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0111 待ち伏せ



 「お嬢さま、戻りました」グレタがヒリュウの鱗亭に戻ってきた。



 ちょうど昼営業が終わったところで、ステラたちが軽い食事をしているところであった。



 「いかがでしたか?」不安そうに訊くステラ。



 「子供たちを見つけました。男の子のほうには、お嬢さまがおっしゃった位置に黒いアザらしきものがありましたから、間違いないでしょう。それと……」グレタが言いよどむ「あの、ルキウスくんとフェリシアさんがいました」さらに嬉しくない知らせである。グレタの声も沈んでいる。



 「……そう、ですか……」ステラの顔も暗く沈む。



 「それと、あとやっかいな問題が発生していまして」とグレタがいい始めると、「もしかして、祭祀殿の近くであった乱闘騒ぎのことか?」と、ジョルジョが訊いてきた。



 「知ってるの?」グレタが驚いて訊き返してきた。



 「ああ、さっき帰った冒険者の客たちが教えてくれた。騒ぎを起こしたのはルキウスくんらしいね」ジョルジョの顔も暗い。



 「ええ、どうやら竜騎士の男の子が狙われたらしいです」



 「竜眼狩り、ですか……」グレタの言葉を聞いたステラの顔がさらに暗くなる。



 「おそらく」グレタの声も余計に沈む。



 「……一刻の猶予もありませんね。どうやってあの子たちを救うか……いや、ルキウスさんたちを説得するのが先、ですね……」



 ルキウスもフェリシアも、ステラがミアを殺して力を奪うのだと、勘違いをしたままなのだ。二人が子供たちと一緒にいる以上、ルキウスたちが納得しないことには、決して子供たちを渡さないであろう。ステラは、ちゃんと言わなかった自分のせいだ、と自らを責めていた。



 「……それに関してですが……その、俺に少し考えがあります」ジョルジョが皆に説明を始めた。






 買い物を終えたルキウスは、それから定期的に街に出て聖竜軍の様子を伺っていた。すると、アマネ(午後十時)になる少し前から聖竜軍の人数が減り始めた。なので、ルキウスが祭祀殿の近くに移動をして様子を伺っていると、聖竜軍の兵士たちが次々と祭祀殿の敷地内に入っていくのが確認できた。



 (これなら行けるな)そう判断したルキウスは、急いで家に戻って皆に伝えた。そして、降り出したヤハンの雨が頂点の豪雨に差しかかった頃合いをみて、家をあとにした。



 激しく降る雨に打たれながら、ルキウスがルカを、フェリシアがミアをおぶって王都の外を目指していた。



 「お待ちなさい!」突然四人の目の前に、数人の人影が躍り出た。



 「どなたですか?」雨よけのフードを深く被ったルキウスが、できるだけ敵意を殺して尋ねた。



 「ルキウスさん、わたしです」ステラが告げた。



 「……ステラ、さん……」フードを上げてルキウスが確認する。間違いなくステラだ。グレタ、ジョルジョ、アリア、アンナ、全員いる。



 なぜここが? そう思ったが見つかった以上、そんなことを知っても意味はない。もう、つまらない駆け引きをしている場合ではないのだ。



 「渡しませんよ」ルキウスが告げた。



 「ルキウスくん。逃げ切ることなんてできないよ。おとなしく子供たちを渡してくれないか? 俺たちはその子らを助けたいんだ」ジョルジョが一歩前に出て説得を試みる。



 「助けたい? 力を奪うことのどこが助けることなんですか?」突然ルキウスが激する。背負われていたルカが、ビクッ、と体を震わせ、ルキウスに力一杯しがみつく。フェリシアは既にミアを体の前で抱きかかえ、話を聞かせないようにしているのか、ミアの耳を手と胸でふさいでいる。



 「ルキウスくん、君は勘違いをしている。お嬢はその子たちに危害を加えたりはしない。力だけを奪えるんだ」

 「嘘をつけ! 竜眼主の力を奪うには、こ、……殺さないとできないだろ」ルカたちには聞かせたくなかったのであろう。最後の方は声を抑えていたが、背中のルカには聞こえている。ルカの体が小刻みに震え、すすり泣く声が聞こえる。(ごめん、ルカ)ルキウスは、心の中で詫びるがここまできたら隠しようがない。

 「いいや、お嬢はできる。殺さずに力を奪う術をお嬢は自分であみだしたんだ」

 「そんな話は聞いたことがない! だいたい、ジーノたちだって殺したじゃないか!」

 「違うの! ルキウスお兄ちゃん、違うの! あのときアリア、ちゃんと言ってなかったけど、ジーノさんは生きてるの。チロさんたちもみんな生きてるの。みんなで王都を出たの! ごめんなさい、アリアがあのときちゃんと言わなかったから、お兄ちゃんに誤解させたの! ごめんなさい!」アリアが精一杯の声でルキウスに伝える。



 「あっ……いや、嘘だ! なんでアリアに嘘をつかせるんですか? そんな卑怯なことまでするんですか? あなたは、……あなたは……」ルキウスの目から涙が溢れてきた。





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