第1話
菊鹿一族、それは全国各地に分家があり、
政治、経済、医療、芸能いろいろな分野で活躍している。
現在の当主の叔父にあたる、白山孝之助は
白山財閥の会長をしている。
日本国で莫大な影響力と、資産を持つ菊鹿一族の本家は
白鹿山の山頂にあった。
鷹谷市、私立城崎高等学校は白鹿山の梺にある歴史のある名門高校である。
太陽は、高く昇り4時間目終了のチャイムが鳴り響いた。
生徒が一斉に動きだした。
今日は、昨日とは打って変わってとても暖かい。空では、のんびり雲がうごいている。
屋上に、数人の生徒がいた。
グランド側の柵におっかかっている男子二人組は、二人ともコーヒーを飲んでいた。
「なぁ、今日何時集合だっけ」
茶髪の方が、少し赤がかった黒髪の方に話しかけた。
「俺、今日行かないから」
茶髪の方は驚いた様子で、
「今日は、おまえも呼ばれただろ。パスってありかよ」
黒髪の方は、面倒くさそうに頭をかきながら
「いいんだよ、俺今日用事があんだよ」
茶髪の方が溜め息を付き、
「奏芽に会うのなら、今日はやめとけよ」
「なんでだよ」
「今日は、あいつも来るらしいからな。多分奏芽にも会うんだろ」
黒髪の方が黙った。
その時、
「あの、疾風君少しいいかな」
少し離れたところに、おさげの小柄な女の子が立っていた。
「総会の資料が出来たんだけど、これでいいかなって。。。。あ、
今忙しいならあとで持ってくるんだけど。。。。。」
紙の束を持っておどおどしている。
茶髪の方が
「あぁ、ありがと」
と紙の束を受け取った。
女の子は慌ててその場から離れていった。
「お前、相変わらず怖がられてるよな」
茶髪の方が言った。
黒髪の方は返事をしない。
「。。。。まぁ、いいけど今日は奏芽に会うなよ」
黒髪の方の返事を待たずに、茶髪の方はその場を離れていった。
城崎高等学校には、菊鹿一族の人間が数人通っている。
そのうちの、2人が彼らである。
茶髪の方が、桐谷疾風
黒髪の方が、菊鹿琉樹である。
どちらも、本家と同じこの鷹谷市に住んでいる。
本家の近くのこの学校では、菊鹿一族の人間は恐れられていた。
まだ、暑くなる季節ではないが
今日は少し暑かった。
カラスが電線に止まり、辺りが少し
暗くなってきた。