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0101 雨漏り



 ルキウスは、いつもと同じ時間に目が覚めた。だが、体が重い。実は、昨夜は二時間ぐらいしか寝ていない。



 昨日、フェリシアと今後のことを色々と話し合ったあと、寝ようとしたらヤハンの雨が降り始めた。嫌な予感はしていたのだ……それが当たった。雨漏りだ……



 うまい具合に、ルカとミアが寝ている寝床の上に雨が落ちてくることはなかった。だが、それ以外は中々の漏れっぷりだ。



 半世界では、ほぼ毎日雨が降る。時間も決まっていて一日二回、ヤハン(午前零時)前後に降る『ヤハンの雨』と、セイドウ(午後三時)前後に降る『セイドウのにわか』である。



 セイドウのにわかは、さっと降ってすぐにやむ、打ち水のような雨で、昨日もルキウスたちがルカの家にいるときに降ったが、そのときは雨漏りはなかった。



 だが、ヤハンの雨は違う。シウ(午後十一時)の少し前からシズネ(午前一時)過ぎにかけて降るのだが、ちょうどヤハンの頃は豪雨になる。ルカたちの家の屋根は、セイドウのにわかにはまだ耐えられたが、ヤハンの雨に耐えることはできなかった。



 なので、ルキウスとフェリシアが、あるだけの皿やらコップやらを使って雨を受けては捨てていたのだ。いつもどうしてるんだろう? とは思ったが起こすわけにもいかないので、結局二人でヤハンの雨がやむまで雨水を受けては捨ててを繰り返すしかなかった。



 ルキウスが、外で剣を振ろうと立ち上がっとき、「おはよう……」と眠そうな声でルカが声をかけてきた。



 「おはよう。ごめん、起こしたかい?」



 「ううん、俺いつもこの時間だから。ウーン」と、ルカは寝床から出て伸びをした。



 「えっ? まだアカツキ(午前四時)より前だよ?」ルキウスが驚いて訊くと、「俺毎朝、農家に手伝いに行ってるんだ。……前にね、母ちゃんがやってた仕事なんだけど。そこだけは、お願いしたら仕事させてくれたから……」と、少し悲しげな顔でルカが答えた。



 「……」なんと言葉を返したらよいのか……ルキウスは胸が詰まる思いがした。



 「……今から行くのかい?」



 「うん」母親のことを思い出すと悲しくなるが、働くことは気にしてないようで、ルカはすっきりとした顔で返事をした。



 「なぁ、僕も行ってもいいかな?」

 「ほんと?」ルカが嬉しそうに笑った。



 二人でそんな会話をしているときにフェリシアも起きたので、留守番を頼んでルキウスはルカと出かけた。



 農家の人たちはルキウスのことも快く迎えてくれた。ただ、ルカは母親がいなくなったことをその人たちには伝えておらず、病気だと言っていたので、その人たちは親戚だと自己紹介をしたルキウスに、母親の具合はどうかと問われて答えるのに窮した。



 たまたま今日が食べ物を分けてもらえる日だったのだが、その量は驚くほど少なかった。だが、それもやむを得ない。農作業も中々に重労働なので、普段ルカがしている仕事は、掃除や片付けだ。秋の収穫時期になればルカでももっと仕事ができるだろうが、それにはあとふた月はかかる。正直、殆ど役に立っていないルカに手伝いをさせ、僅かな量でも食べ物を分けてくれるのは、この人たちの善意だ。世の中酷い人ばかりではない。そう思ったら、昨日からルキウスの心に重く立ち込めいていた何かが、少しだけ晴れたような気がした。



 今日は、ルキウスが色々と力仕事をしたので、いつもより多めに食べ物を分けてもらえた。ルカは、「ミア、喜ぶかな」と分けてもらった食べ物を大事そうに抱え、家に帰るまで何度も嬉しそうに中を覗いていた。



 家に帰るとフェリシアとミアが、昨日買った食材の残りで朝食を作って待っていた。ミアが、「ミアもお手伝いしたの」と胸を張ってルカとルキウスに告げ、ルカに「偉いぞ」と言って頭を撫でられると、「ウフフ」とくすぐったそうに笑った。



 そして、四人で朝食を食べたあと、ルキウスは二人に昨日フェリシアと決めた計画を切り出した。

 



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