0121 こらからのことについて
「あの子たちのこと、どうしますか? お嬢さま」アリアとアンナ、そしてコロと一緒に遊んでいるルカとミアを見ながらグレタが訊いた。
ステラは難しい顔で四人と一匹を見ながら「できれば、ウチであずかりたいのですが……」と、グレタに答える。
「……お気持ちはわかります。俺も、正直そうしたい……だけど」そこまで言ってジョルジョは口を閉じた。
「難しい……ですね。ビタロスに来て三か月ちょっとになりますが、今になって急に二人もの竜眼主と遭遇しています。もしかしたら、これからその機会が増えるかもしれません」とグレタ。
「……そうですね」ステラもそれが気になっていた。いつ他の竜眼主に襲われるかもわからない状態で、あんな小さな子を二人もあずかるのは、厳しい。正直、守り通せるか、自信がない。それに、今回の一件には竜眼狩りも絡んできた。また同じ連中が襲ってこないとも限らないし、それ以外がくるかもしれない。『ビタロスでは竜眼狩りが禁止されている』など、何の意味もないとはっきりした。グレタにはいつも、何があるかわらないから十分注意するように、と厳しく言われていたが、それが現実として示されてしまった。
「あの……」ルキウスが俯きながらおずおずと声をかけた。
ルキウスは、子供たちやステラたちとも少し離れた場所で、自分の愚かさに打ちひしがれていた。フェリシアは「知らなかったのだから、しかたありません」と、慰めてくれたが、ルキウスは、もう自分で自分を斬りたい! ぐらいに、自身の情けなさとステラたちへの申し訳なさに苛まれていた。
「あの、僕が……あの……」口ごもるルキウス。ステラたちは、黙ってルキウスを見つめ、言葉を待つ。「すうっー」ルキウスは、強く息を吸って覚悟を決め、「あの、ルカとミアのことは、僕に任せていただけませんか?」と切り出した。
「任せる、とは?」ステラが聞き返した。
「あっ、はい。その、ウチには、ルカやミアのような境遇の子が、他にもいるんです。い、一緒に暮らしてます。家族として……。それに、実はルカから聞いたんですが、ルカたちは母親がいなくなってから祭祀殿に行ったらいんです。施設に入れて欲しいと……だが、断られたそうです」ここでようやくルキウスが少し顔を上げた。
「えっ? ……そ、それはほんと何ですか!」ステラが声を大きくして聞き返す。グレタとジョルジョも本当に驚いた顔をしている。
「はい。僕でさえ信じられないのですから、皆さんはもっとだと思います。ですが、ルカははっきりとそう言ってました。それに、グレタさん、あの貧民街にいかれたのなら、様子がおかしいと思いませんでしたか?」と、ルキウスがグレタに尋ねた。
「……そう言えば、他の貧しい国でもあまり見ないような、完全に気力をなくした方が多かったような……」と、記憶を辿りながら答えるグレタ。
「はい、そうなんです。僕は貧民街に出入りする機会が殆どないので、今回驚きました。以前はあそこまで酷くなかった。皆さんならよくご存知でしょうが、ああいう人たちに手を差し伸べて生活の立て直しを手伝うのは、祭祀殿の仕事の一つですよね。ですが、いまのあの人たちは見放され、捨て置かれているように思えました」
「そうなんですか、グレタさん?」と、ステラも真剣な顔でグレタに問う。
「はい、これだけ豊かなビタロスにしては、奇異だとは思ってはいました。ですが、これまでのことを知りませんでしたから……それにしても、身寄りのない子供の受け入れを拒むなど……そんな祭祀所があるなんて、信じられません……」
「その問題については、ウチのばあちゃんたちと話をします。で、すいません話を戻しますが、ルカとミアはウチであずかりたいと思います。さっきも言いましたが、ウチにはあの子たちと歳の近い女の子が三人います。家の手伝いなんかをしてますが、雇い人ではありません。学校にも行ってますし、普通に家族として一緒に暮らしているんです。ルカとミアを連れていけば、きっとその子たちはいいお姉ちゃんになってくれると思います。ああ、大人たちのことも全然気にしなく大丈夫です。みんな子供好きなので、増えたらきっと喜びます。それに、昼間襲ってきた連中のこともまだ気になりますが、ウチにはとんでもなく強い人が二人もいるので何人こようが問題ありません……」
ルキウスが一旦言葉を区切った。そして、少し躊躇したあと、
「あの……今回僕は皆さんに…………と、とんでもなく……申し訳ないことをしました……これはその、それの償いではありません。それついては、また後日お伺いいたします。……なので、あの子たちの件はお任せいただけませんか? お願いします!」ルキウスが深く頭を下げた。そして、その後ろではフェリシアも一緒に頭を下げている。
ステラは、やわらかな微笑みを浮かべて二人に、「是非、お願いいたします」と、答えた。




