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罪人の孫  作者: レム
第1章 『災厄、再び』
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第19話 『届いた報せ』

 自分はお飾りな存在だと思っている。

 

 代表と言う如何にも面倒臭そうというか、私が人の前に出るのはおかしい事。だから、学院長で手を打ってもらったが、権限を越えた書類も混ざっているので、賢者の皆も性格が悪い。

 学院長室に引き籠っているユーナは絶賛書類と格闘中だった。任され長をしているだけで授業もしないし学院生の前に出る事も滅多にない。優秀な教師が揃っているのに自分が出ていく理由がないと考えたからだ。

 とは言いつつも書類ばかりだと体に堪えてしまう。やはり歳は取りたくないものだ。優雅なマダムを演出するために紅茶に口をつけた時だった。


「失礼します! 学院長、一大事です!!」


「ごほごほ」


 急に扉を破らん勢いで入って来た秘書を務めている若い女性の登場に吃驚して紅茶が気管に入って咽てしまう。


「なんですか、礼儀がなっていませんよ」


「申し訳ありません。しかし、悠長にしているわけにもいかなかったのです!」


「どうしたのですが」


 ハンカチで口元を拭いてカップを置いた。


「狂血です! 狂血が再び私達の前に現れたんです!!」


「それは確かな情報ですか」


「はい! 先ほど私の元に情報屋がやってきて学院の前の市場で暴れていると、発現したのは当学院生の――」


「デューク……」


 情報屋は金を要求する代わりにほしい情報を入手、すぐに提供する存在で、普通なら莫大な金がかかるが、ユーナと契約している情報屋は一流の腕を持ちながら賢者の息子のため、安価で協力してくれている。


「ええ、そうですけど、ご存じだったんですか」


「いえ、そんな事はないですよ」


 この前会ったからだろうか、自分でも分からないがふと頭に浮かんできた。


「何でもデュークはユーナ様の兄君もお孫さんらしいです」


「――これも、運命なのでしょうか」


 狂血が出現した。それは世界規模の災害であって何よりも恐れている事のはずなのにユーナの心が不思議と波風が立たない。


「それで、どんな状況なんですが」


「そ、それが……」


 バツが悪そうに口籠るが意を決して話し出す。


「暴れ出す前に取り押さえようと維持部隊の人が出ましたが、返り討ちにあい、……そのお孫さんと学友の方も立ち向かったのですが、お孫さんは何とか無事なのですが、ご学友の方は……現在は逃げられない様に全方位を固めて距離を取らせている、との事です」


「賢明な判断ですね。あれの血を体内に入れでもすれば普通の人間は死んでしまいますからね」


 バラバラになっていた書類を纏めてとんとんと机に叩いて整えると引き出しの中に仕舞った。代わりに長い紐を取り出した。


「行かれるのですが」


 着ている和服は動きづらい、せめて紐で袖の部分を縛っておかないといけない。


「はい、狂血を止められるのは私だけですし、一度しっかりと話しておかないといけません。それに、私が存在する理由もその為ですからね」


「余りご無理をされない様に」


「年寄りを舐めてはいけませんよ」


 それを最後にユーナは学院室を後にしていく。


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