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0108 加勢



 ルキウスとオッターヴィオとの戦いに割り込んだコロの指示でルキウスが右側を見ると、「おらおらどけどけぇ! このゴロツキどもがぁー!」と、大勢の人間が、ルキウスたちを囲むゴロツキどもの輪を蹴散らしていた。



 「……あれは?」ルキウスが驚いてそちらに気を取られていると、「ルキウス」と言って肩を掴まれた。(やばい!)一瞬にして身を引き、剣を構えるルキウス。



 「待て待て待て、俺だ」

 「カリオさん!」



 ルキウスに斬るなよ、という仕草をしているのは、冒険者ギルドのギルド長カリオであった。



 「ど、どうしてここへ? もしかして、あの人たちは……」

 「おうよ。ギルドにいた冒険者連中だ。おめえがここで喧嘩してるって知ってな、加勢に来た」そして、ルキウスの頭を指して「こいつよ、こいつ。この白いモコモコが知らせてくれたんだよ」

 「コロが……?」



 カリオの話によると、冒険者ギルドに突然コロが押しかけてきて、誰彼構わず捕まえ、ビービーと騒ぎだしたらしい。ちょうどそこに鱗亭常連のダリオたちがいて、『こいつは鱗亭で飼ってるアルマジロもどきで、どうも人の言葉がわかるっぽい。なんか、知らせたいじゃないか?』と言い出した。そこで、カリオが千里眼使いに周辺を覗かせたら、ルキウスが大勢のゴロツキと揉めてるのが見えたらしく、カリオを先頭に加勢に来たのだ。



 「ありがとうございます、カリオさん」ルキウスの胸が熱くなる。ついこの間まで皆に嫌われていた。そんな辛い日々が嘘のようである。ざっと見回すと、ダリオやベッロ、アマンダたちの姿があった。みんな鱗亭で、自分に良くしてくれてる人たちだ。それ以外にも知ってる顔がたくさんあった。また、知らない顔もあった。冒険者は、結構横のつながりが強い。危険な仕事だけに、仲間と認めた者にはとことん付き合ってくれる。自分も仲間と認めて貰えた。加勢にかけつけてくれた皆の姿を見て、ルキウスはあらためてそう思えた。



 「しかし、ルキウス。おめえやっかいなのとやり合ってんな」と、カリオが顎をしゃくった。その先にいるのは、顔面に弾丸コロをまともに受けてぶっ倒れ、頭を振りながら立ち上がろうとしているオッターヴィオであった。



 「あいつを知ってるんですか?」

 「おう、オッターヴィオだ。モスターノを根城にしているゴロツキ集団『ガラムーア』のリーダー。王都にいるゴロツキ集団の中でも一番血の気が多い武闘派の親分だ。あいつは強えぞ。おめえ何やったんだ?」

 「あっ、いや……別に……」

 「まあいい、その話はあとだ。おい、オッターヴィオ! キサマ、うちの若いのに手えだしやがって、ただで済むと思うなよ!」



 「てっめぇ、カァリオ。なんのマネだ! てめぇには関係ねえだろ!」

 「関係ない? 大ありだ。ルキウスは、うちのルーキーだ。キサマみたいなクソゴロツキなんぞにいいようにさせるわけねえだろ!」

 「やんのか、カリオ!」

 「あぁ、うちの若いのをかわいがってくれた分は、俺が利子つけて返してやるよ!」



 カリオが、両手に握っている少し短めのバスタード・ソードをクロスさせて構える。オッターヴィオも、ロムパイアを構えた。睨み合う二人。



 「うぅぎゃあああー! みぎてが、みぎてが、あたいのみぎてがぁー!」



 突然、狂ったような叫び声があがった。



 ルキウスたちがそちらに目をやると、肘から先がない右腕を押えてベリーが地面を転げ回っていた。そして、そのすぐ側にはベリーがさっきまで使っていたモーニングスターが落ちていた。その持ち手に、持ち主のない手だけを残して。



