7話番外編 魔導学院にて
――レキムが初めての狩りに出かけた日と同日、魔導学院にて――
「なあなあ、お前の兄ちゃんの話……あれマジ?」
「……なんだよ」
「ほら、ウィンドロッド家のくせに魔力の才能ゼロの落ちこぼれって話!!」
茶髪の男が、ヘラヘラと話しかけてきた。
こいつはたしか、ガリア家の長男の――うん、名前も知らねえや。
ここ数日、こんなことばかりだ。
会ったことも話したこともない学生が、何かと声をかけてくる。
そうじゃないにしても、俺が通る度に陰でヒソヒソコソコソ……
――くだらない。
こんなことになったのも、全部あいつのせいだ。
「……うるっさいな。 そもそも、あんなの兄でも家族でもなんでもねえよ」
「えー弟君のくせにひっでぇな、リムランは!」
「……はぁ。 だから、もう家族でもなんでもねえって。 魔導学院を退学になって家に帰ったら、親父から絶縁されたんだってよ。 それから家には帰ってないみたいだしな」
「へ、へぇ……お前んとこの親父さんなかなか厳しいんだな……」
男のヘラヘラとにやけた顔が、少し引きつった。
とはいえ、親父が厳しいのは昔からのことだ。
あいつが退学になって、絶縁宣言の一つくらいはそりゃあ言われるだろう。
……にしてもこの男、俺が話しかけるなオーラを出してるってこと位察してくれないもんかね。
お前んとことは家の事情が違うんだ、ほら帰った帰った。
俺が心の中であしらっていると、男は再び続けた。
「ま、まあせっかくの長男が無能じゃあ、親父さんの気苦労も計り知れないよな。 よかったじゃねえか、落ちこぼれは家を去って、優秀な弟が残ったんだ。 実質、お前が長男みたいなもんだろ?」
「…………うるっせえな」
「えっ?」
男の言葉に、無性にイラついた。
あいつのことを庇う訳ではないけど……心のモヤモヤが鬱陶しい。
「うるせぇっつってんだよ……人んちの家族のことをペラペラと……あぁ?」
「……な、なんだよマジになんなって……」
男は、バツが悪そうに急いで去って行った。
……この程度で逃げるんなら、最初から来るんじゃねえ。
「……はぁ。 くそがっ」
全部全部、あいつのせいだ。
あいつが初級魔法すら使えない無能で、落ちこぼれだからこうなったんだ。
全部全部、あいつが――。
「…………どこで何してんだよ、クソ兄貴」




