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0124 うん、覚めたよ



 バッシィ! 「こんの、大バカもんがぁ!」と、アウラに思いっきり扇子で頭を叩かれているのはルキウスだ。



 「ご、こめん……」さすがにルキウスも反抗できず、素直に謝る。



 ステラがミアから竜眼の力を取り去ってから、ルキウス、フェリシア、ルカ、ミアの四人は一旦もとのルカたちの家に戻った。疲れ切っていた四人は、そのまま泥のように眠りこみ、気づいたらもう昼近くになっていた。そして、持っていた食料で食事をすませると、ルカとミアをレオーネ家に連れてきたのだ。



 屋敷に戻って早々ルキウスとフェリシアは、アウラに「ちょっとこっちこい」と、じとっとした目で睨まれてアウラの自室に連行された。



 「ごめんじゃない! ほんとなあにをしとるんじゃ」バッシィ! バッシィ! バッシィ! と三連発。それでもルキウスは、シュン、としている。



 連行されたルキウスたちにアウラは、開口一番「お前ら、ステラちゃん家を出たそうじゃな?」と言われた。バレてる……。元々隠すつもりはなかった、というか言わないとルカたちのことも話せないので、話すつもりでいたのだが、先手を取られた。そして、ルキウスが順をおって説明を終えると同時に、バッシィ! といかれたのだ。



 「なんですぐに相談にこんかった? あんな小さい子を連れておまえらだけで、竜眼主や竜眼狩りから守れると思っとったのかぁ」バッシィ! とまたやられた。



 「はい、すいません……」何度叩かれても文句は言えない。横にいるフェリシアもさすがに何も言えず、大人しく頭を下げている。



 今日ここに来るに当たって、ステラはアウラたちに自分の『殺さずに竜眼主から力を奪う術』のことを話してもよい、と承諾をしてくれた。



 ステラは、『皆さんを巻き込んでしまった以上、隠しているほうが問題を大きくしご迷惑をおかけすると、今回の件でよくわかりした』と、最低限の関係者には術のことを打明ける覚悟を決めたのである。



 コン、コン、コンとドアがノックされ、「失礼いたします」とオスカーが入ってきた。



 「あの子らはどうじゃ」とアウラがオスカーに訊いた。



 「はい、なかなか素直でいい子たちですな。もうノエ、ジョイ、リアの三人と仲良くなって一緒に遊んでおります」とオスカーがニコリと笑って答えた。



 「そっか、そりゃよかった。うん。あの子らをウチであずかる件は了解した」とアウラ。



 「ほんと、ばあちゃん。ありがとう!」ルキウスが嬉しさのあまりアウラに抱きつくと、「やめーい!」と怒鳴られて、バッシィ! バッシィ! バキ! と最後は扇子が折れた。



 「そんな話を聞いてほっとけんじゃろ。さて、しかしどうするかのぉ」と、アウラが難しい顔をする。



 「あっ、もしかして、昨日僕とルカが襲われた竜眼狩りの件?」とルキウスが訊くと、「いや、あれはもう解決した」と、アウラがオスカーの方をチラリと見て、答えた。



 「解決した?」意味がわからぬルキウスとフェリシア。



 「はい、昨日坊ちゃまたちを襲ったオッターヴィオなるゴロツキが率いていたクソッタレの集団ですが、もう殆どの者が死にました。生き残っている者もいるでしょうがザコばかりでしょう」結構酷い話をさらっと話すオスカー。



 「殆どが、死んだ? どういうことなの?」驚いて訊くルキウス。



 「ええと、ですね。まず、乱闘現場に聖竜軍が現れた件ですが、あれは止めにきたのではありません。表向きはそうなっておりますが、実際はヒリュウ霊様からの勅命による粛清です」とオスカー。



 「勅命による粛清! ち、ちょっと待って、冒険者、僕を助けに来てくれ冒険者の人たちはど、どうなったの?」あまりのことに焦ってオスカーに取りつくルキウス。「坊ちゃま、落ちついて。冒険者の皆さんは無事です。誰一人亡くなったかたはいらっしゃいません」「ほ、ほんとに、ほんと?」「はい、間違いございません。まあ、ケガをした方はいるでしょうが、全員ご存命です」安心なさい、とオスカーはルキウスの肩に手を置いて椅子に座らせた。



