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姫の瓦版




 ほこほこした体で白い着物に身を包み、手まりと一緒に廊下を歩く。

今日は先に水遊びをして、体を冷やしてしまったからと、

龍青様が屋敷で沐浴をさせてくれた。


 ほどよくあったまった体で、お兄さんの部屋に戻ろうとしていると、

床の上に、何やら見慣れない紙が落ちていることに気づく。



「キュ?」



 なんだこれ?


 しゃがみ込んで、折りたたまれた紙に書いてあるものをのぞきこむ。

もしや龍青様のお仕事の紙だろうか、それにしては巻物になっていないな。

龍青様がいつも使う紙は、くるくるっと巻かれていて、

広げると、とっても長いんだよね……。


 もしかして、だれかのふみかな? 

大事な物だったら、持ち主に返してあげないといけないかも。

さて、はたして私に読めるだろうか?


「キュ~……」



 何が書いてあるんだろうと見たけれど、私にはまだ読めない文字がある。

上に持ち上げて下からのぞきこみ、振ってみたけど何も起きなかった。

仕掛けがあるわけじゃないのか……。


 むずかしい漢字、というものがいろんな所にちりばめられていて、

絵も描いてあるし……と思っていたら、私の姿に何か似ているな。

やけに丸っこい龍の子どもが描かれているぞ……?


 ちらっと自分の姿を見下ろす。

いや、本当にお腹はぽっこりしているけどさ。


 ということは、こっちに居るのが龍青様か……。

長い髪をまとめて結ってあるし、着物も似ているし、上手だね。

すん……と鼻で嗅ぐと、匂い袋と同じ香がしないのは残念だ。



「……キュ」


 ほしい。


 右を見て、左を見て……前を見て、誰も居ない。こくっとうなずく。

よし、決めた。とりあえずこれは私がもらっておこう。


 見つけたのは私だからいいよね?

狩りの基本は、見つけた者勝ちだもの。


 龍青様のことが書いてあるのなら、私がほしいし。

今はこれに書いてあるものが何か分からないけれど、

いつか読めるようになるだろう。


 周りをきょろきょろと見ながら、今のうちに私のお部屋に持って行って、

後でゆっくりじっくりと見ようと思っていると……。



「――姫? どうした?」


「キュ?」



 振りかえると、そこには追いかけてきた龍青様の姿が。


 まずい、もう見つかったぞ!?

