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溺愛の伝え方  作者: 小夜時雨
灰色結婚生活
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1.幸せな新婚生活

街の大きい教会で、名だたる貴族を端から端まで招待し、割れんばかりの拍手に包まれながら、盛大な結婚式を挙げる。


はずだった。



「貴様のような醜女を大勢の貴族の前に晒すというのか?そして愛を誓えと?


考えただけでも吐き気がするよ。」


「はい、おっしゃる通りでございます旦那様。」



初恋を10年、盛大に拗らせてしまっているアルフレドは本日も本日とて先日ついに籍を入れた婚約者、リリエッタに罵詈雑言を浴びせていた。


こんなはずではなかったのだ。


ことは一ヶ月前、アルフレドの両親に挨拶へ行った帰りの馬車の中。

不意にリリエッタが呟いた言葉が、売り言葉だった。



「セティス様、それでその、側室はいつご紹介いただけますか?」


「…………は?」



精一杯その優秀な頭をフル回転させたが、とうとうその意図を汲み取ることができずに聞き返してしまう。


いまこの婚約者はなんと言った?



「ですから、側室でございます。愛人とも言いましょうか。」


「お前、なに、を、そんな……はあ??」



アルフレドにとってリリエッタは初恋の相手であり現在進行形である。

ついでにリリエッタを心の底から溺愛している、もちろんそのことはリリエッタには全く伝わっていない。


日頃の罵詈雑言から伝わるわけがないのである。

その結果がこうだ。



「……?

セティス様はまだお若くございます、暫くはご両親も新婚生活を、とお気遣いもいただけましょう。


ですが何はご子息をお望みになるかと思います。

その時に私ではお相手できませんし、それに日々の生活も私とではつまらなくもなりましょう?」



これが10年罵詈雑言で育て上げられた美少女の末路である。

自尊心のカケラもない。当然の結果である。


それは違う、俺はお前を愛しているのだから側室など望まない!


そう言えたら、幸せなバラ色新婚生活が望めたであろうか。

今更そんなことを後悔しても無駄なのである。



「あ、当たり前なことをみなまでいうな!

貴様に紹介する謂れもない、黙ってろグズが!」


「はい、失礼いたしました。

それと結婚式の招待状の件でございますが…。」


「お前のような不器量を人目に晒せるはずがないだろうが!!」


「…かしこまりました、そのように致します。」



完全に買い言葉であった。


そうして結婚式は親族のみでひっそりと挙げられ、側室まで取らなければならない始末。

誰が悪いといえば、100%アルフレドが悪いであろう。


そのことを本人もまた、理解しているのである。



「…それで愛もないのに愛人を金で雇う、と?


拗らせすぎにもほどがあるでしょうに、ねぇ?」


「うるっっさいな!!」



そうして結婚初日、初夜を彼女と迎えられるはずもなく、側室に遠慮して早々に自室に引きこもったリリエッタ。

その背中を引き止める術もなく、見栄を張った手前作らねばならなかった愛人を前にぎりりと歯を噛み締めた。



「私はいいんですよ、踊り子やってるよりお金もらえますし。

お貴族様の考えることにゃさーっぱりわかりゃしませんが。」



彼女の名はミリアム、街で評判の踊り子だ。

半月前にやけ酒を煽りに行った酒屋で出会い、愛人の契約に至った。


契約は以下の通り。


1.お互いに愛はない

2.リリエッタにこのことをバラさない

3.リリエッタに極力近づかない

4.契約はお互いの了承を得て解消される


報酬の金額に喜んでその場で契約し、今に至る。

契約通りもちろん愛はない、寧ろアルフレドの初恋の拗らせように哀れんでさえいた。



「で、ご主人はどうしたいんです?」


「……この婚約は両親が決めた縁だ。

しかし結婚は俺が決めた、リリィしかいないと思ったから結婚したんだ…。」


「本人目の前にいないと愛称で呼ぶんだ、へえ。」


「もう黙れ………。」

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