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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第五十三話 残された足跡


能力犯罪総合対策本部の隊員たちが廃工場へ突入する。


「クリア!」


「こちら異常なし!」


建物の中を次々と捜索していく。


御堂鷹臣は湊たちの前へ歩み寄った。


「君たち。」


「通報してくれてありがとう。」


湊は頭を下げる。


「いえ……。」


御堂は穏やかに微笑んだ。


「君たちのおかげで居場所は特定できた。」


「だが。」


「次からは必ず大人を頼ってくれ。」


「相手は能力犯罪者だ。」


「命を落としていたかもしれない。」


湊、小春、神童の三人は静かに頷いた。


「はい。」


---


廃工場の捜索が始まる。


隊員の一人が報告する。


「生活していた形跡があります!」


食器。


毛布。


非常食。


簡易ベッド。


誰かが生活していたことは明らかだった。


しかし、人影は一つもない。


篠宮玲司が周囲を見回す。


「撤退したばかりですね。」


御堂は床へ視線を落とした。


「いや……。」


「これは。」


「わざと残している。」


篠宮が振り返る。


「挑発ですか。」


御堂は静かに頷く。


「私たちへのメッセージだ。」


「『追えるものなら追ってみろ』ということだ。」


---


その頃――。


新たなアジト。


グラビティがヴォイアントへ報告していた。


「旧アジトからは全員撤退しました。」


ヴォイアントは静かに頷く。


「痕跡は。」


「予定通り残しました。」


グラビティは少しだけ疑問を口にする。


「本当に良かったのですか。」


「今まで完璧に痕跡を消していたのに。」


ヴォイアントは窓の外を見つめた。


「彼らには知る権利がある。」


「そして。」


「ここからが本当の始まりだ。」


---


別室。


ブレイブが少女へ温かい飲み物を差し出す。


「熱いから気を付けて。」


少女は小さく頷いた。


「ありがとう。」


少しだけ沈黙が流れる。


少女が口を開く。


「優斗お兄ちゃん。」


ブレイブは照れくさそうに笑った。


「どうした?」


少女は少し不安そうに尋ねる。


「また……会えるよね?」


ブレイブは少しだけ表情を曇らせた。


それでも優しく微笑む。


「うん。」


「きっと。」


少女は安心したように笑った。


その笑顔を見つめるブレイブの胸は、静かに痛んでいた。


---


廃工場。


小春は外で待っていた野良猫を見つける。


「ありがとう。」


「教えてくれて。」


猫は申し訳なさそうに耳を伏せた。


「助けられなくて、ごめんニャ。」


小春は優しく抱き上げる。


「そんなことないよ。」


「あなたが教えてくれたから。」


「警察も来られたんだよ。」


猫は安心したように喉を鳴らした。


---


その頃。


御堂は机の下へ落ちていた一枚の古びた写真を拾い上げた。


そこには若き日の蓬莱良樹と数人の男女が写っていた。


御堂は写真を見つめる。


「蓬莱良樹……。」


「やはり、お前だったか。」


写真を裏返す。


そこには、


『ZERO結成記念』


と書かれていた。


他のメンバーの名前は雨で滲み、ほとんど読めない。


篠宮が写真を覗き込む。


「ZERO……?」


「ご存じなんですか?」


御堂は静かに頷いた。


「能力社会黎明期に存在した組織だ。」


「能力に反対していた思想集団……。」


「解散したと聞いていたが。」


御堂は再び写真へ視線を落とす。


「まさか、エデンと繋がっていたとはな……。」


---


その夜。


朝霧家。


夕食の時間。


食卓には湊、母、父・朝霧義一が並んでいた。


どこか重い空気が流れる。


義一が笑顔で口を開く。


「今日は学校どうだった?」


湊は少し黙り込む。


そして決心したように顔を上げた。


「母さん。」


母は優しく微笑む。


「どうしたの?」


湊はゆっくりと口を開く。


「ヴォイアントって人を……。」


「知ってる?」


その瞬間。


母の表情が凍り付いた。


手に持っていたコップが滑り落ちる。


ガシャン!!


義一が驚いて立ち上がる。


「どうした!」


母は震える声で湊を見つめた。


「……今。」


「何て言ったの?」


湊はその様子を見て確信した。


母は、ヴォイアントを知っている。


そして母の脳裏には、かつて能力社会に反対し、共に未来を語り合った一人の男――


蓬莱良樹。


若き日の姿が鮮明によみがえっていた。


第54話へ続く

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