 「よかったあ……」顔に両手を当てて大きく息を吐き出し、心底安心したと力を抜くルキウス。



 「でも、いくら竜眼狩りとはいえ、ヒリュウ霊様から粛清の勅命って……ビタロスでは竜眼狩りが禁止されてるからですか?」フェリシアが尋ねた。



 「いや、それは関係ないじゃろ。それなら国王の命令で王国軍が動く。聞いた話だと、治安局が出動しようとしたときに命令が待機に変わり、聖竜軍が出動したらしい。そやつらが何をやったのかはわからんが、恐らくは逆鱗に触れたんじゃろうな……」アウラはここで一度口を閉ざし、少し間をあけると「実はな、オスカーにも密命が降りたんじゃ」と、声をひそめて続けた。「⁉」息を呑むルキウスとフェリシア。



 ヒリュウ霊からの勅命と密命は、どちらもヒリュウ霊からの絶対命令のことなのだが、性質が若干異なる。勅命は、祭祀所の巫女が正式にヒリュウ霊から勅命を受け取り、聖職者に伝え各所に伝達される。但し、祭祀所関係者以外の一般人に公開されるかは内容による。密命もヒリュウ霊から命令を受け取るのは巫女であるが、その命令は秘匿されヒリュウ霊が指定した個人や団体に直接伝えられる。伝えるときに聖職者を使者にたてるときもあるが、それもヒリュウ霊が指定したときのみに限られる。すなわち公にできない内容に対する秘密の命令である。



 「そ、それ僕たちに言って大丈夫なの?」恐る恐るルキウスが訊いた。



 「お前らが、ここにいる者以外に喋ったら命はないじょろうな」あっさりと言うアウラ。



 「だ、誰にも言いません……」ルキウスもフェリシアも固く心に誓った。



 「そういうことじゃから、そいつらが襲って来ることはもうないじゃろ。じゃがの、人の口に戸板は立てられん。ゴロツキどもが死ぬ前に他に喋っとる可能性がある。オスカーが調べたところによると、お前を襲った連中は竜眼狩りではないそうじゃ」



 「えっ? じゃ、なんだったの?」ルキウスが問うた。



 「どうやら連中は、竜眼狩りのヤツらから頼まれてあの子らを狙ったらしい。じゃがの、元々はあの子らと指定してではなく、竜眼の関係者を見つけて渡してくれたら金を払う、という話だったらしい。それで、ゴロツキどもがあの子らに目星をつけて襲ったんじゃが。ゴロツキがその依頼をしてきた竜眼狩りの連中にどこまで話をしたかが気になる。オスカーが直接聞いたヤツは、どこの誰かまでは話してない、と言ってたらしいが、全員から聞いたわけではないからのぉ」と、腕を組みをし難しい顔をするアウラ。



 「大奥様、あの方のお力をお借りするのがよろしいのではありませんか?」進言をするオスカー。



 「やはりそれしかないかのぉ」アウラは難しい顔をしたまま、やむを得ん、と不承不承ながら同意をした。



 「あの方って誰?」と、訊くルキウスに、「あっほか、お前らに言えんから『あの方』って言うとるんじゃろが。ちっとは頭を働かせぇ」と、叱るアウラに(言えないのなら目の前で言うなよ)と文句を言いたかったが、今日は立場が弱いのでやめた。



 「まぁええ。あの子らのことは任せえ。しばらくは屋敷の外に出せんが、『実はあの子らは竜眼主とは無関係だった。ゴロツキどもの勘違いだった』という情報操作が浸透したら、学校にも通わせよう」と言ってから、アウラは姿勢を正してルキウスを真正面から見据えた。



 「さて、あの子らの話は終わった。今度はお前じゃ、ルキ。ステラちゃんはどえらい力を持っとる。その力、少しでも漏れればあの()は、半世界中の竜眼主や竜眼狩りから狙われるやもしれん。わしは話を聞いて、それぐらいの力じゃと思うた。どうする、ルキよ」


 

 「ど、どうするって……どうすれば、いい?」



 「はぁーっ……なっさけない。オスカー、こやつの頭をぶん殴ってくれ!」



 「はい」と、返事をするが早いかオスカーが、ガツン! と思いっきりルキウスの頭を殴った。「ル、ルキウスさまー!」と叫んでフェリシアがルキウスの頭を撫でながら「お父様、もう少し加減をしてください」と、文句を言うが「い、いや、いいよフェリス。うーん……い、いまのはきいた……」相当痛かったのか、顔を思いっきりしかめて痛みに耐えるルキウス。



 「どうじゃ、目が覚めたか?」と容赦のないアウラ。



 「……うん、覚めたよ」痛そうな顔はそのままだが、目は、ラン、と輝いていた。




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