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第3話

空気が澄み肌寒い。

バイクの音が一つ、町に響いている。

朝刊がポストに入る音は朝が来たと感じさせる。

朝日はとても綺麗だ。今日も、太陽が帰ってきた。


「おい、なんで昨日来なかったんだよ」

疾風はやては、城崎しろざき高等学校の校門で叫んだ。

「行ったよ。おまえらが帰った後に」

少し先を歩いていた琉樹りゅうきは疾風とは対照的に淡々と答えた。

柏木かしわぎさんが怒ってたぞ」

疾風は琉樹に追いついて言った。

「別にいいだろ。行ったんだから」

奏芽かなめに会ったのか?」

疾風は急に静かに言った。

「。。。。あぁ」

「そうか」


校舎の近くにある、針葉樹はとても大きい。

いつから、ここにあるのだろうか。


「ねぇ、聞いた?」

肩にかかった、色の少し抜けた黒髪が風でなびく。

生徒会室の窓の近く、椅子に座っている少女は後ろをふり返った。

「あぁ?」

気のない返事をしたのは、資料棚の近くにいた少年だった。

「だからぁ、昨日の話」

少女は椅子に後ろ向きにまたがった。

「あぁ、なんとなくな。まぁ、俺には関係ないわなぁ」

少女は少年に聞こえるように、溜め息をついた。

「あのねぁ、幼なじみでしょ。私達」

「幼なじみなんて、たくさんいるだろ。いちいち構ってらんないな」

少年は資料を見たままだった。

「相変わらずだよね。はるかちゃんは」

少女は茶化すように言った。

綾乃あやの譲は心配していらっしゃるのですか?」

少年は、笑いながら振り返った。

「遼は言いかた古すぎ。私は心配してるよ。でも、自分の心配しないと」

少年は、目的の資料が見つかったらしく近くの椅子に座った。

「っ確かにな、心配なら俺が希望出してやるよ」

少女は、窓に近づいて外を見た。

「私たちなら、希望が通っちゃうんだろうね」

少女は外を見たまま、悲しそうに言った。

その言葉は、儚く消えていく。


生徒会室にいるこの二人も、菊鹿きくか一族の人間である。

菊鹿綾乃きくかあやのと、水城遼すいじょう はるかだ。

二人とも生徒会に入っている。

疾風と琉樹の幼なじみでもあった。


放課後は、学校全体から声が響く。

グランドでは、野球部やサッカー部、校舎の周りでは陸上部が走っているようだ。

体育館は何部が使っているのだろうか。


屋上に、二人の生徒がいた。

二人とも、グランド側の柵によりかかっていた。

「どうするのかなぁって心配になってね」

一人は綾乃だった。

「諦めるよ。それより琉樹が心配なんだ。なんか情報ないか?」

綾乃は、柵を叩いた。金属音が響く。

「あのさ、疾風。いい加減にしなよ。自分の事考えてよ。」

もう一人は疾風だった。

疾風は、優しく微笑んだ。

「分かってる。でも、俺はあいつが心配なんだよ。大事なときなのは分かってる」 

綾乃は、疾風を睨んだ。

「お姉ちゃんを見捨てるの...そうなんでしょ。。。」

疾風は空を見上げたまま

「家の決めたことは変えられない。そうだろ.....」

綾乃も、空を見上げた。

太陽がいた。雲はほとんどなかった。

「お姉ちゃん結婚できないのかな。壊れちゃったもんね。でもさ、あんな化け物に襲われたらさ

みんな壊れちゃうよ。疾風なら、結婚してくれると思ったんだよね」

二人は顔を合わせない。

太陽はまだ、いる。あと何時間居座るのかな。

「ごめんな。綾乃」

疾風は消えるような声で、でも芯のある声で言った。


月に会いたい。

あぁ、今日はカラスに会えるかな。

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