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0120 これでもちょっとぐらいは頑張れますよ



 ステラの体を包んでいた光が消え、揺れも収まった。



 「あうっ……」



 バタッ、と倒れるように地面に両手をつくステラ。ヤハンの雨は既に止んでいる。なのに、ステラの顔、いや全身から、大粒の汗が流れ、地面に滴っていた。「はあっ、はあっ」と、あえぐように激しく呼吸をし、俯いたまま顔を上げることもできない。



 「スぅ姉さま!」アリアとアンナが、ステラにとりつき体を支える。



 「わ、わたしは、はぁっはぁっ、いいです。ふ、ふたり、はぁっげほっ、ううっ、はああっ、はぁー、ふたりは、だいじょうぶですか……」苦しい呼吸を無理やり抑えるようにミアとルカの様子をステラは尋ねた。



 アリアとアンナが「ちょっと待っててね」と言って、ミアとルカのところに移り、胸に耳を当て心音を確かめる。



 「うん、大丈夫」アリアとアンナが安心したように顔をほころばせ、ステラに告げた。



 「はぁぁっ……よかったぁ……」ステラの目から涙が零れた。



 アリアがミアを、アンナがルカを優しく抱き起こす。



 「う、ううん……なっ、に……?」ミアが、薄く瞼を開ける。だが、状況がわからない。



 ミアとルカは、ルキウスとフェリシアが倒されたのを見て逃げようとした。だが、突然コロが騒ぎだし、驚いて立ち止まったところで意識を失ったのだ。だから、そこから先のことは何もわからない。



 ミアが、アリアに気づいた。「……おねえちゃん、だれ?」ぼうっとした頭で訊く。



 「わたしは、アリア。ミアちゃん、どこか痛いところとか、気持ち悪いところとかある?」



 「……ううん」夢覚めやらぬ、もう少し寝たい。そんな感じでぼーっとして、少し体がだるい。だが、それ以外は何ともなかった。



 優しく抱いてくれているアリアに身を任せていると、だんだんと頭がはっきりしてきた。そして、はっ、と気づいた。「お兄ちゃん、お兄ちゃんは?」と言ってミアが体を起こす。



 「こっちよ、ミアちゃん」すぐ隣から声がした。そっちに目を向けると、アリアと同じ顔をした女の子がルカを抱き上げていた。



 「お兄ちゃん!」ミアがアリアの腕から抜け出してルカの元に寄る。



 「ううーん……」少し唸って身をよじるルカ。「お兄ちゃん! 起きて! お兄ちゃん!」まるで寝坊をしているルカを起こすように、激しく揺するミア。「なんだよぉ、ミアぁ……」と、本当に家で寝ていたかのように、ルカが目を覚ました。






 「………………」何も言葉がでなかった。ルキウスは、目の前で起きてることが、全く信じられなかった。



 (…………いきて、いるのか…………)



 猿ぐつわが外され、縄が解かれた。



 「どうだ。お嬢を信じろと言っただろ」ジョルジョが、ルキウスの肩に手を置いて軽く揺さぶった。



 ルキウスは、そうされたことも気づかぬのか、ジョルジョを一顧だにすることもなく、フラフラと立ち上がった。そして、走り出した!


 「ルカ! ミア!」ルキウスが二人を抱きしめる。「ルキウスお兄ちゃん!」ルカとミアも叫んで抱きつく。「生きてる、生きてる……」何度も何度も繰り返しながら二人を強く抱きしめるルキウス。


 「お兄ちゃん、苦しいぃ」ルカとミアがルキウスの腕の中でもがく。だがルキウスは、離したくなかった。離したら消えてしまうのではないか、これは幻なのではないか、嫌だ、絶対に嫌だ! ルキウスは、二人を抱きしめ、ただただ泣き続けた。






 ようやく気持ちが落ち着いたルキウスが、二人に大丈夫か、と尋ねた。「うん、平気」と言って二人がニコニコと答える。いまは、フェリシアがルカとミアを膝の上に載せている。



 あまりにもルキウスが強く抱きしめ過ぎ、苦しくてジタバタと暴れる二人を見かね、フェリシアがルキウスから二人を取り上げて膝の上に座らせ、ルキウスと向かい合わせたのだ。



 「ミアちゃん、ルカくん、怖い思いをさせてごめんなさい」ステラが、四人に近寄りルカとミアに声をかけた。



 「あっ……ス、ステラ、さん……」ルキウスは、あまりにもバツが悪くて顔を上げることができない。



 俯いたままのルキウスは気づいていないが、ステラはそんなルキウスに微笑んでから、ミアに向き直っていた。



 「ミアちゃん、目の奥に何かを感じますか?」と尋ねるステラ。



 ミアは、目に手を当てると不思議そうな顔をして「ううん」と答えた。



 「よかった……ほんとうに……よかった、です」声を詰まらせるステラ。ステラは、涙をぐっ、とこらえ「ミアちゃん。あなたの病気は治りました。もう二度と目が痛くなることはありませんよ」と、ミアの頭を優しく撫でながら告げた。



 「ほんと? おねえちゃん、ほんと?」ミアが、驚きと嬉しさの混ざった声をあげ、ステラの手を握る。「はい。それにもうルカくんも、竜騎士になることはありません。安心してください」と、ミアとルカの顔を交互に見て優しく伝えるステラ。



 「もう、大丈夫なの? でも、でも、ミアを守れなくなったら……」途端に顔を曇らせるルカ。



 「それはもう大丈夫です。ミアちゃんの病気が治りましたから、襲われることはありません。もし誰かが来ても、お姉ちゃんがやっつけてあげます」と、戯けてルカの頭をくしゃくしゃっとするステラ。



 「えぇ、でもぉ……お姉ちゃん、あんまり強そうじゃないしぃ」と、ちょっと意地悪な笑顔で応えるルカ。「まあ、酷い。これでもちょっとぐらいは頑張れますよ」と、何故か力こぶを作るステラ。「フフフッ」とルカの隣でミアも笑った。





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