私は飛び上がって、ひろった物をささっと後ろに隠した。



「……姫? 何を隠したんだい? ほら、お兄さんに出してみなさい」


「キュイイ……」



 私が隠したものに気づき、手を出してくる龍青様。

だめ、これ、私の、私がもらうって決めたの。

ぷるぷると首を振って、それに抵抗する。


 でも、あっと言う間に龍青様に取り上げられた。

ひどい、龍青様の紙、私だってほしいのに! ……なんて言いながら、

両手を上に伸ばしたまま、ぴょこぴょこと飛んで、

ちょーだいちょーだいと抗議してみると。



「これは……」



 龍青様はその紙に書いてあるものを読んで、顔色を変えたではないか。



「……キュ?」


 龍青様は侍従のお兄さんを呼びよせると、こう命令していた。



「おい、屋敷に居る者達をすぐに集めろ。話がある」



 私はそのまま龍青様によって抱き上げられ、部屋へと連れ戻される。

なんだ。一体何が起きているんだと思ったら、

私はあの紙に書かれていることの内容を知ることになる。



※  ※  ※  ※




「――……く、公方様、全員そろいました」


「うむ」



 そうして一斉に部屋の中へと集められたのは、

女房のお姉さんや、侍従のお兄さん、おじさん、おじいちゃんまで、

このお屋敷で働いている、家臣のみんなが所狭しと集まっている。


 中には、この状況をよくわかっていなくて、首をかしげる者、

何やら心当たりのありそうな者は、顔をちょっとうつむけている。

龍青様の反応を見るに、もしや大変な事なのかもしれないなと、

私は幼心にも思った。


 みんなは両手を床に付けながら、

龍青様に向かって深々と頭を下げているんだけど、

私には、なんで龍青様が怒っているのか分からなかった。



「さて、来てもらったのは言うまでもない。

 これに見覚えがある者が居るだろう? 聞きたいことがある。

 知っている者は正直に答えるんだ。」



 みんなの前に差し出されたのは、さっき私がひろった紙だ。



「桃姫様特集と書いてある。

 水神、公方様の婚約者はまだ幼い龍の姫君、

 小さな桃姫様の初恋のお相手は、我らが公方様、

 幼いながらに公方様を見つめるその姿は初々しく、

 日々、公方様のお膝の上で愛の語らい……誰が作ったこんなもの」


「キュ?」


 なんだそれ。そんなことが書いてあるの?


 私は膝の上から紙を受け取ろうとしたが、

龍青様がそれを上に持ち上げてしまった。


 ずるい、私も見たいのに! 

抗議のためにお兄さんの着物をくわえて引っ張るが、

それでも見せてはくれなかった。



「あ、あのそれは……」


 いつも私の世話をしてくれている女房のお姉さん達があわてている。

そういえば、このお姉さんは「えごころがある」とかで、

よく私に絵を描いて見せてくれたり、お絵描きを教えてくれるんだ。



……あ、じゃあお姉さんが描いたのかな、この絵。



「公方様、後生です!」


「この変哲もない水の底、

 公方様の許しがなくば外の世界も知らない私達は、

 刺激が、そして癒しが切に欲しいのです!! 」


「そんな時に現れた桃姫様は、まさに今の環境を打開する唯一の光!

 めぐる季節と安らぎを、この水の底に運んでくださいます。

 それに姫様のお傍で働けぬ者も多くいるため、

 苦心の末に、姫様のことを記した書にございます」



……よくわかんないことも言っているような気がするけど、

私が世話になるようになって、陸の花とか木の実とか持ってくるから、

水の底に暮らすみんなは喜んでくれていたらしい。


 なるほど、つまりこれは私の事がくわしく書かれたものなのか、

龍青様の持っている紙にようやく顔を近づけて見る……うん、わかんない。

やっぱり字のお勉強をもっとしなくちゃいけないみたいだね。


「キュイ」



 龍青様が言うには、あの落ちていた紙には、

お兄さんに仕えて居る家臣の中でも、私のことを知らない者も居て、

それで私に一度会いたいと願っている者がいると書いてあったり、

前に行った海の中の従者たちも、私を見かけた時のことが書いてあるそうだ。



 作った理由と言うのは、私が海の上にある社に龍青様と行った時、

すぐに帰ってしまったからだそうで……。



(……だって、あの時は龍青様が死んじゃって大変だったもの)



 そう、私にとっては、それどころじゃなかった。

居なくなったお兄さんを追いかけて行ったら、人間に襲われて、

命からがら逃げだした先で、龍青様を助けに行っていたし、

戻って来た時はぐったりして眠ってしまったものね。


 あれ以来、私は人間に怯えていたので、

海の上の社には行っていなかった。

初めて行った場所で、それなりに気に入っていたんだけどね。



 あの時にくわしい話を教えたのは、限られた者だけらしく、

それを知らないやしろや海に暮らすみんなには、

何か自分達が失礼なことを私にしていないかと、

とても心配しているのだそうだ。


 

