安全の進化
当社には、国鉄から積み重ねてきた安全の歴史がある。仕事を教わりながら、その重みを日々感じ入る。だからこそ、現状の継続は必要だが、今までに実現していない変化や成長を作業員に要求しても大きく安全は進化しないとおもう。
一方で現場以外はどうだろう。人は誰でもミスをする。では、当社には毎年発生する事故の件数に見合ったヒヤリハットの報告が上がっているだろうか。私は報告を受ける立場にないため実数は知らないが、おそらく上がっていないと感じている。周囲でヒヤリハットが話題になることがほとんどないからだ。原因は、報告するメリットよりデメリットが上回ることだけではない。社内の雰囲気や、報告に対する会社の対応にも問題があると考える。
一件の重大事故の背後には、その何倍ものヒヤリハットが潜んでいると学んだ。ならば、ヒヤリハットのデータは会社の財産である。それを得る機会を逃している現状は、事故の芽を見つけて手を打つ機会を、私たち自身が手放していることになる。
また、入社して半年ほどの間に、規則から逸脱する上位職の言動を複数回目撃した。内容は大きな事例ではなく、本人も気づいていないかもしれない。しかし、私はそんな度胸もないし、周囲も誰も指摘しなかった。上位職に相談しても上手にはぐらかされたという話も聞く。指摘しにくい空気が、ヒヤリハットの報告を妨げる土壌と同じであることを示している。
「中期ビジョン2034 SINKA」が掲げる持続的な成長には、組織の「SINKA」が欠かせない。その本質は、先輩と後輩、上司と部下、ミスの多い人と少ない人、すべての人が互いに敬意を持ち、気づいたことを立場に関係なく言い合える環境をつくることである。ヒヤリハットを報告しても責められず、上位職の逸脱にも気軽に声をかけられる。その安心感があって初めて、事故の芽は早く見つかる。
この取り組みに設備投資は不要で、当社の安全をさらに進化させる最も身近で確かな一歩だと確信している。




