0115 仕合う
ジョルジョとルキウスの間で、対戦のルールが決められた。
対戦は、一対一。誰とやるかはルキウスたちが決める。勝敗は、ルキウスとフェリシアの両方が、ジョルジョとグレタに倒されたとき以外は、全てルキウスたちの勝ち。
ルキウスとフェリシアは話し合い、ルキウスがジョルジョを、フェリシアがグレタと対戦することに決めた。
「ルカ、ミア、いいかい。ここで大人しく見ていて欲しい。だが、もし僕とフェリシアの両方が負けそうになったら……ミア、ルカの霊験を開放するんだ」
「嫌! 絶対に嫌!」ミアが、ルキウスを突き放して拒否する。そんなミアをルキウスは、しっかりと抱き寄せ「わかってる。わかってるよ。そうだよね、嫌だよね」となだめる。そして、ミアが落ち着いたのを見計らって「でもね、あそこの人たちに捕まると、二人はとても辛い目にあってしまうんだよ」と優しく告げる。
「俺たち殺されるの……」ルカが、ルキウスの腕を強く掴み震えながら問うた。
「そんなことはさせない。そのために僕とフェリシアで全力を尽くす。だけど、もしものときはルカが竜騎士になって二人で逃げて欲しいんだ」
「戦うんじゃ、ないの……」とルカ。
「戦ってはいけない。逃げるんだ。竜騎士になってもあの人たちには敵わない。だが、ミアを連れて逃げることならできるかもしれない」
「そんな、でもでも、どうやって逃げるの、どこに行けばいいの?」不安で声を震わせながらルキウスにすがるルカ。
ルキウスは、そんなルカの手をしっかりと握ると、ミアの腕の中にいるコロに目を向けた。そして、「コロ、お前に頼みたい。お前、僕の言葉がわかってるんだろ?」と問うた。
「ピッ」とコロが頷く。
「コロ、この子たちを守ってくれ。お前は昨日から何度も僕を助けてくれた。感謝している。今度はこの二人を守ってやって欲しい。お前にしか頼めない」
ルキウスは、自分でもバカなことをしていると思った。コロは、ただの動物、アルマジロもどきだ。そんなコロに、ルカとミアを守って欲しいなど、他の人に見られたらおかしくなったと思われそうだ。だが、昨日からの様々な出来事で、コロには何だかわからないが不思議な力がある、そう思えるようになっていた。これは、バカな賭けかもしれない。いや、賭けにすらなっていないだろう。だけど、もうそんな人智を超えた何かに頼るしか、ルキウスがうてる手はなくなっていたのだ。
「ピッピピピ」と、コロは前足で自分の胸を叩いた。
「頼む」ルキウスは、そう言ってコロの頭を撫でた。そして、立ち上がり
「さあ、行こう」と、フェリシアに声をかけた。
「お待たせしました」
ルキウスがジョルジョと、フェリシアがグレタと、ともに五トゥカ(六メートル)ほどの距離を開けて向かい合った。
「ルキウスくん、何度も言うが俺たちは君たちを殺そうなどとは思っていない。だが、戦いは水ものだ、保証はできない。覚悟はいいかい」ジョルジョの目は笑ってなどいない、本気だ。
「もう覚悟はできてます。いつでもどうぞ」ルキウスは、そう告げると剣を正眼に構えた。
「構いません。それはあなたたちも同じはず。必ず自分たちが勝つと思っていたら、足をすくわれますよ」フェリシアが左肩を前にして腰を据え、半身に構えながら告げた。
ジョルジョはハルバードを、グレタは両刃の短剣ジャンビーヤを両手に持って構えた。
時間はシズネ(午前一時)を回ろうとしていた。ヤハンの雨も小降りからさらに勢いを落としている。しかし、雲はまだ厚く視界は良好とは言えない。だがそれは、お互い様だ。
「仕合う!」ジョルジョの声で四人が地を蹴った。




