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基礎魔法士は見返したい!~無能な落ちこぼれと呼ばれた僕は、基礎魔法×全属性で成り上がる~  作者: スギセン


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17話 灰色の空

 それから僕は、月詠(ルーナ)とひたすら向き合う日々が始まった。

 朝から晩まで、考えうる限りの魔法を試す。

 魔力が尽きたら休憩して、また試す――それの繰り返し。

 

 この魔法の組み合わせというのが、思っていたよりも複雑で、ただ単に組み合わせるだけでは、当然発動しない。


 適切な属性同士を、適切な質量同士で、最適な状態を保つことで、ようやく小さな魔法として発動するレベル……これはもう、魔法というより学院で昔やった化学の授業みたいなものだ。


 それから、一般的な魔法との大きな違いに気付いた。   

 それは、この魔法に接続詞がつくということだ。


 例えば、爆ぜよ水(イドラ)

 魔法の詠唱前に、接続詞である火×水(フラ・ボルン)を唱えるだけで、威力が大きく上がる。


 ただしその分、詠唱に時間はかかるし魔力消費も大きい。


 一概にどちらがいいとは言えないけど、状況に応じて使い分けるのがよさそうだ。


 考えることだらけで、常に頭はいっぱいいっぱいだ。

 でも、どのみち今の僕はケガでまともに動けない。 


 帰るところもやることもない僕だけど、時間だけはいくらでもあるからね。


 それからロナンさんはというと、日中はどこへともなく森を歩き回って、何かを探しているらしい。


 本人は「ちょっとした用事で」としか言わないので、それ以上は追求しないようにしてる。


 夜になると木の実やら仕留めた動物やらを持ち帰ってきて、ご飯の準備までしてくれるのは本当に助かる。

 見た目と味は……何というか、いつも独創的だ。


 ……今度は、僕が料理しようかな。


 さて、肝心の魔法の成果というと――

 正直、自分でも驚くほどの成果をあげている。


 日々驚きの連続だけど、今一番ありがたかったのが、光属性のもつ「魔法増強効果」だ。


 一部の論文でしか唱えられていないし、その活用方法も未確認だったけど……月詠(ルーナ)の持つ「魔法を組み合わせる効果」を持ってすれば――


光×聖(ラス・メクト)――【癒しの光(ホーリー)】!」

 

 僕の体をキラキラと光る粒子が包み込む。


「おぉっ、これまたきれいな魔法ですねぇ~! 効果は?どんな効果があるんですかっ!?」 


「ふふっ、これはものすごくシンプルに、聖属性の回復効果を光属性で強化させたものです。 でも、肝心の回復量は聖属性の初級魔法にも満たないでしょうけどね」


「へぇ、そういうもんなんですか……でも、大きな一歩ですね!」


「……ふふっ、そうですね」


 こうして僕は、日夜魔法の研究開発に没頭して、あっという間に一週間が経った。


 この頃には僕のケガもほとんどよくなって、いくつかの組み合わせ魔法は、なんとか実用レベルまで仕上げることができた。


 このまま僕は、僕だけの魔法を磨き続けて、ロナンさんは自分の用事に専念する。


 そして夜には、出来上がった魔法を見せて彼女に喜んでもらうんだ。 


 それに今日は新しい魔法がいくつか完成したし、きっと大喜びだぞ!

 ……もしかすると、この魔法を使って獲物を獲ることだってできるかもしれない!


「あぁ、楽しみだなぁ……! ロナンさん、早く帰ってこないかなぁ……!」


 僕は、心の底から浮かれていた。

 なんでも前向きに考えられていたし、ロナンさんが喜ぶ姿がとても嬉しかった。


 ――でも、そんな日々はあっけなく終わることとなった。


「一緒に過ごすのは、今夜までです。 私は、明日からもっと森の奥地に挑みます」


「あっ――えっ……?」


 夜、食料を持って戻ってきたロナンさんから、唐突に告げられた。


「いきなりで、ごめんなさい。 でも、レキムさんの体も良くなったし、新しい魔法も覚えたし……きっともう、大丈夫だと思います」


「で、でも――」


「ううん、ごめんなさい。 ……私は、もうこの場所には戻りません。 本当に、すっごく……楽しい時間でした」


 そう言った彼女の目は、どこか寂しそうで……それでいて、とても強い決心を感じた。


 そんな目を見てしまったら、「僕も行きます」だなんて言葉、簡単に口に出せなかった。

 ――いや、出してはいけないんだと、思った。


 こうして、僕たちが過ごす最後の夜は――最後の時間は、静かに過ぎていった。

 夜ご飯に食べたお肉も木の実も、何の味もしなかった。


 そして翌朝、彼女の姿は荷物とともに消えていた。


 * * *


 ロナンさんと別れてから二日が経った。

 

 あれから僕は、彼女が最後にくれた地図のおかげで、森の外れの野営地――最初に拠点を作った所まで戻ることができた。


 トランクは動物に荒らされたのかボロボロだったけど、中身は一応無事のようだ。

 

「………………さて、と」


 ドサッと地面に座り込み、焚火台の石をなんとなく手にした。

 ザリザリと、炭と砂が混じった感触が指先に残る。


 僕の心には、ぽっかりと穴が空いたようだった。


「……うん、もともと進む道の違う二人だったんだ。 これからもあんな日々が続くだなんて――ロナンさんの優しさに甘えて、僕が勘違いしただけ」


 必死に自分に言い聞かせてみる。

 

 そう、そうだ。

 感傷に浸っている場合じゃない。


 今の僕は、訳も分からずに森にたどり着いた時の僕じゃない。


 いくつかの魔法を作り出して、ほんの少しでも、できることは増えた。

 そう、これからが、僕の人生の再スタートなんだ。


 僕は魔力を集中させた。


「……【神聖(メクト)】」

 

 僕の体を、淡い光が包み込む。

 聖属性の基礎魔法には、心を落ち着ける効果がある。


 それでも、僕の胸の内は――灰色の空模様のままだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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