表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/53

物差し

「ペポってさ、意外とデカいよな」


 コタツを囲み、お菓子をつまみながら好き勝手している放課後。

 膝上の部長がふと俺を見上げ、そんなことをつぶやいた。まぁ、身長のことだろう。


「平均よりはそうなんじゃないですか? この前の健康診断だと179センチでした」


 来年には80センチ超えを期待したい。あるに越したことはないからな。


「ほほぉ、私と33センチ差か」


 感心したように両手をぐぃーっと挙げ、もたれかかりながら後頭部に触れてくる。


「定規ひとつ分ですね」

「だな。まー、さすがにもう伸びないだろ私は。離されてくだけだ」

「何かこう、かかとの高い靴とか履いてみればまた印象もちがうんでは?」

「わかってねーな、お前。そんなん背伸び通り越して悪あがきだろ。な、りーぽん」

「ああいうの、基本的にはさらに良くみせるためのものですよね」


 文庫本から視線を外さず、里奈は答えた。部長が「うむ」と力強く首を縦に振る。


「足に自信があるならありだと思うけどねぇ」

「足かー、じゃあダメだな。私はむしろ手に自信ありだ」


 ぱっ、と部長が両手を開いた。後ろから失礼して手を取り、観察してみる。

 たしかに肌荒れとかもまったくなく、とてもきれいな手をしていた。


「あー、なんだかそれ。えちぃねー」

「まぁ、ゆーちゃんの場合。そんなのなくても背徳感で何ぱ――」

「えちくないから! 健全だからっ!」


 すぐそういう話に持っていこうとする千雪先輩と菫先輩に、部長が食い気味で反論する。


「でもたしかにきれいですよ、部長」

「ひょっ!? う、ぁ……そ、そっか。そっかそっか」


 びくりと一瞬、もたれた背中を離す。けれどややあって、またもたれかかってきた。


「ちなみに先生は舌が器用なのよね! ねぇ、皆知ってたっ!?」


 古賀ちゃんが何か言っている。ほんの少しだけ妙な沈黙が流れ、部長が、


「そういや今日、来る時。ちょうど足を出したところにカラスのフンが降ってきてさ」

「それは危なかったねぇ」

「わたしたちはいつも通り送ってもらってるからー、そういうのないねー」

「うんうん。ペポくんとりーちゃんは普通に徒歩だものね」


 俺と里奈は「ですね」とそろって相づちを打ち、最初の発言者に目を向ける。


「……どぉぢでなのぉ」


 やっぱり、先生は泣いていた。よくもそんな簡単に涙が出せるものだと感心する。

 カラスのフンに敗北したので気持ちはわからなくもないが、まぁ日頃の行いだ。

 話の方向性を変えたい部長はともかく、ふたりがいつも通りに塩対応すぎるけど。


「ど、どれくらい器用なんですか?」

「波瀬ざぁん」

「う、うわっ。き、汚い……」


 さすがにかわいそうと思った里奈が耳を貸し、涙と鼻水をこすりつけられていた。

 しばらくして千雪先輩が、椅子ふたつと15センチ定規を持ってきて言う。


「というわけでここはひとつ、ゆーちゃん以外にしかできないことでもしようか」

「どういうわけですか……」


 ピンときたらしい菫先輩以外は、きょとんという感じだった。

 ちょいちょいと手招きされた里奈が、困惑したように椅子へ腰をおろす。そして、


「えいっ」

「ひゃぅわっ!?」


 ふにゅり。先っちょが沈み込む。千雪先輩はつついたのだ。里奈の胸を、定規で、何度も。

 いつの間にか助手についていた菫先輩が「むむっ」と唸り、目盛りを読み取っていく。


「りなりなー、記録5.6センチー」

「なっ、ななな、何するんですかーっ!?」


 赤面しながら胸を両手で隠し、しゃがみ込む流れで椅子から転げ落ちていった。


「千雪、あってもいいと思うんだよねぇ。おっぱいのやわらかさを示すものが。だから試しに定規が何センチ沈むかで、固乳か軟乳かを判定してみようかなぁと」


 不真面目なことを真剣に語っていた。ふと目が合って、定規が差し出される。


「はい、なのでペポくん先生。あとはよろしくお願いするねぇ」

「よろしくしないでくださいよ……先生ならここにいるじゃないですか、一応」

「えーっ。ひとみ、むずかちいことわかんなーい。ちぇんちぇ、あたちのもちらべてー」

(こ、こいつ……)


 期待感に満ちた古賀ちゃんが椅子に座る。オムツ穿かせるぞ、このやろう!

 じーっ、と部長が見ていた。けれどすぐ千雪先輩に拘束され、連れていかれた。


 きっと俺がやるまで粘るのだろう。それに定規で触るくらいなんてことないはず。

 諦めて定規を受け取り、大きなお友だちの前に向かって、深く考えず押しつけた。


「――ぁんっ。は、波瀬くん……ね、狙ったでしょう?」

「そ、そんなことしませんってっ」


 ピンポイントで当ててしまったらしい。びくりとして素に戻り、ジト目を向けてくる。


「えー、記録。4.5センチかなー」

「ふふっ。あたしってば、しこいわね」

「うるさいよ」


 自分の胸を揉みながら、古賀ちゃんはコタツに戻っていった。次は菫先輩の番らしい。


「せんせーっ、よろしくお願いしまーす」

「え、いやっ、あの……」


 先輩が座ったのは俺の膝上だった。首の後ろに両手を回し、まっすぐ見つめられる。

 吐息がかかるほどの距離。唇に視線を奪われ、部長とはちがうシャンプーの香りがした。


「あっ、ざんねーん。5.3センチだってー。負けたー」

「……ぇ」


 目と鼻の先で顔がぴたりと止まり、ここまできてようやく定規の感触を実感する。

 からかいの笑みが離れていく。それがどうしようもないほどにくすぐったい。


「や、やめてくださいよそういうのぁぐえぇえええっ!?」

「やめるのはお前だ、ばかもんがああああっ!」


 部長に背後からヘッドロックを決められた。後頭部がこすれ、摩擦熱を感じる。

 とっさの抵抗だった。手にあった定規を、部長の平らで慎ましい台地に突き刺さす。

 菫先輩が「記録1.5セ……あ、これ乳首の長――」と言った瞬間、俺の意識は途絶えた。



 ――以下、おまけ。


 里「あのー。そもそもなんですけど、弾性係数? がもうあるんじゃないんですか?」

 先輩他「はぁ……」

 里「な、なんですか? そんな。たしかに予習しただけの知識ですけど……」

 菫「理解わかってないねー、りなりな」

 千「だねぇ。魔術に異能、転生やオタクに優しいギャル。そういったフィクションが受け入れられるのに、巨大ロボとかリアリティがないって笑うくらい理解ってないねぇ」

 瞳「ホントホント、波瀬さんはロマンを何だと思ってるの? あのね、もっと下半身でモノを考えられるようにならないとダメよ? それが女になるってことだもの」

 里「そ、それが大人の言うことですかっ!」

 瞳「大人だから言うのよ。あ、じゃあさ。ちんこのエンゲル係数みたいなのも決めない?」

 菫「えー。でもちんこ有段者、ここにいなくなーい?」

 千「男性器なら一応、ここに転がっているのだけどね……」

 里「お、おしまいっ! この話おしまいです! ゆ、由真先輩もそう思――いないっ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