 だから海に住む眷属たちにも、

私の事をよく知らせようということで、これが出来たんだとか。

私の好きな物、嫌いな物、怖がることを含めてだ。



「だからと言って、これは娯楽だろう? 娯楽で姫を使うな」



 その間に、ハクお兄ちゃんが私と龍青様の分の麦湯を運んでくれる。

私の好きな花の蜜は入っている? としっぽを振って聞いてみたら、



「ああ、ちゃんと入れてやったぞ。

 まったく、甘味は貴重なんだからな、ありがたく飲むんだぞ」



 そう言われたので、しっぽを振りながら小さな器を両手で受け取った。

私のお気に入りのうさぎの絵が描いてあるものだ。

でもちょっと熱かったので、ふうふうしてとお願いしたら、

ハクお兄ちゃんの代わりに、龍青様が茶器を受け取って、

ふうふうと息を吹きかけてくれた。



「ぬ、主様、そんなこと、ぼくがやりますから……っ!」


「いいんだ。ほら、姫、これでいいか?」



 受け取って、私もふうふうする。

そして静かにこくこくと飲み始めた。

うん、おいしい。



「ちびすけ、主様の召し物を濡らしたりするなよ?」


「キュイ」



 ふう、やっぱり龍青様のお膝の上で飲む麦湯はいいな。

そう思っていると、目の前で座っているみんなが、

ほうっとした目で私の事を見つめてくる……。

なんだ?



「で、これは一体何の騒ぎですか? 主様」



 途中でやって来たハクお兄ちゃんに、龍青様が持っていた紙を見せる。



「姫の様子が書かれた紙が、従者や眷属の間で出回っていたらしい」



 ハクお兄ちゃんは隣に座り込んで、この話に耳を傾けているけれど、



「……ぬ、主様の絵姿まであるのですか!? ぼくも欲しいです」



 龍青様が持っている紙をじいっと物欲しげに見ているではないか。

ハアハア言いながら目を輝かせているハクを見て、

龍青様はまたも取り上げて、溜息を吐いた。



「だめだ。というか、俺が言いたいのはそこじゃない」


 そうだよ、だめだよ、これは私のなんだから!

ハクお兄ちゃんにキュイキュイと抗議した。

私が見つけて、ひろったんだから私のなの。


 そしたら、ハクお兄ちゃんが私の方をぎっとにらんでくる。



「なんでだよ、ちょっとぐらいいいだろ?

 おまえいつも、主様から何かしらもらっているじゃないか」


「キュ!」



 龍青様に関係するものは、み~んな私のものなのだ!

