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0116 ルキウスVSジョルジョ



 ルキウス、フェリシア、ジョルジョ、グレタの四人は、それぞれ武器を携えて向かい合った。



 「仕合(しあ)う!」ジョルジョの声とともに地をかける四人。



 「うおー!」ルキウスは、気合いを叫んで走りながら、剣を正眼から右肩の上に高く引き上げ八相の構えに変えた。


 ジョルジョは、二トゥカ(2.4メートル)近くあるハルバードを斧を持つように左手を柄の下側にして両手で持ち、槍先を右斜め前に向け腰を据えて構えていた。


 ルキウスはまだリュウオンシを発動させていない。リュウオンシを発動させ一気に詰めて打ち抜くのが、いままでのルキウスの戦法であった。だが、昼間その戦法で挑んだオッターヴィオに、初手を止められたことで学習をした。


 (あのハルバードは、やっかいだ。長さもそうだが、それよりも柄だ。あの鉄製の柄に何度も剣を打ち込んだら、恐らく剣が折れる)ルキウスは、あえてリュウオンシを使わずに迫り、ジョルジョが間合いに入ったルキウスを視認しハルバードを振るのと同時にリュウオンシを全開にし剣を振り抜いてけりをつける、つもりでいた。


 「おおぉぉぉー!」ルキウスが、ハルバードの間合いに入った、リュウオンシを発動――


 (あうっ⁉)ズザッザー!


 ルキウスは、泥濘(ぬかる)んだ地面の上に仰向けに倒れていた。


 (またやられた!)急いで立ち上がるルキウス。


 ルキウスは、ジョルジョに体当たりをくらったのだ。ルキウスにスピードが出ていなかったのと、ジョルジョに軽く突っ込まれただけなので肉体的なダメージはそんなにない。だが、精神的なダメージは大きい。戦法を読まれて裏をかかれたこともあるが、それよりもあきかにジョルジョが手加減をしていることが腹立たしい。



 「ジョルジョさん! なんです、いまのは? バカにしてるんですか!」

 


 「それは君だろう。なぜそんな見え透いた戦法に変えた? バレバレだよ」



 (くっ! なぜだ!)バレバレ、と言われてしまった。ルキウスなりに相手をはめようと考えた手を、見え透いてる、と言われた。



 「いいかい、ルキウスくん。君なりに考えたんだろうけど、技とはそんなに甘いもんじゃない。君はいまの戦法を一度でも試したことがあるのかい? ぶっつけ本場など俺には通用せんよ」



 「……」何も言い返せない。本当に全て見透かされている。



 「先日、君がチロと遣り合ったとき、あの速さはなかなか、いや相当に見事だった。君はそれを磨いてきたんじゃないのか? なぜ、突然それを捨てた。いや、フェイントのつもりだったんだろうが、それならばなおダメだ。君は自分の良さを活かせてない」ジョルジョは、まるでルキウスに稽古をつけているように告げた。そして、「もう一度来なさい」と、言った。



 ルキウスは、ジョルジョを睨みつけたまま二トゥカ半(三メートル)ほど、ジリジリと後ろに下がった。


 (なら、見せてやる)


 ルキウスは、いきなりリュウオンシを全開にして飛び出した。だが、正面からではない、ジョルジョの右手側に回り込むように突っ込んだ。


 「がぁっ!」ルキウスが後ろに吹っ飛んだ。今度はさっきよりも衝撃が強い。


 見えていた。だが、避けられなかった。まさかあんな態勢から、右足を軸にして左足で後ろ回し蹴りをしてくるとは、想像もしていなかった。



 リュウオンシを全開にしていたルキウスに、ジョルジョの蹴りはカウンターで入った。しかも、とてつもなく重い蹴りだ。衝撃が蹴られた腹から背中に抜け、まるで内臓が外に飛び出したように感じた。



 「ううぅっ」口の中で血の味がする。口の中を切ったのか、内臓のどこかをやられたのか、それすらもわからない。それでも、剣を地面に突き刺し、腹を押さえながらルキウスは、ふらつく足を踏ん張って立ち上がった。



 「ほう、あれで立てるか」ニヤリとジョルジョが笑う。「相当ダメージが残っているだろうが、まだやる気なんだろ」ジョルジョが嬉しそうに告げる。そして、ハルバードを捨てた。



 「ば、ばかに、してるのか!」荒い息をはきながらルキウスが怒鳴る。



 「いや、逆だ。俺も少し本気を出す。ルキウスくん、俺のリュウオンシはな、〈格闘〉だ」



 「……格闘……」



 「そう、珍しいだろ。拳闘士なんかには多いんだがな。兵士にはあまりいない。俺は戦場でも素手で遣り合う。ハルバードは訳あって最近手にしたんだ。ルキウスくん、今の突っ込みは良かったぞ。ただ君は、周囲の状況をちゃんと見れていない。意味がわかるかい?」



 どういう意味だ? ルキウスにはわからなかった。



 「わからんか。やはり君は経験が足りないな。なら、勝負を終えてから答えを考えなさい」ジョルジョはそう言うと、構えをとった。


 両の拳を軽く握って左の拳を前に、右肩と右足を引いて半身。顎は引いて、拳で隠している。そして、膝を軽く曲げて腰を据え、重心はほぼ真ん中においている。堂に入った構えだ、そう思った。これがジョルジョの本来の構えだと、ルキウスにも一目で理解できた。



 ルキウスもこの構えは知っている。エデュカティオ(貴族の通う学校)で、訓練を受けたことがある。やってみて思ったのは、戦場で剣や槍を相手に戦うには不向きだ、である。もし戦場で、剣が折れるなど武器をなくしたら、素手で戦うよりも落ちてる武器を拾ったほうがいいだろう、と思っていた。



 「容赦はしませんよ」既にリュウオンシは発動させている。ルキウスは、相手が素手でも手加減などする気はなかった。



 「当たり前だ」ジョルジョが薄く笑う。



 「キイェェァー!」裂帛(れっぱく)の気合いとともに、一気にルキウスは踏み込み、右上段に上げた八相の構えから斬り降ろした――と、見せてルキウスは剣を引き、ジョルジョの左脇腹をめがけて剣先を突き出した!


  バッ! ガッ! 「あうぅぅっ」ルキウスの視界が暗くなり、うめきを上げながらその場に、崩れ落ちた。




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