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転校初日の初授業7

 その様な会話がされている事等露知らず、模擬戦に夢中になっている旭は、そのまま清光に真っ直ぐ突っ込んで行き、右横腹目掛けて剣を叩き込もうと息を止め振った。


「ふっ! いっ! あっ!」


 だが、やはり簡単に躱されてしまう。旭も躱されるであろう事は分かっていたので、もう一発もう一発と、打撃も入れながらの猛攻撃を開始する。


 しかし、かすりもしない、それどころか清光は目で見て余裕で避けていた。こんなにも動体視力と身体能力が違い過ぎる事に旭は驚愕していた。


(なんぼ僕の集中力が記憶の共有で落ちてても、動きはそんなに悪くないと、思う……やけど擦りもせえへん。成り立てや言うて、こんなにも差があるもんなんかっ!? でも一発くらいはっ!)


 出来るだけコンパクトに出来るだけ無駄の無い動きを心掛けながら、手数では無く、攻撃の質を上げようと強弱をつけながら清光に斬りかかり、当然の様に避けられてしまうが、考えるのでは無く体に叩き込まれた動きの読みで、清光が避けた場所に合わせ、上から放つ。


「ぅぅぅやっ!!」


「っ……!?」


 放たれた剣を清光は避けるが、避けきれずに肩に擦った。それにより清光の動きが少し鈍ったのを旭は見逃さずに畳み掛ける。


「せいっ! やっ! いあっ!」


「んぐぅ! ぐうっ!」


 体制を崩したまま避けて行くが、躱し切れずに三発をモロにくらい更に体勢が悪くなって行く。


 本調子では無い旭に対し力を残したままにしておきたかったが、この状態ではポイントを削られ過ぎて負けてしまう。


 そう思った清光は、あの状態の旭には使いたくは無かったのであるが、仕方ないと悪い体勢の中、一本だけ白い尻尾が旭目掛け伸びて行く。


「!?」


 自身に向かってくる尻尾に気付き躱さず弾こうとする。しかし、当たった瞬間に剣が氷始めた為に有利な形ではあったが、警戒し、後ろに飛んで様子を窺う旭。


(ここで初めて違う力を使って来たって事は、結構追い込めてるって事やけど、どうしたもんか……。そろそろこっちも記憶の共有が終わる頃やと思うんやけど、スサノヲどない? まだ掛かりそう?)


『すまぬ主よっ! あと少し辛抱してもらいたいっ! しかし主よ、よくこの状態で心乱されずに戦い、しかも我とも普通に会話できる……誠に主には驚かされる事ばかりであるな』


 何故かスサノヲは楽しそうに含み笑いをしていた。旭にはスサノヲが何故笑っているのか分からないでいるが、


(……? じゃあ、これからもっと驚いてもらう為に頑張らなあかんなっ!)


『ああっ、我等は主の成長を驚き楽しみ期待して見ている事にしよう』


 そのスサノヲの言葉に(えみ)を漏らし、剣を構え直した旭は清光がどう動くか見据える。


 清光は一向に動かず、白い尻尾を横から出して旭に向けているだけ、清光も旭の出方を窺っている様だった。


(多分、尻尾に触れれば凍るだけでは無いやろな、遠距離攻撃も出来そうやし、尻尾の位置を確認しながら来たら避けて懐に飛び込む……今はこれしかないかっ)


 「すぅ~。はぁ~」


 目を離さず深呼吸をし「よしっ!」っと、右斜めに走り出した。


 尻尾は旭の位置を合わせる様に動いている。どうやら旭の読みは間違っていない。


 旭自身もそれを確信し、次は左斜めにジグザグ走行で走り続けながら近付いていく。


 そして、一定距離まで近付くと尻尾が白く輝き、こちらに向け放たれた。


 旭が思っていた程の速さでは無いと、それをぎりぎりまで近付かせ、ぎりぎりで避ける。


 当然、清光も当たるとは思っておらず、弾幕を張る様に四方八方に撃ち出し視界を遮っていく。


 旭は勿論の事、これでは清光にとっても不利な状態に陥ってしまうのだが……。


 もうお互いの距離は四、五メートルであり、難しい間合いであった。


 旭にとっては届かず、清光にとっては撃てば居場所がバレてしまう。


 どちら共、音を出さぬ様に気配を探る。そんな中にありながら旭は息を大きく吸い込み、


「うぅぁああああああああっ!!」


 大声を出し位置も分からぬままに走り始める。


 清光はその大声に一瞬怯んだが、声が聞こえる方向に向けて放ち、自身も位置を特定されない為に動きながら、先程と同じく撃ち放つ。が、ふと後ろに気配を感じ振り向くと、そこには低い体勢で剣を構えた旭がこちらを睨み、今、剣を放とうとしていた。


「見つけたっ!! いっあっ!!」


 力を込めた一撃が清光に当たろうとしたその瞬間。黒い五本の尻尾が剣を防ぎ、どす黒く熱帯びた何かが剣を伝い旭に向かって来る。


 咄嗟に剣を引こうとしたが、尻尾に捕らわれて抜けない。


「やばっ!」


『主よっ!! (つるぎ)から手を離せっ!!』


「遅いっ!! これで終わりだっ!! 黒炎っ!!」


 清光が叫ぶと同時にどす黒いものが溢れ出した。が、旭と清光の間に鉄の塊の様な壁が黒い炎を防いでいた。


「ナイスっ!! 本気(まじ)でぎりぎりっ! スサノヲ、グッチョブっ!」


 旭のその言葉は記憶の共有の終わりを告げた叫び声。


 旭は剣を離し後ろに下がって、手を前に(かざ)した。すると、鉄の塊と一体化していた剣が塊と共に溶け合い玉状に変化し、旭の手に収り剣の形に戻って行く。


 ただただ呆然とする清光と外野で見ていたクラスメイト達。


「いやいや、ここで驚くのおかしいやろ? 今やっと記憶の共有が終わってスサノヲの力が何なのか、力の使い方はどうすればいいか分かっただけの事。今からが本当の真剣勝負……。これからが本番やろ?」


 旭はまだ気付いてはいないのだが、先程までは四肢のみであった鎧。しかし、今は日本古来の鎧に完全武装されており、銀色に輝く髪は背中まで伸びていた。それを黒い紐で束ねられ、まるでポニーテールの様な髪型に変化していたのである。だが、ジャンヌの時の様な変化は無かった。

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