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0104 阻む男たち



 ルキウスは、以前セイバーズで討伐したグールヒポダイルの報酬を王都を出るための資金にしようと考え、ギルドとの交渉を担当しているフィリッポを、ルカとともに尋ねた。



 「えー、ルキウス兄ちゃん、急にそう言われてもぉ。この前は納得してたじゃん」ルキウスに、グールヒポダイルの報酬を前払いで貰えないか、と頼まれたフィリッポはあきらかに、無理だよぉ、という顔で答えた。



 「いや、そうなんだけど、頼む。ちょっと事情が変わって……ねえ、二人分が無理なら一人分でも、いや……その一部でもいいから、だめ?」フィリッポを拝みながら必死に頼むルキウス。



 「ねぇ、ルキウス兄ちゃん、ステラさんの店はどうしたのさ? 昨日いなかったよね、フェリス姉ちゃんも。それにあの子、誰?」と、フィリッポが話題を変えてきた。おかしいのだ、ルキウスの態度が、あきらかにいつもと違う。そもそも、ルキウスはお金に困ってなどいない。家は伯爵家なのだ。しかも、レオーネ家はかなりの資産を持っている。ルキウスの資産ではないが祖父母に言えばいくらかのお金は融通してくれる。なのに、いまルキウスは小銀貨一枚と大中小の銅貨を合わせて数枚しか持っていないと言う。それに、少し離れたところにいる見かけぬ子供。なぜそんな子を連れているのか。わからないことだらけだ。



 「あっ、いや……ス、ステラさんの店、は……や、やめたのか、な?」



 「はっ? 『やめたのかな?』ってなに、なんでおいらに訊くの?」胡乱な目つきでルキウスを見るフィリッポ。



 「そ、その…………ごめん、事情は話せない。どうしてもお金が必要なんだ。家には頼れない。あの子についても話せない。……ステラさんは……あの人のところからは、離れることにした」さっきまでとはまた違った、真剣な面持ちで語るルキウス。こういう顔をしているときのルキウスは、誰に何を言われようと自分の意志を絶対にまげない。すなわち、これ以上何を訊きても無駄だ、とフィリッポは理解した。



 「……はぁーっ、わかった。カリオさんのところに行こう。報酬の一部を前払いして欲しいって頼んでみるよ。兄ちゃんも一緒に来て。ちょっと強引にやらないと、あの人も結構頑固だから」フィリッポが、やれやれ、という顔でルキウスに告げた。






 ルキウス、ルカ、フィリッポの三人は、歩いて冒険者ギルドに向かった。



 フィリッポがいたのは、祭祀殿の東門に近いマルティーニ商会の倉庫だ。そこから、冒険者ギルドまでは歩いて二十四シィ(三十分)ほどである。



 だが、進み始めて八シィ(十分)も行かぬうちに、馬に乗った五人組に前をふさがれた。真ん中にいるのは、オッターヴィオだ。



 「なんだお前たちは?」あきらかにまともな風体ではない連中を見て、ルキウスが気色ばむ。



 「おい、フェルモ。このガキか?」ルキウスのことを無視して、オッターヴィオが声をかけた。



 「へ、へい。そのガキです。おいコラ! くそガキ、てめぇこの前はよくもやってくれたな、ぶっ殺してやる!」とフェルモが怒鳴った。



 「ルカ、知ってるのか?」ルキウスが隣にいるルカを見ると、ルカが青い顔で震えていた。そして、「こ、この前、市場で襲ってきたヤツ」とルキウスの手を取って答えた。



 「おい、そこの若いの。そのガキをこっちによこせ。無駄な抵抗すんなよ。俺らは加減しねえぞ」と、オッターヴィオが告げた。



 「あっらー、アニキぃ。あたいにそいつおくれよぉ。おいしそぅ」と、オッターヴィオの右側にいるスカートをはいたまま馬に跨っている長髪に派手な化粧をしたベリーが、ルキウスに流し目を送りながら言った。



 「あぁ、まあいいぜ。うん? おい、おめぇ、マルティーニんとこのフィリッポじゃねえのか?」オッターヴィオが、ルカと反対側にいるフィリッポを顎でさして訊いた。



 「う、うん。あの、オッターヴィオの親分ですよね。その、この子、何かしたんですか?」フィリッポが少し身を引きながらもオッターヴィオに尋ねた。



 「フィリッポ、おめえんとこの商会とはあんま揉めたくねえんだ。おめえには手を出さねえ。そのまま後ろを向いて帰れ」オッターヴィオが、ドスを効かせながらも穏やかに言う。



 「フィル、知ってるのか?」

 「う、うん。やばいよ、こいつら」フィリッポは、訊いてきたルキウスに小さな声で答え「おいら、助け呼んでくる」と付け加えた。



 「おい、こら! 何コソコソやってやがる。フィリッポ、てめえはさっさと行け! 行かねえならキサマも()るぞ!」オッターヴィオがフィリッポを怒鳴りつける。



 「いや、そのまま逃げてくれ。僕も逃げる」ルキウスが囁く。「すいません。オッターヴィオさん、おいらはいま行きます」と、フィリッポは大きな声でオッターヴィオに答えると、「わかった。でも、一応うちの警備に伝えるから」と小声でルキウスに告げ、踵を返した。だが、「あっ?」と小さく叫んですぐに止まった。



 「あら、フィル。こんなところまでお散歩かしら? そちらのブサイクたちはルキウスのお友達?」



 ヒヨリ=ツキノが、フィリッポの数トゥカ(数メートル)後ろに立っていた。




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