お兄さんの絵があるから、私だってほしいんだもの。

私は茶器を龍青様に渡すと、お膝から降りて、

この絵姿を描いた女房のお姉さんの所に行き、

着物をくいくいっと引っ張りながら、龍青様を指さして、

キュイキュイと鳴いた。



「ひ、姫様?」


「キュイ? キュイイ、キュイキュイ」


 あのね?お兄さんの絵姿、もっとほしい。もっと大きい絵の。


 ぴょこぴょこ飛んで、ほしいとおねだりする。

描いて、いっぱい描いて。



「えっと……もしや公方様のものが欲しいのですか?」


「キュ!」



 そうだよ。龍青様がもっと書いてあるものがほしい。だから作って。

両手をそろえて前に伸ばす。おねだりの時にするものだ。



「公方様……姫様はものすごく欲しがっているようですが」


「とにかくだめだ。それで姫にもしものことがあったらどうする。

 姫はただでさえ色目の珍しい子どもで、人間やあやかしに狙われやすい。

 外部から身を守るには、内々でもあまり情報を流さない方がいいだろう。

 情報を聞きつけ、姫を狙う輩がまた出たらどうするんだ」



 ぼそりと「それに、また姫を嫁にと狙うヤツが出てきたら困る」と、

龍青様は言って疲れた顔をして見せた。



「――まあ、ちょっとぐらいは大目に見てやってもいいんじゃねえか?」



 そこへ、酒瓶を持ちながら、ミズチおじちゃんがやって来た。

すでに顔を真っ赤にしているあたり、どこかで飲んできたのだろう。

おじちゃんが私の方を見て、「おし、来い嬢ちゃん」と両手を広げてきたが、

お酒臭いので、今日は全力でことわった。


 すたたーっと足元をすり抜け、龍青様のお膝の上によじ登り、

お兄さんの着物にしがみ付く。顔をうずめて匂いをこらえた。

お酒の匂いはやっぱり苦手だ。お兄さんの匂いの方がいい。すんすん。



「お? 今日は振られちまったか」


「ミズチ……姫が嫌がるから、

 ここへ来るときは酒の匂いをまとわせてくるなと何度言ったら……」


「まあまあいいじゃねえかよ。

 嬢ちゃんもいつか婚儀をやる際には、酒を飲むことになるんだからよ。

 少しずつでも慣れておいた方がいいんじゃねえかな?

 それより、おまえの従者達は、おもしろい事をやっているじゃねえの」



 龍青様が持っていた紙を取り上げると、代わりに酒瓶を床に置いて、

顎に指先を当てながら奪った紙を見ながら、にやっと笑う。



「ほお、こりゃまた良く描けているじゃねえか、

 俺様の嫁もいつか描いてくれねえかな」


「おい」


「まあまあ、嫁になる娘が家臣に好かれているのは良いことだからよ。

 俺様の前妻の時は、従者たちと折り合いが悪くてなあ……。

 今でも可哀そうなことをしたと思っているんだ」


「キュ……」


 そういえば、ミズチのおじちゃんの前の嫁は、

絵姿も残してなかったと言うな……。



「その点、嬢ちゃんは家臣の者達には可愛がられているようだし、

 少しくらいは大目に見てやっても……」


「――そういえば、おまえの所の眷属が、

 そもそも姫に悪さをしていたことがあったな」



 なんて言ったかなあ……と、

龍青様がミズチおじちゃんを見ながら言っている。

こつこつと文机を指先で触れながら、ほんの少し前のことを話しだした。



「あれはそう……俺の姫にひどいことをした蛙だったな。

 確かあいつは、飲んだくれの、女ったらしの、水神の眷属だったはず。

 もしもあの時、絵姿でもあれば姫は悪用されていたであろうな。

 どこぞの水神が、あの時に酒も飲まずにしっかり働いてくれれば、

 姫も怖い思いをせずに済んで――」



 私は龍青様のお膝の上で、

げっこげっこ鳴いていた蛙のおじさんを思い出した。

この私を檻に閉じ込めて龍青様に売りつけようとしたやつだ。



 お陰で私は今でも蛙が苦手だ。郷にある田んぼや川の近くに居た時は、

いつも飛び上がって逃げ出している。自分よりも小さな存在でもだ。

私の目の前に居た時は、キュイキュイ泣いて助けを求めたくらいだぞ。


 その時は緑王が助けてくれた。


『同じ緑なのに、なぜ余よりも怖がるのだ……解せぬ』と、

とても不思議がられたけど、怖いものは怖いんだよ。



 そんなわけで、本当なら私はミズチおじちゃんの氏子だったから、

もし眷属の者が見つけたら、私をミズチおじちゃんの所に連れて行って、

守ってあげなきゃいけなかったらしいし。



「……っぐ、そ、それは……」


「家臣や眷属を信頼するのは結構だ。

 だがそのせいで、主や氏子を軽んじた結果があれだった。

 少しは自制させないと、また姫のような子どもが、

 あのような被害に遭うかもしれないだろう?」



 龍青様が私の頭の上にぽんと頭を置いて、なでてくれる。

私はうれしくなって抱き着いて、もっとなでてとおねだりした。


 すると龍青様の話を聞いて、顔色を変えたミズチのおじちゃんは、

身なりを整え、視線をそらしながら咳払いをする。



「そ、そそそそそうだな、やっぱこういうのはちゃんと止めなきゃなあ?