 「ベッファー!」オッターヴィオが叫ぶ。

 「あにきぃー、あにきぃー、あたいのみぎて、あたいのみぎてー!」と、苦しみ悶えるベリー。



 その少し離れたところでは、そんなベリーになど目もくれず、ハーフヘアカラーのヒヨリ=ツキノが、自分に迫ってくるゴロツキ連中に攻撃魔法をたんたんと当てていた。



 「あーあ、ベッファのやつ、ヒヨリ=ツキノを怒らせたのか。バカなやつだ」と、カリオが半分同情したような口調で告げた。



 ヒヨリ=ツキノの強さは、カリオもよく知っている。冒険者ギルドに登録するときは、通過儀礼としてギルドの幹部と模擬戦をすることになっている。ルキウスは、カリオと戦ったのだが、完璧に負けた。ヒヨリ=ツキノは、魔導師としてのレベルが高すぎてギルドで相手をできる者がいなかったため、カリオが個人的なツテで連れてきた、王都で最高位の魔導師と対戦をした。そしてその結果に、ギルドの幹部たちは驚いた。なんと、ヒヨリ=ツキノはその最高位の魔導師と引き分けたのだ。ヒヨリ=ツキノのレベルは、それぐらい高い。ちょっとぐらい強いだけのゴロツキなんぞが勝てる相手ではないのだ。



 「てめぇら、もう許さねぇ。殺してやる、殺してやる、ぜえいん殺してやるわぁー!」オッターヴィオが吠えた! だがそのとき――



 「聖兵だあー! 逃げろー!」誰かが叫んだ。



 声がしたほうを見ると、聖竜軍の甲冑を着けた聖騎士を先頭に、聖兵の兵服と兜を着けた兵士たち数十人が、冒険者ギルドの面々が来たのと反対側から、ゴロツキどもを蹴散らして突っ込んできた。



 「貴様らあ! 全員動くなあ! 民の安寧を脅かす賊どもに、ヒリュウ霊様の勅言(ちょくげん)が降りた。全員を成敗する。歯向かうやつは容赦せん! 死にたくなければその場に膝をつけ!」先頭にいる聖騎士が剣を抜いて大声をあげ、人をかき分けて騒動の中心へと進んでいく。その目の前に、ゴロツキの一人がたまたま飛び出した。すると、「ギャー」聖騎士は、邪魔な枝を払うかのようにそのゴロツキを一刀で斬り捨てた。 



 「やばい! 逃げろー!」集団は一気にパニックになった。聖騎士と聖兵は、右往左往するゴロツキどもを容赦なく斬り捨てていく。



 「こらやべえな。祭祀殿、本気だわ。おいルキウス、逃げろ」カリオがルキウスに告げた。

 「でも……」

 「ここは俺がなんとかする。聖竜軍もバカじゃない。ゴロツキと冒険者の区別はつく。だが、一旦は拘束される。騒動を起こしたお前が捕まると面倒だ。いくら剣聖の孫でもそう簡単には開放してくれんぞ。早く行け!」



 「くそガキィ、カリオォ! てめぇら覚えとけよ! この借りは必ず、何倍にもして返してやるからな!」ベリーを肩に担いだオッターヴィオが怒鳴る。



 「うるせえ! それは、こっちのセリフだ。キサマの根城にこっちから行ってやるわ!」カリオも負けじと言い返し、「ルキウス、早く行け!」とルキウスを押す。

 「カリオさん、すいません」ルキウスが軽く頭を下げてカリオに背中を向けた。

 「ルキウス」カリオが呼び止めた。

 「はい?」進みかけたルキウスが振り返る。

 「あっ、いや……気をつけろよ」

 「はい。ありがとうございます!」



 今度こそルキウスは、一気にそこを離れ、ルカたちの元に向かった。その背中をみながらカリオは、(無事に戻ってこいよ……)と心の中で呟いた。





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