ…落ちてたから拾ったんだが…」

「休んでたのよ!」

「息してなかったから死んでるのかと」

偽体ボディなんだから当たり前でしょ!」

石造りの陸橋を通り過ぎ、白亜の城を見上げる城下街を歩いていると聞き覚えのある声が近づいてきた。

カイとフィアナだ、シュナと二人でそちらに向う。


「カイ!無事か!」

「おうよ、そっちは?」

「そんなことより下ろしてくんない?」

「…お姫様?」

何とか合流できたが、さてどうしたものか。


「それでこれからどうする?」

「…そうだな」

資源発掘チームはいまだ発見できず、このまま帰っても小型飛空挺で回収したログくらいしかない。

もしかしたら、生き残りがいるかもしれないけど今までの状況から生存確率が低い。


「進もう」

「分かった」

俺の決断にカイは頷いてくれた、他の者も反対者はいない。

確率が低くてもいるかもしれない救助を待つ人がいるのなら行くしかない。


「ちょっと待って…あったわ…」

フィアナの声に皆が足を止める。


「足跡…痕跡ね、あの建物の中に続いてる…」

赤い靴跡が点々と続く。


「何人だ?」

「一人、怪我しているようね…」

陸橋にあった足跡と照合、リクレット社の社員が履く靴と靴跡が一致した。


「じゃあドローンを先行させてくれ、安全が確認され次第突入だ」

「りょーかぃ」

フィアナは、宝石人ボックスの首都『イリュジオン』に瞬間帰国アクセス

仮想商店で小型偵察機ドローンを買い、この場に転送した。


「なッ!?」

「フィアナ、どうした?」

「…これちょっと、ヤバいかも…」

「なにがあった?」

「これ見て」

ドローンからの映像を情報映像板タブレットで見た。


スライム。

それは二種類いる。

一つは、下水道や汚泥に住む細胞集合生物。

なんらかの化学物質、もしくは化学反応で突然変異生物クリーチャー化した、低価格の仕事の駆除指定生物。

分裂したりして面倒臭い、臭くて汚い、専用駆除服クリーナーは窮屈と面倒臭い事この上ない。


もう一つは、最凶最悪の物体。

武装機兵サイボーグ殺戮機械バーサーカーなど大量投入された時代があった。

宇宙戦争初期の条約違反とされる生物兵器の数々。

脳だけを機械に積み込み弾頭とした狂気がまかり通った時代、それらの傷跡は星系単位で今も残る。


そんな残された兵器は、再生や修理の機能はついていたが、メンテされないまま稼動できるわけではない。

壊すと言う命令を無限に実行し続けた結果、生態部分は腐れ落ちそれでも無理な自己再生で繰り返す。

機械部品は本来の性能は殆ど失われ、無駄な修理機構だけが残る。


それはまるで生きているように、生物だった事を思い出すかのように暴走する。

周りを侵食し喰らい無意味な癒合をして塊と化す。


「あの霧も硬化蛋白質の砂もコイツの…?」

「たぶん、食べかすね」

「マジか…」

それは戦闘車両だったのだろう、あくまで駆動音からの推測だけれど。

ここの星の兵士達の遺体も取り込んで、騎士盾や騎士槍が生えて棘のようだ。

巨大な黒黄緑色した機械と肉塊の融合が、玉座の前に居座る。


「さて、どうしたものか…」

「御主人様…これ」

シュナの人差し指が差す先に黄色い服の一部。

リクレット社のエンブレムが見える。


「あぁ、もぅ!」

「いくか?」

「全員戦闘用意、あいつと一戦交えるぞ!」

パンっと両手で頬を叩いてから、銃剣ガン・ブラスターを起動させた。


「前衛は俺とカイ、フィアナは支援、シュナは何かあったときのバックアップ…いくぞ」

機甲兵装ナイトランスがあればなぁ、などと考える。

今はあるものでやるしかないか。


「うぉおおぉぉッッッ!!」

銃剣ガン・ブラスターを撃ち込みながら特攻を仕掛けた。

数発は当たるも大半は騎士盾に阻まれる、それでも構わず服の方に走り寄った。

カイもその辺で拾った棍棒で殴りかかってはいるが、いまいちダメージが通らない。


「くッ、かったいな!」

「うおっと!?」

そこにあったのは服だけだった。

散発的に突き飛ばしてくる騎士槍がうっとおしい、慌てて避ける。

銃剣ガン・ブラスターの銃口を展開してエネルギーの刃に変え斬りかかってみたりもした。

しかしフィアナが算出した腐脳兵器スライムの予測耐久値が殆ど減っていない。


「なんか弱点とないのか?」

「御主人様、瓶三つ」

「なッ!?分かった!!」

シュナが何かを投げた、それに照準し引き金を絞った。


「ん、これ…塩か?」

スライムの頭上で弾けたそれは、白い粉を撒き散らす。


「グオォオオォオーーーッッッ!」


「うそッ、効いた!?」

それは咆哮と言うより激痛にのたうつ悲鳴だった。

生態部分にかかった塩がその肉を溶かし崩れ落ち、体表の騎士盾と騎士槍がズルリと落ちる。


「チャンスッ、カイ頼む!」

「あいよッ!!」

手榴弾ハンドグレネードを放り投げると、カイは手に持った棍棒で打ち放つ。

それは見事、塩で溶けた穴に入った。


「に、逃ッ!?」

「みんなこっちだ!」

カイが騎士大盾タワーシールドの一つを掴んだ。

騎士大盾タワーシールドは四人で身を隠すのに十分の大きさ、見た目より頑丈頑強な作りのだったのも幸いした。


「くぅ!?」

目を閉じ耳を塞いだ。

爆発の閃光と破裂し飛び散る肉片。


「ぷはっ!みんな生きてるか!?」

「な、なんとか…」

「もぅやだぁ、帰ってシャワー浴びるぅ…」

「生きてる、不思議…」

兎に角、生き残った今はよしとしよう。


見ると。

そこはもう謁見の間とは呼べない、玉座も何もかもが砕け散っていた。

排水処理場が何倍かマシな光景の前で安堵の溜息をついた。

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