 自分の身内を疑うのは良くないとは思うが、前例があるしな。

 それ言われちまうと俺様としても辛いな……はあ」


「キュ?」


「そういうわけで、姫の書かれた紙は全て回収し、処分することを命じる。

 俺についての絵姿も、今後の事を見すえて無しだ。よいな?」



 残念そうな顔をした家臣のみんなに、龍青様はうなずいた。



「皆が姫を思い、理解してくれようとしたのには感謝する。

 だが、姫がそれで怖い思いをしたらと思うと、俺はこの件を許容できない」



 こうして、私が書かれた紙は全て集められ、焼かれることになった。

跡形もなく残さないようにしないと、

どこからか手にしたものが私の存在を知り、

私の好みとかを利用して、悪さをするかもしれないと言うことで、

みんなみんな、無くさなきゃいけないんだって。



「姫、よしよし」


「キュイイイ……」



 お兄さんのことも、書かれていたのに……。


 すんすんっと鼻を鳴らしながら、燃えていく紙の束を見つめる。

せめて一つだけでも残しておいてほしかった。


 燃やしているものに私が飛びつかないようにするため、

私は龍青様に抱っこされていたので、しっぽをたらんと下げながら、

その燃えていく様子を見る。


 だから、消し炭にされていっても何も出来ない。


 でもこれが、私と同じように、

龍青様の弱みが私だってことを誰かが知ったら……。

また怖い人間が、お兄さんや私に何もしないとは限らないと言われ、

私はこくんとうなずく。



 私のせいで龍青様が傷つくのはいやだ。前みたいに死んじゃうのも……。


 だからその代わりに……私はあることをお願いした。





※  ※  ※  ※




「――……ほら、姫。できたぞ」



 私は龍青様に水球で、お兄さんの姿を映したものをもらった。

前に黄泉の世界で龍青様のとと様が、龍青様のかか様の姿を映したものを、

土産としてお兄さんにあげていたことを思い出し、

同じようなものが欲しいと、龍青様にお願いしてみたんだ。


 受け取った私は、水球に映った龍青様を見てしっぽを振る。

すごい、こっちの方が本物の龍青様に見えるね。



「姿写しの術を使っているからな。本物の姿を映してあるんだよ。

 鈴の中にしまっておけば、見たい時に見られるよ」


 仕上げにまじないをかけ、

私以外のものが勝手に見ようとしたら消えるようにしてくれた。



「キュイ」


 代わりに、私の姿も水球に映してもらい、

お兄さんの髪につけている鈴にしまいこんだ。

これでお互いに、寂しい時は姿を見ることができるね。



「……姫の絵姿を残しておきたいと言うのは、俺も気持ちが分かるからな。

 子どもの頃の姫は、今しか見られないから」


「キュ?」



 頭に触れる龍青様に、私は目を細めて顔を見上げる。



「姫の成長をこうして残せるのは、俺だけの特権だ」


「キュイ」



 そうだね。私のことを龍青様が一番覚えていてくれるのがうれしい。



「……」


 ふと、ある事を思いついた私は、龍青様の顔を見上げる。


「キュ」


「姫?」



 あのね? いつか、私が郷から本当の巣立ちをして、

とと様とかか様にお別れしなくちゃいけなくなった時、

私の両親の姿を映してくれたものがほしいな。


 すると龍青様は静かな声で「……いいよ」と言ってくれて、

私の事をぎゅっと抱きしめてくれた。



「その時には、姫が暮らしていた頃の郷の姿や、

 郷の仲間の姿も残してあげるからね。

 姫が寂しがった時に、いつでも思い出の中で会えるように」


「キュイ」



 そんな日が来るのは、まだ小さな私には全然想像も出来ないけれど、

何かを残すものが悪いことばかりじゃないよねって、この時思ったんだ。


 ゆっくりと時間が流れていく水の底、

少しずつだけど、私と周りが変わっていくのを感じながら……。


 大すきなお兄さんの腕の中で、私は今日も幸せにしっぽを振った。











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